『鉱 ARAGANE』小田香監督が語る映像作家としての姿勢@岸野令子のシネマトーク


もりのみやキューズモールのまちライブラリーで隔月開催している、映画パブリシスト岸野令子さんのシネマトーク(メディアイランド主催)。

2018年5月17日は、ドキュメンタリー映画『鉱 ARAGANE』が高い評価を受け、現在も全国順次公開中の小田香監督をゲストに迎え、映像作家になるまでの道のりや、タルベーラ監督が創設した映画学校でのエピソードを語っていただいた。




 ■「あなたがどうしても向き合わなければならない問題があるなら」とのアドバイスで撮影した、セルフドキュメンタリー『ノイズが言うには』  

大阪出身の小田監督は、高校時代までは真剣にプロを目指すほどバスケットボールに打ち込んでいたそうだ。怪我により選手の道を断たれ、そこから勉強して大学に進学。さらに2年間のアメリカ留学時代に、ドキュメンタリーコースを選択した。  

その卒業制作として先生からアドバイスを受けたのが、「あなたがどうしても向き合わなければならない問題があるなら、それを撮りなさい」。夏季休暇で実家に帰った時、小田監督は、家族に自分が同性愛者であることをカミングアウトするセルフドキュメンタリー『ノイズが言うには』を制作。当時を振り返った小田監督は「まだカメラの使い方が暴力的で、カメラが相手を追い詰めることを分かっていなかった」。小田監督のご家族にとってはカミングアウトを追体験することになり、キツイ思いをされたそうだが、なら国際映画祭のプログラマーの目に留まり、『ノイズが言うには』は学生部門で上映。さらにプログラマーからの紹介で、ハンガリーの映画監督、タル・ベーラがボスニア・ヘルツェコビナで開校する映画学校のことを知り、その第一期生として入学することに決めたという。 


■アフリカ大陸以外の全大陸から集まった学生たちと一から作った、タル・ベーラ監督の映画学校。

 小田監督は、入学のためポーラ美術財団や学費免除など、様々な支援を得て、単身でボスニア・ヘルツェコビナでの学生生活をスタートさせている。そこでは日本とは違い、学校といっても本当に何もなく、まずは教室を作るところからスタートしたのだとか。

アフリカ大陸以外の全大陸から集まった学生たちとお互いにつたない英語でコミュニケーションを取っていた時の思い出や、卒業制作の『鉱 ARAGANE』について、口頭試問の席でタル・ベーラ監督が“I’m proud of you”と評価してくれたというエピソードをはじめ、濃密だった学生生活について語ってくれた。

『鉱 ARAGANE』の撮影時は必ず坑道に入る前後にコーヒーを飲む習慣があり、言葉が通じない中、お互いに少し気まずい思いで無言になってコーヒーを飲む時間がキツかったという。映画を観た方ならお分かりだと思うが、あの身体中が真っ黒になってしまう坑道の撮影よりもキツいことがあったとは!


 ■ドキュメンタリーを撮る動機は「自分が知らないものに惹かれる」。 

小田監督の好きな映像作家は、アピチャッポン・ウィーラセタクンやペドロ・コスタ、ワン・ビン、フレデリック・ワイズマンの初期。最近では、中国のビー・ガン監督『凱里ブルース』に衝撃を受けたそうだ。そんな小田監督のドキュメンタリーを撮る動機は、「自分が知らないものに惹かれる」。準備中の新作の撮影でシネマトーク後はメキシコに飛び、水中洞窟や街の人々の話を撮っていきたいそうだ。(数週間のメキシコでの撮影を終え、現在は帰国されている) 

基本的にはそこで起こっていることを撮るという小田監督。「自分のいやらしさや、物事をどう見ているのかが撮影素材に現れる」とその真意を明かした。また、他の映像作家よりも優位性があると感じる点については、「少しずつ毎日積み重ねることが好き。観察したり、人の話を聞くのも好き」と、技術面より地道に取り組む姿勢が大事であることを示唆。今は小林茂監督(『阿賀に生きる』)のドキュメンタリー作品でカメラを担当しているそうで、「監督は全体のバランスを見る。演出するのはカメラであることを発見した」という。 


坑道の撮影も、新作のメキシコ水中撮影もそうだが、海外であり、かつ非常に肉体的に過酷な現場でも、興味が持てることにはまっすぐに挑んでいく力強さを秘めた映像作家。真摯に被写体に向き合っていることがお話からも伺えた。

現在、シネ・ヌーヴォで、『さすらいのレコード・コレクター』上映前に、同作からインスパイアされて製作された小田香監督最新作『TUNE』(2018年/6分)を特別上映中。こちらもお見逃しなく!  

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