参加者が自身の出産、子育て、結婚を語り合い、お互いの体験を共有するひとときに。 「お寺で語ろう!出産 なら国際映画祭2018★プレイベント」


8月6日、奈良市の浄教寺で「お寺で語ろう!出産 なら国際映画祭2018★プレイベント」が行われ、小さなお子さんと一緒に参加した方や、ご夫婦で参加した方、助産師の方、地域の皆さんが多数参加した。


前半は、出産をテーマにした、5人のアニメーターによる短編アニメーション6作品(「Birth ― つむぐいのち ―」「Birth ― おどるいのち ―」)が上映された。女性アニメーターによる自身の出産体験をリアルかつユニークに綴った作品から、トルコでの出産を体験したアニメーターによる出産を通した異文化体験が感じられる作品も。立ち会い出産を体験した男性アニメーターの作品もあり、出産は女性だけのものではないと感じられる。悲喜こもごもの出産ストーリーに笑いも起き、上映後には大きな拍手が送られた。



上映後は河瀬直美監督と、コマ撮り手法によるサンドアニメーションで8年前の自身の出産体験をアニメーション作品にした若見ありさ監督が登壇し、参加者と一緒に出産を語るトークショーが開催された。最前列の座布団の上を小さい子どもたちが自由に動き、和やかムードの中、河瀬監督は「なら国際映画祭では、テーマを設けて皆さんと語る場を設けています。第3回では食をテーマに、今問題となっている種についても語り合いましたし、第4回ではLGBTをテーマに海外から同性婚や、養子縁組をした性的マイノリティーの方にお越しいただき、映像を見ながら語り合いました。今年は上映会や肝試し、写経などを通して地域の皆さんに愛されている浄教寺にご協力をいただき、原爆の日に、命を考える、語るプレイベントを開催しました」と挨拶。



一方、若見監督は、「母も吉村医院(愛知県岡崎市)に勤めており、私が生まれたのも吉村病院だったので、同じ場所で産もうと準備していたけれど、実際は緊急搬送されて別の病院で生みました。出産はスマートにはいかないし、人それぞれの出産があります。それぞれのお産のインタビューを取りたくてアニメーションを作りました」と、制作までの経緯を語った。また、なかなか子どもに恵まれなかった時には、子どもが虐待されたり、亡くなるニュースを見るたびに「命を産み出すことをもう少しポジティブに捉える社会になってほしい」と思ったそうで、「出産の体験談を共有することで、人に対して優しくなれます。命を産んで育てることで、前向きになれれば。自分自身も社会も変われるのではないでしょうか」と、自身の考えを明かした。


また、参加者から日本ならではの出産について聞かれると、

「昔ながらという点では、畳の上で天井からぶら下がっている紐にしがみついていきむイメージですが、『病気ではないので、自然に生まれることが望ましい』という考え方が日本ならではでしょう。海外では医師の勤務時間の都合で、陣痛促進剤や帝王切開をしたがります。・自然な出産のタイミングを待つのは、日本に比べて少ない。日本でそのような出産ができるのは、医師や助産婦、周りの家族が支えてくれているからなのです」(岩見)

「『玄牝(げんぴん)』を撮影する前に出産について色々調べました。お産の知識(助産婦さんによる自宅出産もできる)がないと、普通に産むなら日本の分娩はほぼ病院で行われます。病院で産むと、紙おむつと粉ミルクを渡されるので、母乳がいいとか、布おむつがいいということを学ぶ機会はありません。私は『玄牝』を通して助産婦さんの存在を知り、インターネットで調べて会いに行きました。今は、病院でも助産師がいて、適切な医療を受けられる場所も増えてきています」(河瀬)


他にも河瀬監督から、「彼女を作るのが面倒くさいという昨今の男子の考えについて」「(80年代の)異性を見れば寄って行きたくなる男性心理はもうないのか?」「不妊治療について」と様々な問題提起がされ、女性、男性問わず、出産、子育て、結婚に至るまで参加者から自身の体験や、考えが語られた。出産に関する様々なご意見をかいつまんでご紹介したい。



(助産師を目指している学生さん)

「小学5年ぐらいから助産師に憧れていた。神秘的だし、(子どもを産むという)感動を広めたい。幼児虐待は生まれた時の環境に問題があるので、(助産師になって)ネグレクトを減らし、子どもが笑顔になるようなことを広げて行きたい」


(助産師の方)

「命をつなげていくところにお手伝いできるのは素晴らしい仕事。この歳でも日々新しい発見があり、最近やっと、これって私に与えられた天職と思えるようになった」

「(吉村医院、吉村先生は)助産師は、女性をいかに野性に返せるかが腕だとおっしゃっていた。最近は、(出産する女性も)野性的なものがなくなるのと同時に、自信がなくなってきている」


(男性の方)

「今日の映画で、女性は大変な苦労をして出産をしていることを知ることができて嬉しい」


(出産未経験の方)

「陣痛は痛いけれど、赤ちゃんが生まれた時の喜びは大きいんだろうな」

「目の前の仕事で手一杯だが、出産は女性の特権なので産んでみたい」


(出産経験のある方)

「昭和40年代ぐらいまでは病院ではなく自宅で出産をしていた。助産師学校の中でも産婆文化は語り継がれている。助産師は商業的なお産ではなく、お産の本質を知っている」

「お産は女のものだけにしてはいけない。社会のものにしていければいい。トルコは皆、子どもが大好き(社会でも子ども連れは優先してもらえる)。社会で子供を育てる気風をまだまだ耕せるはず」

「(出産は鼻の穴にスイカが通るようなものと言われるが)私は神様が通ったと思っている」



なら国際映画祭2018

会期:2018年9月20日(木)〜24日(月・祝)

会場:奈良県文化会館、ならまちセンター、奈良国立博物館、ホテルサンルート奈良、春日大社、東大寺 金鐘ホールほか

公式サイト:http://nara-iff.jp/2018/


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