台湾、香港映画の名作を再発見!カンヌ国際映画祭で注目された『ジンジャー・ボーイ』田中未来監督特集も。第21回大阪アジアン映画祭、全ラインナップ発表!


    2025大阪・関西万博の会期に合わせ、初めての夏開催となる「第21回大阪アジアン映画祭」の全体ラインナップが決定し、2025年8月29日(金)から9月7日(日)の期間中に全66作品の上映が発表された。

今回発表されたのは、「コンペティション部門」、「特別注視部門」、「インディ・フォーラム部門」、特集企画<台湾:電影ルネッサンス EXPO 2025>、<Special Focus on Hong Kong EXPO 2025>、「特別招待作品部門」、「神戸女学院大学国際学部協賛上映」、「特別上映《VIPO Film Awardの成果》」の上映作品だ。まずは、暉峻創三プログラミングディレクターと、8月29日(金)にABCホールにて行われるオープニング上映『万博追跡』(2Kレストア版)で登壇が決定した主演のジュディ・オングさんのコメントを紹介したい。


ジュディ・オング氏 / 歌手・俳優・木版画家

55年前、大阪万博の会場で、私たちは目の前に広がる未来に心を踊らせました。 『万博追跡』は、私の台湾映画のデビュー作『小翠』の監督であるリャオ・シャンション監督の作品です。大阪万博を舞台にミュージカル、アクションを融合させた追跡劇。撮影時の興奮がいまも蘇ってきます。 大阪・関西万博が開催される2025年、再び『万博追跡』が上映されることをうれしく思います。時代を超えて、映画、音楽、芸術が持つ力を、多くの方と分かち合うことができればと願います。大阪アジアン映画祭で皆さまにお会いできることを楽しみにしています。 


暉峻創三氏 / 大阪アジアン映画祭プログラミング・ディレクター 

大阪アジアン映画祭のプログラミングで毎回悔しい思いをしていたのは アジアでも素晴らしい旧作の修復が積極的に行われているにもかかわらず、会場数の制約でその成果を散発的にしか紹介できずにいたことでした。万博開催に伴い前回から半年も間を置かずに実施されることとなった今回の映画祭は、旧作レストア版に光を当てる絶好の機会ととらえ、例年以上に旧作を手厚く紹介しています。その大部分が世界初または日本初上映です。 回を追うごとに人気を増している短編のラインナップにもご注目を。必ずしも新鋭ばかりではなく、著名映画人の作品を含む傑作が勢揃いしました。 



■「コンペティション部門」全11作品

疎外された中国の若者たちを大胆な色彩切り取った、衝撃的で生々しい青春映画『ワン・ガール・インフィニット』(アメリカ、シンガポール、ラトヴィア、写真上)、自身が取り組んでいる論文と世界が交錯しはじめてしまう大学院生を描いた『世界日の出の時』(中国)、不慮の事故で幼女を殺してしまった女子高生が直面する苦悩から、観客に静かに問いかけをしてくる『最後の夏』(中国)と、現代に生きる中国の若者を多角的に描く作品が多数入選。



第20回大阪アジアン映画祭のスペシャル・オープニング作品『愛の兵士』のファルハット・シャリポフ監督のナチスによるソビエト連邦侵攻を静謐なモノクロ映像で描いた社会派映画『退避』(カザフスタン)、『おひとりさま族』でOAFF2022グランプリに輝いたホン・ソンウン監督による韓国発ゾンビ映画『寒いのが好き』(韓国)と実力派の監督作品が入選する中、日本を舞台に敬虔なチベット僧侶が戒律を裏切る禁断の感情を抱いてしまうモー・ズーイー、武田梨奈主演の『シャンバラストーリー』(写真上、 (c) Samden Films Production) は日本、アメリカ、インド合作の注目作だ。



リベンジポルノを題材に過去と現在を行き来しながら、ブータンの文化、慣習、色彩に満ちた世界を描いた『アイ、ザ・ソング』(ブータン、フランス、ノルウェー、イタリア、写真上  (c) Diversion, Dakinny Productions, Girelle Productions, Fidalgo Films, Volos Films)、事実婚カップルが直面する妊娠、キャリア、結婚を描いた『私たちの意外な勇気』(台湾)、予期せぬ妊娠で夢を現実に押し潰されそうになる体操選手の少女の葛藤を描いた『サンシャイン』(フィリピン)と女性たちに降りかかる問題を題材としたヒューマンドラマも多彩にラインナップされている。

さらに、人生の荒波を超えて幼馴染の深い愛を描いた『浅浅歳月』(香港)、台湾映画『僕と幽霊が家族になった件』をリメイク、タイが誇るスーパースター、ビルキン&PPクリットを主演に迎えたGDHs製作の『紅い封筒』(タイ)と話題作も入選を果たした。




■「特別注視部門」全12作品

ベルリン国際映画祭2025パノラマ部門で上映された、都会で生きる孤独なゲイの青年を描く『クィアパノラマ』(香港、アメリカ)は、『トレイシー』(2018)『香港の流れ者たち』(2021)のジュン・リー監督最新作。

過酷な労働環境の中で、社会と向き合い闘うことに目覚める主人公の葛藤と覚醒が胸に迫る力作『MA - 沈黙の叫び』(ミャンマー、韓国、シンガポール、フランス、ノルウェー、カタール、写真上)、浮気夫へ死をもって復讐をする妻の恐怖と狂気に満ちた復讐劇『トゥームウォッチャー』(タイ)も注目したい。 



世界初上映作は、コルカタの映画学校の入学選考過程で出会った2人が、試験結果が出るまでの短い学生生活で深い友情を育んでいくインド映画『その間』(写真上)、自死のタイミングを見計らう男と声をかけてきた若者との対話のゆくえを描くブータン映画『橋』、同じ1日から逃れられない男女を描く中国映画『明日が来る前に』。中編から短編のアジア新鋭の注目作もぜひチェックしてほしい。



■インディ・フォーラム部門 全20作品

第78回カンヌ映画祭ラ・シネフ部門第3位に入賞した『ジンジャー・ボーイ』(日本)の田中未来監督に焦点を当てた<焦点監督・田中未来>特集では、「肉体的接触がなくても恋人関係は成り立つのか」という題材をテーマにした『エミレット』と、『HAPPYEND』で映画初出演を果たした栗原颯人が主演を務める中編『ブルー・アンバー』を世界初上映する(写真上)。



他には『HAPPYEND』の空音央監督が安藤サクラを主演に迎えた第78回ロカルノ国際映画祭正式出品の短編『まっすぐな首』(写真上)、津田健次郎主演の野原位監督(『三度目の、正直』、『ハッピーアワー』(共同脚本))最新短編『息子の鑑』の世界初上映をはじめ、上野詩織監督(ドラマ「初恋、ざらり」脚本)、細井じゅん監督、山城達郎監督(『心平、』)、飯塚俊光監督、前田聖来監督、小島央大監督(『JOINT』)、坂本憲翔監督、寺嶋環監督、谷口慈彦監督、宮瀬佐知子監督、西崎羽美監督(『よそ者の会』)、蘇鈺淳監督(『走れない人の走り方』)、加藤紗希監督(『距ててて』)、相馬雄太監督、磯部鉄平監督(『夜のまにまに』)、空音央監督(『HAPPYEND』)等、全20作品がラインナップされている。



■特集企画<台湾:電影ルネッサンス EXPO 2025> 全8作品

 

 国家電影及視聴文化中心(TFAI)によって復元された貴重な旧作5作品、最新作3作品の全8作品がラインナップ。 オープニング作品であり、華麗なミュージカル、アクションを融合させたスペクタクル・エンタテインメント映画『万博追跡』(2Kレストア版)をはじめ、映画台湾特撮映画の幕開けを飾った記念碑的作品『ドラゴン・スーパーマン』(レストア版、写真上)、既存の社会体制の中で葛藤する若者を鮮やかに映し出した『進学を拒絶した人生』(2Kレストア・ディレクターズカット版)、2世代に渡る壮絶な愛の輪舞から、社会問題を鋭く描いた『さようなら十七歳』(2Kレストア版)、プレ台湾ニューシネマを代表する巨匠パイ・ジンルイ監督が、少女の混乱した心理状態を斬新なカメラワークと色彩表現で映し出した『寂寞十七歳』(レストア版)が、世界初上映の美しい映像でスクリーンによみがえる。



■特集企画<Special Focus on Hong Kong EXPO 2025>  全5作品

スタンリー・クワン監督によるシスターフッド映画の名作『フルムーン・イン・ニューヨーク』(デジタル・リマスター版)は、マギー・チャン、シルヴィア・チャン、スーチン・ガオワー主演の必見作(写真上 (c) Sil-Metropole Organisation Ltd.)。同じくシルヴィア・チャンが出演し、ツイ・ハーク監督が描く3人の男女の友情と愛をコメディタッチに描いた珠玉のラブ・ストーリー『上海ブルース』(レストア版)等、名作クラシック作品と、友情と恋愛の間で揺れ動く少女ふたりの夏を切り取った『レッド・キス』など香港映画の現在を映し出す作品の全5作品がラインナップ。


他にも、「特別招待作品部門」では『ベイビーわるきゅーれ』シリーズの阪元裕吾監督が放つ最新作、『フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡[私闘編]』(日本)、神戸女学院大学国際学部協賛上映では疎遠な家族が生と死を越えて絆を取り戻すベンガル語映画の感動作『晩秋』(インド)を上映。9月3日19時からはシンポジウムの予定されている。

特別上映<VIPO Film Awardの成果>では落ちぶれた映画編集マンが禁忌のフィルム編集を手掛けてしまう『ポストハウス』(フィリピン)が披露される予定だ。



他にも、大阪中之島美術館1Fホールで上映される芳泉文化財団協賛企画では、9月1日、『ラブポーション』『ここに海をつくる』と『PEAK END』の上映後、映画ライターの月永理絵さんを迎え、3作品の監督とのトークを開催予定だ(入場無料)。


上映チケットは8月20日(水)より順次発売予定。詳細は大阪アジアン映画祭公式サイトを確認してほしい。https://oaff.jp/oaff2025expo/