『ナディアの誓い - On Her Shoulders』同じ立場の女性を救うため、ナディアの闘いは続く


昨年のノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさん。彼女はISIS(イスラム国)に襲われたイラクの少数民族ヤズディ教徒であり、IS戦闘員に性暴力を受け続けた後、なんとか自ら逃げ出すことに成功したという壮絶な体験をしている。ナディアさんの家族は今も行方不明で、生存の可否もわからない。そんな絶望的な状況の中でも、今は紛争地域で性暴力被害に遭った女性たちや、ISISのもとで囚われているヤズディ教徒を救済するための活動を続けている。本作は、そんなナディアさんの人権活動や、国連でスピーチをするまでの日々に密着したドキュメンタリーだ。


自らが被害者でありながらも、大衆の前で、時にはラジオ収録、テレビ番組とメディアの前で、度々証言をし、支援を訴えるナディアさん。毎回、思い出すのも辛い過去を何度も口にするのは、普通はとてもじゃないけれど受け入れがたいことのはずだ。だが、ナディアさんは壮絶な現状を世界に知らせ、世界から救済の手を差し伸べてもらうため、自分の辛さを封じ込め、証言を重ねていく。そんな彼女を支えるスタッフと、二人三脚で、辛抱強く重ねる証言の日々。そして、大舞台の国連でのスピーチを勝ち取るための作戦など、自分の証言が同胞を助ける希望となることを信じて歩みを止めないナディアさんの素顔をカメラはじっくりと映し出す。



本当は美容師になりたかったというナディアさん。ISISの襲撃がなければ、そんな夢を叶えながら、地元で青春を謳歌していたはずだ。でも、今やナディアさんは、彼女の行くところには人だかりができる有名人となり、そして彼女が声を発するのを、同胞の皆さんは待っている。ナディアさんこそが行方不明の家族を連れ戻してくれるかもしれない希望と信じ、その声に熱心に耳を傾ける聴衆の切実な表情も映し出し、いまだ解決していないこの問題を世に知らしめなければというアレクサンドリア・ボンバッハ監督の意図が読み取れるのだ。自分を奮い立たせ、勇気をもってISISに立ち向かうナディアさんの姿に、声を上げること、それを持続させることがいかに大切かを今更ながら思う。少数民族の虐待や女性への性暴力。時代と共に繰り返されてきたことと諦めてはいけない。決して。




<作品情報>

『ナディアの誓い - On Her Shoulders』”On Her Shoulders”

(2018年 アメリカ 95分)

監督: アレクサンドリア・ボンバッハ

出演:ナディア・ムラド他

テアトル梅田公開中 ※23日(土)上映後、玉本英子さん(アジアプレス)のト-クショ-あり

4月6日〜元町映画館公開

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