日本初開催!台湾人水墨画家、彭康隆展 ―無孔笛―@京都文化博物館別館ホール
8月27日(火)より9月3日(火)まで、京都文化博物館別館ホール(京都・四条)にて、台湾人水墨画家の「彭康隆展 ―無孔笛―」が開催中だ(入場無料)。
1962年台湾花蓮県生まれの彭康隆氏は、国立台北芸術大学で水墨画を学んだのち、従来の枠に囚われることが多い水墨画に新しい多彩な表現をもたらし、独自の解釈で水墨画に取り組む作家だ。台湾を中心に香港でも展覧会を行ってきた彭氏が日本初となる展覧会の地に選んだのが京都だった。ちなみに本展覧会を開催するにあたり、京都祇園の老舗書画専門店 山添天香堂が窓口となって尽力したという。
重要文化財・旧日本銀行京都支店の京都文化博物館別館ホールは、非常にレトロな雰囲気のある空間で、今までコンサートや無声映画上映イベント、シンポジウムなどで足を運んだことがあったが、本格的な展覧会が開催されているのを見るのは初めて。黒い壁面が斜めに配置され、通路から様々な作品が一気に見渡せる。少し迷路のようにもなっており、近づいていくと、彭氏の独創的な水墨画がぐっと姿をあらわす。シックな感じが会場の雰囲気と馴染み、重厚感のある空間に勢いのある水墨画の息吹が聞こえてくるかのようだ。
タイトルの「無孔笛」とは、中国の禅宗および道教の内丹学に共通したことばで、人間の深層的精神世界に秘められた心象を指すという(図録より)。
今は山村で生活しながら水墨画を書いているという彭氏の作品は、自然をモチーフに自身の内面に光を当てながら、自由な表現を目指しているように見える。本展覧会の中で一番大きい作品、「徴候(ちょうこう)」。間近で見ると、その迫力に圧倒される。水墨画ながら、密集した線で、自然の力強さとそこに差し込む光が豊かに感じられる。
手すきの紙に描かれる作品群。「晦朔(かいさく)」は、左半分が伝統的な水墨画をイメージさせ、右半分は彭氏特有の、煙のようにもやもやとしたタッチが印象的。
木の枝葉から植物の根に到るまで、ひと筆ひと筆に込められた彭氏の気持ちが伝わってくるような、静かに味わいたい展覧会だ。
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