『メイキング・オブ・モータウン』黒人ミュージシャンへの偏見を憧れに変えた米デトロイトで生まれの最強レーベル


 ビートルズやローリング・ストーンズが憧れたという世界に名だたる音楽レーベル“モータウン”。1959年、自動車産業最盛期で勢いがあったデトロイトにタムラ・レーベルをスタートさせ、モータウンの歴史は幕を開けた。本作はそのモータウンの創設者ベリー・ゴーディが、初めてその歴史とミュージシャン育成の秘密を語り明かした貴重な音楽ドキュメンタリー。親友であり戦友のスモーキー・ロビンソンを交えて、創立時から振り返るそのトークはまさに弾丸そのもので、最盛期の勢いを体感しているかのよう。次から次へと出てくるモータウンが育てたアーティストたちの発掘時代映像にもぜひ注目してほしい。



 フォードの自動車工場で働いている時に自身のレーベルを運営するノウハウを蓄えたというゴーディ。南部から大量の移民がいたデトロイトは、子どもたちも街角で競って歌っており、才能発掘に最高の場所だったという。自動車工場で一番何を培ったのかといえば、工程を管理していくこと。中でも重要視していたのは、品質管理(ヒットを出すこと)と、組織の拡大、そして才能の育成だ。品質管理では女性役員もすでに登用し、皆でリリースするかどうかの会議を行う。その様子はまさに丁々発止で、ヒリヒリするような真剣さが伺える。ターゲットも戦後世代の若者たちに絞り、ポップな音楽を発信し続けることで急成長していく。見事なマーケティング戦略だ。



 多くの黒人ミュージシャンを率いたモータウン。その中でもダイアナ・ロスが所属したモータウン最大の女性グループ、スプリームスが1964年、初めて人気テレビ番組、エドサリバンショーに出演し、黒人女性が初めて白人社会に認められたと言われるほどのインパクトを与えたことは本作で初めて知った。スプリームスが成し遂げた偉業は、ヒットチャート上のことだけではなかったのだ。映画では、まだ5歳のマイケル・ジャクソンが甲高い声でノリノリに歌うジャクソン5オーディション映像や、モータウンを初めて訪れたまだ10代のスティヴィー・ワンダーが歌いながら突然ハーモニカを取り出して吹き出したり、もうすっかり貫禄のついた姿しか見ていないので、とても新鮮!テンプテーションズの創立者オーティス・ウィリアムスら、モータウンの歴史を作ったミュージシャンたちが語る当時のエピソードから、最盛期の熱気が伝わってくる。



 もちろん単なる成功物語ばかりではない。社長でありながら曲も作るゴーディのもとヒットするポップスを量産してきたが、音楽性の違いから大量ポップス生産工場から離れていくアーティストが登場するのも無理はない。それでもモータウンが人種差別をはねのけ、黒人ポップスという分野を開拓した功績は計り知れない。60年代から70年代とアメリカ激動の歴史の中で駆け上り、頂点を極めたモータウン秘話の数々にはその自負が滲んでいた。


『メイキング・オブ・モータウン』”Hitsville: The Making of Motown”

(2019年 アメリカ、イギリス 112分)

監督:ベンジャミン・ターナー、ゲイブ・ターナー 

出演:ベリー・ゴーディ、スモーキー・ロビンソン 

:9月18日(金)よりシネ・リーブル梅田ほか全国順次ロードショー

公式サイト → makingofmotown.com

配給:ショウゲート

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