グランプリは『おひとりさま族』(韓国)、『アニタ』(香港)は観客賞とスペシャルメンションの2冠に!第17回大阪アジアン映画祭受賞結果発表


 3月20日、ABCホール(大阪・福島)で第17回大阪アジアン映画祭のクロージングセレモニーが行われ、グランプリ以下各賞が発表された。

 グランプリ(最優秀作品賞)に輝いたのは、韓国の新鋭、ホン・ソンウン監督の長編デビュー作、『おひとりさま族』。できるだけ周りと関わらず、コールセンターのオペレーターの仕事を淡々とこなす主人公が、父との確執、隣人の孤独死、職場での新人との関わりの中で、改めて他者とのつながりから生まれるものを見つめ直すヒューマンドラマだ。

受賞理由:

韓国のみならず、今、世界の多くの場所で、人が一人で生きるということは現代的な題材であると思います。しかし、本作の素晴らしさは、題材の良さにとどまりません。主人公が職場での電話対応をする際の彼女一人をとらえたフレームワークなど、映像によって観客に伝えていく力がすぐれていることに感銘を受けました。

また、人間の生と死の関わりのもと照らし出される孤独と他者とのつながりに、静謐でありながら力強さも感じさせ、グランプリに選出しました。



 今年の大阪アジアン映画祭で最も注目を集めた香港で大ヒット中の話題作『アニタ』(監督:リョン・ロクマン)は、見事、コンペティション部門スペシャルメンションと観客賞の2冠に輝いた。

香港のみならず中華圏で伝説の歌姫、アニタ・ムイ(梅艷芳)の生涯を描く本作では、彼女の生い立ちをはじめ、デビュー当時の80年代香港音楽界の様子や、日本人歌手との恋、タイに身を隠すことになった事件など、日本ではあまり知られていない面も含めて、踏み込んだところまで描いている。日本のヒット曲のカバーソングも多数登場し、当時の香港と日本の音楽界との深い関係も窺い知れる。そして何と言っても、アニタがデビュー当時から友情を築いていた香港、永遠の明星、レスリー・チャン(張國榮)とのエピソードは、後半になればなるほど、涙なしでは見られない。SARSで、現在のコロナ下のような状況に陥った香港で、病をおして、「The show must go on」と訴え、医療従事者支援のコンサートを実現させたアニタの志は、混迷の現在を生きるわたしたちに、多くのものを訴えかける。”香港の娘”と香港人が愛するアニタ・ムイの魂に触れる、感動作だ。


審査委員コメント:

『アニタ』を本映画祭で観られたことは、私たち審査委員にとってだけでなく、また観客の皆さまにとっても大きな思い出となったことでしょう。本作は、コンペティション部門で賞を贈る対象ととらえるには、他の作品と製作予算規模などの点において大きな差異があるため、難しいと感じましたが、今年の大阪アジアン映画祭に本作が存在したという足跡を残したいと願いスペシャル・メンションといたしました。

香港エンターテインメントの輝ける星であった「アニタ」の人生を愛をもって描くと同時に、香港というかけがえのない街の1980年代から今に至る歴史をも感じさせる感動的な作品でした。本作が今後、日本の大きなスクリーンで上映されることを心より祈ります。



 そして來るべき才能賞は、日本から唯一コンペティション部門に入選を果たした『世界は僕らに気づかない』の飯塚花笑監督が見事受賞を果たした。(後日インタビュー記事を掲載予定)。

従来の性的マイノリティを描く映画とは一線を画し、フィリピンパブに働く母とダブルの息子のぶつかり合いを中心に、親子であっても異文化を受け入れることの難しさや、日本の社会ではダブルであることがコンプレックスやいじめにつながる現状を細やかなエピソードを盛り込みながらイキイキと描写している。高校3年生という多感かつ転機を迎える年齢で、同性の恋人とも意見が食い違ってしまう純悟を演じる堀家一希とは、話し合いを重ねたという飯塚監督。授賞式では審査委員のエスター・ヤン氏(写真左)が、英語で受賞理由を述べられた。


受賞理由:

韓国のみならず、今、世界の多くの場所で、人が一人で生きるということは現代的な題材であると思います。しかし、本作の素晴らしさは、題材の良さにとどまりません。主人公が職場での電話対応をする際の彼女一人をとらえたフレームワークなど、映像によって観客に伝えていく力がすぐれていることに感銘を受けました。

また、人間の生と死の関わりのもと照らし出される孤独と他者とのつながりに、静謐でありながら力強さも感じさせ、グランプリに選出しました。


その他の受賞結果は以下のとおり。

【ABCテレビ賞】

『はじめて好きになった人』(The First Girl I Loved)|香港

監督:キャンディ・ン(Candy NG)、ヨン・チウホイ(YEUNG Chiu Hoi)



【薬師真珠賞】

バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル(BAYARTSETSEG Bayarjargal)|モンゴル

『セールス・ガール』(The Sales Girl)主演俳優

(後日ジャンチブドルジ・センゲドルジ監督インタビュー記事を掲載予定)



【JAPAN CUTS Award】

『山歌(サンカ)』(Sanka: Nomads of the mountains)|日本

監督:笹谷遼平(SASATANI Ryohei)



【芳泉短編賞】

『二度と一緒にさまよわない』(We'll Never Get Lost Together Again)|トルコ・ロシア・ウクライナ

監督:ユージーン・コシン(Eugene KOSHIN)


【芳泉短編賞スペシャル・メンション】

阿部純子(ABE Junko)|日本・ネパール『バグマティ リバー』(Bagmati River)出演

(後日、松本優作監督、撮影・岸健太朗さんインタビュー記事を掲載予定)


受賞結果、受賞理由はコチラ

第17回大阪アジアン映画祭公式サイト

https://www.oaff.jp/2022/ja/index.html