『止められるか、俺たちを』新人助監督の目から描く、若松プロのギラギラした日

若松孝二監督逝去から早くも6年が経つが、残された遺伝子たちは、その思いを一本の映画に結実させた。白石和彌監督、井浦新、大西信満、寺島しのぶ、高良健吾、高岡蒼佑ら、若松監督を師と仰ぐ面々に加え、山本浩司、藤原季節、毎熊克哉らが新たに参加。そして群像劇の主役となる、実在した若松プロの若き助監督、吉積めぐみを演じるのは、独特の雰囲気とアンニュイさを持つ門脇麦。脚本の井上淳一をはじめ、90年代以降に若松プロに参加した面々たちが、若松プロが日本映画界で一番ギラギラとその存在を放った60年代後半から70年代の日々を全力で描いている。


21歳で若松プロの門を叩いた吉積めぐみ(門脇麦)。映画制作は完全に男社会の中で、若松監督の愛ある罵声を浴びながら奮闘する姿や、そんなめぐみを暖かく見守る若松プロの面々が入れ替わり立ち替わりクラブの部室のような事務所に訪れ、議論を交わす。足立正生(山本浩司)、沖島勲(岡部尚)、大和屋竺(大西信満)、秋山道男(タモト清嵐)、小水一男(毎熊克哉)から、荒井晴彦(藤原季節)、大島渚(高岡蒼佑)まで、日本映画界に大きな影響を与えた映画人たちの若き日は、何者かになりたいという夢や野望を抱いた、ちょっと無謀で、でも映画に対する愛情は限りない若者たちだったのだ。


乗り移ったかのように、名言、迷言を繰り出す若松孝二監督を演じたのは、若松監督作品に主演経験多数の井浦新。若松監督亡き後も、追悼上映などには精力的に舞台挨拶やトークを行ってきた井浦が撮影現場での若松監督を完全再現。様々な初期作品の撮影現場シーンを盛り込みながら、時代のうねりと共に独自性溢れるサイケな作品を生み出していった現場の熱をしっかりと焼き付けている。


やはり一番の驚きは、70年当時に女性の助監督が若松プロにいたということ。吉積めぐみが初めて監督したポルノの短編(結局はお蔵入りとなった)があったこと、そして若くしてその命を閉じたことなどをこの映画で知ることができた。もし彼女が生きて、そのまま監督になっていたなら、若松プロもまた違う色合いを出していたかもしれない。そう思う一方、この物語は、見習いのめぐみの視点から描いたことで、見るものが気持ちを重ね、独特の熱を持つ、ちょっと近寄りがたい若松プロの中を覗くことができたような気がする。昭和が元気だった最後の時代に鮮烈な痕跡を残した若松プロが、昭和が遥か彼方になってしまった今、蘇ることの意義を感じずにはいられない。

10月20日からシネ・リーブル梅田、第七芸術劇場、シネ・リーブル神戸、京都シネマ にて公開。


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