日韓の映画館がタッグを組んだ新企画【コミュニティシネマフェスティバルVol.1 日韓映画館の旅】が11/15よりシネ・ヌーヴォをはじめ全国5ヶ所で開催
日韓交流60年という節目の年、日韓の上映者が共同で日本未公開の韓国映画と映画館についてのドキュメンタリー映画、日本のインディペンデント映画、韓国の1950年代の知られざる名作など14作品を一挙上映する【コミュニティシネマフェスティバルVol.1 日韓映画館の旅】が、11/15(土)より大阪のシネ・ヌーヴォ、福岡の福岡市総合図書館映像ホール・シネラを皮切りに、東京のユーロスペース、ストレンジャー、アテネ・フランセ文化センター、高崎のシネマテークたかさきと連続で開催される。
今年が初開催となるコミュニティシネマフェスティバルのゲストとして15日にシネ・ヌーヴォ、16日に福岡市総合図書館映像ホール・シネラでゲスト登壇予定のキム・ドンホさん(『Mr.キム、映画館へ行く』監督)、イ・ジェウンさん(『成績表のキム・ミンヨン』共同監督)、イム・ジソンさん (『成績表のキム・ミンヨン』共同監督)、ジュヒさん (韓国のアートシネマ/配給会社「アートナイン」)が記者会見で想いを語った。
■日韓それぞれの映画紹介を民間主導で行えたことに感無量(ジュヒ)
韓国芸術映画館協会で統括理事を務め、自身もミニシアターのアートナインを運営しているジュヒさんは、韓国側の主催者としてこのコミュニティシネマフェスティバル開催の立役者とも言える存在。
「日本のコミュニティシネマセンターとは10年ぐらい前から交流し、2019年埼玉の全国会議に韓国芸術映画館協会が招いていただいてから本格的な交流が始まり、すごく刺激を受けました。シネコンが人気を集める中で、アートハウスがいかに大変かは両国とも同じ、それを乗り越えようとする日本の映画館のみなさんに刺激を受けました。2024年は仁川でいかにコロナを乗り越えてきたのか、これからどうすればいいのかを話し合う中で、小さいことから始めてはどうか。例えば韓国の映画を日本で、日本の映画を韓国で紹介し合うことを映画館という民間主導で行うことはできないかという提案がきっかけで、この日を迎えました。本当に今日は感無量です。来年は日本映画の韓国上映を企画しているので、よろしくお願いします」とご挨拶された。
■大事なのは継続性(志尾)
一方、日本側の窓口を務めるコミュニティシネマセンター事務局長の岩崎ゆう子さんは、「2018年、韓国でミニシアターの調査をしたことが日韓の交流がはじまるきっかけになりました。その後、全国コミュニティシネマ会議にお招きし、何度か行き来する中、当初からジュヒさんに日本で公開されていない韓国の面白い映画がたくさんあると声がけいただいていたのですが、資金もなくなかなか勇気がでませんでした。2024年にシネ・ヌーヴォの山崎さんらと仁川とソウルを訪問し、思い切ってやってみるかという気持ちになったのです。作品の選定から何から何まで、ジュヒさんに大変お世話になりました」と感謝。
さらに群馬県高崎市のNPO法人で映画の上映、映画祭を行うコミュニティシネマ代表理事の志尾睦子さんは「日韓という形で相互に互いの才能を紹介し合う、上映者同士が結びつくフェスティバルとしてこれからも続けていきたい。配給会社にお任せするのも一つだが、わたしたちミニシアターが力を合わせてダイレクトに新しい作家を紹介できれば。大事なのは継続性です」と意欲を見せた。
初長編ドキュメンタリーを携えての来日となった釜山国際映画祭立ち上げメンバーの一人で、初代フェスティバルディレクターを務めたキム・ドンホさんは「大阪でお会いできたことをとても嬉しく思います。大阪はわたしにとって友人の家のような存在です。1970年、大阪万博に来て、日本の近代化のダイナミズムに触れ、感動したことを覚えています。85年には大阪城を見て、その雄大さに驚き、92年には大阪の韓国文化院の委員長と大阪の繁華街で一晩中飲み明かしました。わたしにとって大阪は衝撃とロマンの街として刻まれています。90歳を目前に控え、この歳で拙くも映画を撮らせていただき、この映画で皆さんとお会いでき、どのように受け止めていただけるのかと思うと少し怖い気持ちがあります」と上映前の心境を明かした。
■日本の観客のみなさんに共感していただけるか楽しみ(イム・ジソン)
『成績表のキム・ミンヨン』共同監督のイム・ジソンさんは、「作品は二十歳になった二人の女性の物語を描いています。高校生のときに親友だった二人が、二十歳になり人生の関係性が変化していく中、二人の感情の変化を深く掘り下げた映画になっています。昨年二人で大阪旅行をしに初来日し、一年後にこの映画で招いていただき感謝の気持ちでいっぱいです。公開がコロナの時期と重なり、海外の観客の皆さんと直接触れ合う機会はありませんでした。海外の観客の皆さんにお会いできるのは今回が初めてでドキドキしています。韓国では共感していただける作品になりましたが、日本の観客のみなさんに共感していただけるのか、どのような部分で共感していただけるのかがとても楽しみです」と観客との交流を楽しみにしている様子。
同じく共同監督のイ・ジェウンさんは「本作はささやかな日常を描いた映画となっています。日本映画の感性に近い部分があると思います。二人とも日本映画が好きで、山下敦弘監督の『天然コケッコー』のユーモアや、三宅唱監督の『夜明けのすべて』の温かさに大変影響を受けています。今回、このように素晴らしい機会をいただけ、本当にワクワクしていますし、緊張しながら参りました。このような機会がますます活性化し、私たちがまだ見たことのない日本映画が韓国で観られるようになることを祈っています」と両国の映画を通した交流に期待を寄せた。
■それでも映画、映画館は存続する(キム・ドンホ)
最後の質疑応答で、映画と映画館の未来についてアジアの映画監督、俳優や映画館経営者にインタビューした作品を撮った上で自身の「映画と映画館の未来」について想いを聞かれたキム・ドンホさんは「映画館の未来は映画の未来と直結し、そこには悲観的、楽観的、二つの見解が存在しています。テレビが登場し、ビデオ産業が爆発的に広がった1982年にヴィム・ヴェンダースがスピルバーグ、ゴダールらに映画の未来についてインタビューしたドキュメンタリー『666号室』を撮っていますが、その問いに答えた人の100%が『映画の未来はこれからも存在する』と答えていたんです。2023年に『666号室』をのオマージュとして、ヴェンダースやデビッド・クローネンバーグ、クレール・ドゥニなど30人の監督にインタビューしたドキュメンタリー『999号室』が製作されましたが、メディア環境の変化やショート動画が支配する中、大多数の監督が悲観的な観測を語っていました。わたしがこの作品を通じてインタビューをした国内外の多くの監督たちは『それでも映画、映画館は存続する』と語っていますし、わたしもそう思います」と明言した。
■名作の4K上映や新しい才能の発掘が差別化に(ジュヒ)
キム・ドンホさんの『Mr.キム、映画館へ行く』にも出演していたジュヒさんは、アートナインを差別化するために独自で配給すると語っていたことに関連し、具体的な内容を聞いたところ「韓国と日本では、ミニシアター系作品の配給方式が違います。日本は、東京からはじまり、地方に順次公開していく長期間の上映ですが、韓国のミニシアターではアート作品も全国一斉公開するのです。正直、その方法が有効的かという疑問があり、単独でプログラムを考えることも行なっています。今韓国ではかつての名作の4K上映が流行っており、映画館で映画的瞬間を楽しめる、映画館でこそ観たいという作品を見せることが差別化に繋がっています。また、これからの才能のある作品を発掘していくのも大事です」と韓国でのミニシアターの配給、上映について解説された。
さらに新しい才能という点で『成績表 キム・ミンヨン』についてお聞きすると、「20代の部下たちは熱狂的な気分でこの映画が好き!だと言うのです。わたしは最初はいい映画なのかわからなかったのですが、見ているうちにこの世代の感覚が伝わってきました。そしてこの二人の映画を多くの方に届けたいと思ったのです」
■映画の感想より自分の体験を書き込んでくれた(イム・ジソン)
コロナで日本をはじめ、海外の観客と上映を通じて接する機会がなかったというイム・ジソンさんに、国内での反応を聞いてみたところ「予想していたよりも多くの韓国の主要映画祭で見ていただける機会があり、予想もしない出来事がたくさん起きました。主演俳優も映画祭で上映されたあとの感想や書き込みをいろいろ探して見ていたのですが、ほとんどのお客さまの反応が映画に対する評価というより、自分の経験をたくさん書き込んだり語ったりしていたのです」と思いもよらぬ反応が印象的だったことを明かした。
国内映画祭にとどまらず、第51回ロッテルダム国際映画祭、第18回香港アジア国際映画祭にも正式招待され、日本初上映となる注目作。他にも韓国芸術映画館協会賞受賞作品として『ロンリー・アイランド』『長孫─家族の季節』、映画館のドキュメンタリーとして『ウォンジュ・アカデミー劇場の記録』、日本映画のインディペンデント映画として『Underground アンダーグラウンド』『1000年刻みの日時計 牧野村物語』が上映される。
関連企画:1950年代韓国映画傑作選では、韓国の国立映画アーカイブである「韓国映像資料院」が創設50周年記念事業としてレストアした1950年代の韓国映画の傑作7作品を上映する。
主催|コミュニティシネマフェスティバル実行委員会
(シネ・ヌーヴォ/ストレンジャー/特定非営利活動法人たかさきコミュニティシネマ/ユーロスペース/福岡市総合図書館/アテネ・フランセ文化センター/一般社団法人コミュニティシネマセンター)
共催:韓国芸術映画館協会KOREA ARTHOUSE CINEMA ASSOCIATION
助成:芸術文化振興基金助成事業 韓国映画振興委員会 Korean Film Council (KOFIC)
作品提供:Atnine Film Co., Ltd. / Bori & Odi Film / Indiestory / mediaharu /TIGER STUDIO SANAI PICTURES
協力:アウラ(日本語字幕作成)、広島市映像文化ライブラリー
関連企画「1950年代韓国映画傑作選」 作品提供・協力:韓国映像資料院 The Korean Film Archive(KOFA)
【ウェブサイト】http://jc3.jp/ccfes/
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