台湾、香港、韓国の最新デザイン、本の作り手が語るカルチャー&社会状況、それを切り開いていく道筋@KITAKAGAYA FLEA 2019

大阪を拠点にローカル・カルチャーマガジン「IN/SECTS」を発行するLLC インセクツが主催のマーケットイベント「KITAKAGAYA FLEA & ASIA BOOK MARKET2019」が今年も北加賀屋の名村造船所跡地/クリエイティブセンター大阪で開催されている。


台湾、香港、韓国から多彩な書店が出店しているのが大きな魅力のこのマーケット。昨年も充実のトークに惹きつけられ、各書店を巡るきっかけになったのだが、今年のトークはさらにバージョンアップし、興味深いテーマが揃った。




■「台湾のデザイン事情」

まずは台湾の出品者より、デザイン会社、方序社の方序中(Joe Fang)氏を招いて行われたトークセッションでは、まず方序中さんが携わっている仕事が紹介された。大人気アーティスト五月天(MAYDAY)のアルバムジャケットでは、世界で活躍しているグループなのでその抱擁性を表現するべく、台湾だけではなく世界中のアーティストとの共同制作を行ったとその狙いを明かした他、プラスチックと水を使って流動性を表現したものや、新しい技術を使い、ライトが当たると画像が浮かび上がるようなものも紹介。その発想の豊かさに驚かされる。大物ぶりを実感したのは、台北金馬奨(TAIPEI GOLDEN HORSE FILM FESTIVAL)のメインビジュアルを2年担当したということを知った時だ。しかもその一枚にはホウ・シャオシェン、アン・リーら巨匠の横顔を並べているというのだからデザインの中に確固たるコンセプトを感じさせる。


俳優、金土傑さんを伯父に持つ方序中さんは小さい頃から映画をよく観ていたそうで、消えていく風景や土地の記憶を残そうと、写真集「小花攝影集」を出版。方序中さん自身の実家や、金土傑さんの多彩な表情もモノクロで切り取られている。まるで薄れていく記憶のように、写真集の前半の濃い色合いから、どんどんと色合いが褪せていったり、表紙の装丁も彫刻のようなボコッとした手触りになっており、随所に細かい仕掛けが施されている。

ちなみに現在、台北現代美術館では方序中さんがキュレーターを務める「查無此人─小花計畫展」 Where Have All The Flowers Gone -- These Flowers. Musical Memory & Art Exhibitionを7月7日まで開催中。日本からは明和電機も参加し、国を超えた多くのクリエイターとのコラボを実現しているそうだ。「今の台湾は何か変革を起こしたい時期」という方序中さん。「自分の声を社会に聞かせたいという時代に、どのようにでデザインで表現するのかを考えると、古いものを融合しながら新しいものを作り出すことに行き着く。音楽も印刷物も、新しい技術でデザインをすると消えることはない。今は、土地の記憶をどういう形で残すのかを考えており、デザインを通したコミュニケーションをしていきたい」と今後の展望を語られた。台湾人らしさを求める風潮にある今、消えゆくものに目を向け、その一方、新しい技術を取り入れながら、質感にこだわり、コンセプトからデザインするトップクリエイター。この話を聞いてから、いざ写真集を手に取ると、本当に味わい深く、即購入!つたない英語で会話をさせていただき、写真集のさらなる説明もいただいてから、いざ手にとって見始めると、こだわりと、そこに込められた思いが写真や装丁の手触りからじわりじわりと伝わってきた。



■「香港のアート、カルチャーとコミュニティ」

香港からは、出品者のShanghai Street Studio、Art&Culture Outreach、ZINECOOP、Queer Reads Libraryさんらが自身の活動を通じて、香港の今を語ってくれた。


Shanghai Street Studioさんは、九龍エリアの労働者階級が多く住む油麻地で活動しているそうで、庶民的な場所で、印刷製本を手がけ、バナナの叩き売りのような場所で、それこそバナナと並んで本を売っているようなスライドも!市場の前に椅子を並べてアウトドアでのリーディング会などもされているそうで、他のスタイリッシュな雰囲気の出品者とは一線を画する、ローカルにど密着しているのがとても新鮮だった。

Art&Culture Outreachさんは、香港島のビジネスエリアのビルで多種多様な本を応援する非営利団体。ビルの展示用空き部屋を若いアーティストに安価で提供するなど、アーティスト支援を行っている他、出版はメインではないとしながらも、依頼があれば水上建築や漁師歌などの本を作った実績あり。

ZINECOOPさんは、香港やマカオのアーティストたちが表現する場を提供している。ユニークな取り組みとして紹介されたのが、毎回違う場所で発行している新聞。その第一号は日本だったのだとか。予算は同じで、1000部を現地の印刷会社で刷ることにより、それぞれの都市の印刷会社をサポートすることが目的だそう。様々な国での滞在経験があるスタッフが集まり、長期間をかけて本を執筆しているというスタッフも。アーティスト集団ならではの個性と活気が感じられる。


soft d pressをプレゼンしたスタッフ(写真左)は、女性が自分の体を男から見られるヌードではなく、主体的に表現するような作品や、労働者の肉体を映し出す作品を発表しているという説明と共に、写真集を回していただき、女性自らが発信する女性の表現に感じ入る。

そして、Queer Reads Libraryさん(写真中央、右)からは、驚くべき事実が。昨年香港で、公共図書館からLGBTQ関連の書籍が排除されたのだという。同性婚が容認された台湾とは全く逆を行く状況だが、それをきっかけに、LGBTQの人たちがクラブやバーなどの場所以外に、昼間に集える場所を作りたいと発足したそうだ。現在は排除された書籍が読めるようなスペースを作っているそうだ。ただ、常設ではなく、イベント的に行われているそうで、SNSで開催を呼びかけ、参加者を集めているのだという。90年代のゲイ雑誌などもラインナップし、本来全ての人に開かれた場であるはずの図書館の代理的役割を果たすことで、見えない存在を見える存在、共生すべき存在として支えたいという気持ちが強く感じられた。


■「韓国の本を通して見る、脱北者、性的マイノリティ、そして女性の物語」 

韓国からは、一人書店として個人出版業界で大きな成果を出し、注目されている6699pressのイ・ジェヨンさんによるトークが行われた。マイノリティの意見を取り上げたいという考えのもと、脱北者や女性問題、セクシャルマイノリティから、消えゆくソウルの銭湯を取り上げた本など精力的に出版しているジェヨンさん。

脱北者を取り上げる本を作ろうとしたきっかけは、今韓国で32705人の脱北者がいるうち、72%が女性で、彼女たちが韓国のテレビ番組では辛く悲しいという観点からでしか語らないことから、マスコミがそのようなイメージを押し付けているのではという疑念を持ったことからだったという。「脱北者の人が本当に言いたいことを言えるように」と考えた結果、学校でワークショップを開催し「私が考えるソウル」を語ってもらったり、絵で書いてもらったのだという。それらを本にするにあたっては、タイトルを「私たちはソウルに住んでいる」とし、脱北者という言葉は使わず、またデザインも赤など脱北者をイメージさせるものは使わないように腐心したのだとか。「この本で、脱北者のリアルな姿を通して、一緒に暮らしている存在であることを紹介したかった」とその真意を明かした。

また、女性の働く環境についての本の話の前には、韓国の大学での女性職員の少なさをグラフを示しながら言及。韓国の女性デザイナーについての本(「韓国、女性、グラフィックデザイナー」)を作るきっかけになったのも、韓国でデザイン学校の生徒は7割が女性なのにもかかわらず、いざデザイナーを職業にしている人は男性の割合の方が上回っている現状があったから。韓国で女性デザイナーとして生きるにはというテーマで11人と対談。デザイナーを取り上げながらも、本の内容はテキストのみで構成し、内容を浮き上がらせる構成にしたという。「82年生まれ、キム・ジヨン」のヒットが韓国における女性問題への関心を大いに高めたように、韓国では出版が社会に大きな影響を与えているのは、SNSやネットに世論を左右されがち(と大々的に報道されがち)な日本とはまた違う社会の動きを感じる。自分の社会的関心を当事者が参加しやすい形で取材し、従来のイメージを廃するデザインで、まっすぐに届ける。十分に練られた戦略と行動力で注目される一人出版社に、インディペンデントならではの視点を見た。



トーク満喫の話題ついでに、うれしい再会の話題も。

昨年台中手書きマップを購入したARTQPIEさんが今年も出店。台中のことを教えてくれたイラストレーターIRISさんのナチュラルかわいいイラストが満載の台中名物がたっぷり詰まった新刊「真的假的台湾」をおすすめしてもらい購入!日本語、英語も書いてあるので、イラストと共に90コもある台南名物を楽しめるスグレモノだ。「ほんとに?」とか「マジで?」という意味のタイトル。黄色いページのポップな本。これまた台南に行きたくなる〜〜〜


Cinemagical シネマジカル

映画を楽しむ。人生を楽しむ。