台湾出版界の女性パワーに触れる感動体験@KITAKAGAYA FLEA 2018 SPRING & ASIA BOOK MARKET
大阪を拠点にローカル・カルチャーマガジン「IN/SECTS」を発行するLLC インセクツが主催のマーケットイベント、「KITAKAGAYA FLEA & ASIA BOOK MARKET」。私の地元、加古川出身のイラストレーター、朝野ペコさんが似顔絵で出店されていると知り、前から気になっていた会場「名村造船所跡地/クリエイティブセンター大阪」見たさも相まって、足を運んでみた。地下鉄四つ橋線北加賀屋駅から徒歩で、緩い人の波に乗って歩いていくと、カーニバル感が。
入口で入場料500円を払い、手にスタンプを押してもらう。1階はカレーを中心にした飲食ブース、2階は雑貨、小物、一部飲食ブース、そして3階は日本、韓国、台湾の出展者からなる本のフロアが!トークスペースが2か所もあり、とにかく広々とした空間なので、ゆっくりと本を選ぶことができる。
私が到着した時、すでにスタートしていたのが、『台湾オールスターズ7minプレゼンテーション&私のお気に入り台湾』。自ら台日系文化誌を発行し、最近は実店舗もオープンさせたLIPの田中佑典さんの司会で、台湾の出店者が次々に取り扱う、もしくは発行している出版物の紹介を行う。台湾中の地理や見どころを知り尽くしているのではないかというぐらい台湾カルチャーシーンや見どころに詳しい田中さんが、本の情報だけではなく、お散歩情報や、人気カフェ、夜のスポットなど色々と聞いてくれるのも楽しい。何よりも驚いたのは、登壇した出店者のほとんどが女性であったこと。台湾の出版業界は若い女性がイキイキと、自分たちの作りたいものを作っている。映画でいえばインディーズ映画的位置づけなのだろうが、こうして日本までその魅力を届けにきてくれ、その生の声を聞けるのはとてもいい。ただ書店が並んでいても、やはり言葉が分からないので、何の本かよほど興味深く見て行かないと、素通りしてしまいかねない。ちなみにこの写真のBacon pressさんは台南の出版社なのか、この冊子も高雄の沖にある島のことを特集している冊子を紹介。比較的若い人たちが新しいことを追いかける中、Bacon pressさんは自らの根っこを見つめる、歴史であったり、地域のことを深堀りした冊子を作っているそう。
Bacon pressさんの遊び心を感じるのは、日本の姉妹都市と共同で作成したこの冊子。表紙は台南のおばちゃん。中身も日本語で台南の町情報や、お料理、ユニークなコラムがふんだんな写真と共に紹介されている。コテコテな感じが大阪っぽくて親近感たっぷり。
こちらはLEZSさんの機関誌。中華圏ではじめてレズビアンのライフスタイル誌を作ったLEZSさんは、台湾や香港でガールズパーティーを主催したり、台湾の国際女性映画祭に合わせたイベントの開催や、Youtubeで動画も配信しているそう。レズビアンだけでなくLGBTQの啓蒙や、さらには一般の人にも観てもらえる誌面を目指したいと抱負を語られていた。
とにかく、表紙の女性がどれもメチャクチャかっこいい、この雑誌。登壇されていた編集長で代表のAnn-jiun Wangさんとブースで通訳さんを通じて話をしているうちに、グイ・ルンメイの表紙を見つけ、映画の話なども少しして、最新号とラスト1冊だったグイ・ルンメイ表紙の号と2冊をゲット。全て中国語だが、感じでなんとなくタイトルの意味するところは分かる。LGBTのパリでのパレードレポートのような社会的なものもあれば、感じの良いお店紹介や、ファッション、セックスとスタイリッシュで、表紙だけでなく、中の写真もすごくいい。今日のようなイベントでなければ、なかなか出会えない雑誌だ。
こちらは台中のARTQPIE(アキュパイ)さんによる台中マップ。ARTQPIEさんは古い家をリノベーションして新しい空間を作り上げるようなこともされているそう。このマップの他に、パウンドケーキ屋さんの写真集(店主が一人で作っている様子を手元からじっくりと。フォトグラファーは長野の日本人女性だそう)だとか、かなり身近なことにフォーカスした本が多かったように感じた。登壇されたIrisさんは、台中生まれの台中育ちで、「台中には2泊3日ぐらいでゆっくり来てほしい。レンタサイクルやバスも無料、懐かしい市場などもあります」とすごく勧めてくれ、台湾は行ったことないけれど、俄然行きたくなってきた!
最後に、見事なトークで台湾本への興味を持たせてくれた田中さんが出版した最新号の台日系文化冊子。日本語と中国語の2か国語表記で、たっぷりの写真と共に、田中さんが感じる台湾のこと、田中さんが出会った人たちとのエピソードが掲載されている。私は台湾映画は比較的フォローできているが、本のことは全く知らなかったし、アートや台湾人のアイデンティティーに対する思いなどを改めて知ることができるのがうれしい。そして、こうして台湾と日本をつなぎ、新しいものを生み出そうとしている存在と出会えたのもうれしいのだ。ちなみに表紙の田中さんが着ている小室哲哉青シャツは、90年代小室哲哉が大人気だったことから、当時大人気だったこのシャツに目を付け、今はほとんど出回っていないものを、頑張って探したそう。今年の大阪アジアン映画祭の台湾映画『私を月に連れてって』でも、まさに90年代のパートで小室哲哉が登場、当時の音楽シーンでいかに人気だったかを物語るエピソードになっていたので、田中さんの表紙エピソードに思わず興奮(笑)。思わぬところで繋がるものだ。田中さんと話していて興味深かったのが「一期三会」という言葉。自身の体験から、地元の福井に戻り、例えば2週間ほどいると3日ぐらいでやることがなくなり、同じ人にもう一度会って、そこから親密さが生まれる。そうすると、また来年会いにくるねという関係が生まれると。これからのインバウンドの形として、じっくり滞在し、再訪したくなるようにと福井の名物、鯖を表紙にした本も出版している。柔軟にアイデアを実行に移す姿は、台湾流だなとこれも本日の感動ポイントだった。
当初の目的だった朝野ペコさんにも無事出会え、近況を伺いながら、今日の私の全身像を書いていただいた。今日は写真の通り、モノトーンのいでたち。パンツのすそのギザギザも再現してくれ、ありがたや。シンプルだけど、雰囲気ちゃんと似ているのがスゴイ。どんどん活躍の場が広がっている朝野さん。またお会いできるのを楽しみに。
外はこんな感じ。箕面ビールも、カレーも美味しかった!
BOOKS+コトバノイエ店主の加藤博久さん、スタンダードブックストアの中川和彦さん、grafの服部滋樹さんによるトーク『voice & message』も、行き当たりばったり風ながら、ちゃんと形になるというのがスゴイ。最初は順番に詩を朗読。ポエトリーリーディングが行われるのも本がある場所ならではだなと、本三昧で楽しめた。
まだ明日もあるが、今から来年が楽しみな、久々にワクワクするイベント。こういうところに、アジア映画も入っていけたらいいのになと、少し思ったりして。
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