「この映画は二人の人生の一瞬を切り取ったもの」『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりさんインタビュー

   弱冠25歳の若手監督・阪元裕吾監督がメガホンをとった殺し屋女子高生2人の日常を描いたアクション映画『ベイビーわるきゅーれ』が、8月20日(金)より、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル梅田、神戸国際松竹にて、8月27日(金)より、京都みなみ会館にて公開される。

 

  高校卒業後、ルームシェア生活を送ることになった殺し屋二人組が、互いの価値観を理解しながら、大人の階段を登っていく青春映画となった本作。今回は、本作で主演の一人を務めた女優・髙石あかりさんにインタビューを敢行。個性的な殺し屋・ちさとのキャラクター誕生の秘密に迫った。



 

■自由な撮影現場

――――劇中では、伊澤さんとの掛け合いなど、長回しの場面が多く、和気あいあいとした自然な空気感が心地よかったです。アドリブのように感じた部分もありましたが、現場の雰囲気はいかがでしたか。

髙石:監督はアドリブがお好きな方だったので、現場でセリフが変わることは多かったです。

撮影を進める中で浮かんだアイデアを監督に提案していただく形だったので、アドリブではないですが、固まっていない自然なセリフが生まれていると思います。

 

――――伊澤さんとは『ある用務員』に続いての共演になりましたが、その部分はいかがでしたか?

髙石:最初に伊澤さんとお話しをした時に、テンポ感やスピード感が心地良くて、その時の現場が、すごく楽しかったんです。

今回、また、二人で共演できることは嬉しかったですし、殺し屋という設定が面白くて、楽しみにしていました。


 

――――撮影前から、今回の作品を楽しみにしていたんですね。

 髙石:監督には『ある用務員』の時から、「好きにしていいよ」と言っていただき、台本にないことに挑戦させていただいたり、褒めていただいたこともあったので、お芝居しやすい環境を作って頂きました。

普段は舞台が多く映像作品は少なかったのですが、「もっと良いものを生み出したい」といういい意味でプレッシャーにも繋がり、楽しい思い出になりました。

今回は二人の主演作品なので、前回以上に色々な事ができるということも楽しみにしていました。

 

■髙石あかりさんとちさととの関係性

――――髙石さんが演じていたちさとはオンとオフの使い分けが印象的な人物でしたが、自分自身にも共通するところや違いはありましたか?

髙石:オンとオフがあるという点では、自分とすごく似ているなと思いました。

ちさとちゃんは、無意識的な身振り・手振りや喋り方が家と外で違っていて、天真爛漫な部分と達観してる部分の二面性がある女の子だったので、そういう面で通ずるものはありました。

ちさとちゃんと違う部分は、怒りの感情でした。日常生活では怒るということが少なかったので、その部分は新鮮な部分でした。

 

――――「怒り」という感情を表現する上で何か参考にしたものはありましたか?それとも想像から演技を作っていったのでしょうか?

髙石:想像という部分が大きかったです。

ただ、やったことがない分、行けるとこまで行けたという達成感はありました。

自分はここまでというリミッターを持っていないので、今回、出せるところまで出せたおかげで、ドスの利いた女の子役を表現できたかなと思っています。


 

■演技への取り組み方について

――――過去のインタビューで、日常生活でも人の真似をしたり、演技をすることがあるというお話を聞きました。そういう点で本作にも影響を与えている部分はあるんでしょうか?

髙石:あるかもしれないです。

想像するのは小さい頃から好きで、これまでも想像してやってみようというのが多かったんです。

小さい頃は親と一緒に歩いている時に「人の心って読めるのかな」と本気で思っていたこともあって、何を考えているんだろうと、ずっと母に念を送っていました。(笑)

考えすぎて、途中から「なんで読めないんだろう。力が使えなくなってるのかな。」って言っちゃうぐらいまで想像が膨らんでしまって、現実に結びつけてしまうみたいなこともありました。

 

――――小さい頃から、人の感情を想像することが好きだったんですね。

髙石:人の感情に関しては、自分では分からないことが多くて、逆に失礼にあたるぐらい、なぜ、その考えに至ったのかということが気になってしまうんですよ。

よく「なんで?」って聞いちゃうんですけど、人によっては嫌なのかなと思ったりもしていて。

今回でいうと、ちさとの「人を殺したい」という心理状態を知りたい、感じてみたいというのはあって、これから先、色々なことを経験してみたいですね。

 


――――役作りの参考は、やはり、想像力なんでしょうか。

髙石:今回の脚本は読んでいると、 ちさとの想像が出来上がってきて、動きをつけた時に違和感を抱いたり、これはちさとじゃないのではと思って、感覚的に気持ち悪くなることがあったんです。

演技の中で違うことをしているように感じたり、何か当てはまらないことがあった時には、それを監督にお伝えするようにしていて。

今回は、その意見が監督と同じになることが多かったので、とてもいい環境でお芝居させて頂きました。

 

■ちさとを作り込むうえで

――――キャラクターの生活や過去など、書かれてない部分も想像して演技をしていらっしゃったのでしょうか。

髙石:監督ともお話をして、過去はあまり作り込まないように考えていました。

この映画は二人の人生の一瞬を切り取ったもので、前も後も一切ないので、それを想像させるのがいいなと思っていて。

観た人に想像してもらえるように、監督も私も伊澤さんも、それを作らないようにしていました。

 

――――ちさとという人物を作り込む上で、監督とはどのようなお話をされていたのでしょうか。

髙石:撮影に入る前の本読みで役柄に感じたことや作品の好きなところを共有していく中で、『ある用務員』のリカちゃんとは違う人物にしていこうという話をしていました。

また、撮影中には、監督から自由に演技をするよう言っていただけたことが良い刺激になりました。



現場では、カメラモニターを見る監督の「くくくっ」という笑い声がよく聞こえてきて、そういう部分で、「もっともっと良いものにしたい」という気持ちが高まりましたね。

初めての主演作が、阪元裕吾監督作品で、本当に良かったなと思っています。

 

――――現場の雰囲気が和やかだと、アイデアも出しやすいですよね。

髙石:そうですね。ファミリーというか、同じ思いを持ったひとつの塊のような現場だったと思います。

 

■今後の目標について

――――目標にしている女優さんや、今後の目標について教えていただきたいです!

髙石:個人的には、宮崎あおいさんに憧れています。

色んな役をこれからやっていきたいと思っているんですが、人間らしさというか、繊細で生々しいお芝居をしてみたいという気持ちはあります。

 

――――役柄によって、かなり違いますもんね。

 髙石:石原さとみさんのように表情がキラキラしているお芝居もしてみたいと思っていますし、今は、現場も含めて、もっと色んな役に触れたいです。

将来は、NHKの朝ドラや大河ドラマにも出演させて頂きたいです。

 

■役作りへの苦労

――――これまでも様々な役を演じてきたとは思うんですが、そこから私生活に影響を受けることなどはあったのでしょうか

髙石:以前、感情を溜め込む女の子の役を演じたことがありました。

1日で作品を撮り終えて、役柄との関係性は終わりかなと思っていたんですが、帰ってきたら、ずっと部屋の中で泣いていて。

その時に初めて「役が抜けていない・切り替えられていない」ということに気づきました。



これまで、自分自身はドライな性格だと思っていたので大きな発見でしたし、この経験を活かしながら次のお仕事にも繋げていけたらと思ってます。

 

――――日常の経験や他の人との関わりの中でキャラクターに生かすことなどはありますか?

髙石:あります。

本当に何からも吸収するというか、映画、出会った人、恋愛リアリティーショーやアニメ、本を読んだ時に色んな部分で当てはまる人がいたら、それを取り入れようとします。

ただ、自分がその子だと思いこむと、入りすぎてしまうので、そこがまた難しい部分かなと思っています。

無意識のうちに、日常生活で出会った人を、一旦、自分に落とし込んで、理解を深めているのかもしれないですね。

 

――――それこそ先ほどの話でもあったとは思いますが、意外と役柄が抜けきれないというところは、多重人格じゃないですけど、ある意味そういう部分があるのかもしれないですね。

髙石:たまに、その現場で、 この人面白いなと思うと、その人になってしまうことがあって。自然と、その人に似た人を作り上げてしまうので、後から改めて見ると、違う人になっているなぁと感じることはあります。



また、最近では、ある女優さんの記事を読ませて頂いた時にも同じようなことがありました。読んだ後に自分が考える言葉や想像自体が違う人になってしまい、行動も変わってしまったりと、苦労することは多々あります。

 

■挿入歌に関して

――――今回は挿入歌を担当されていることも興味深かったのですが、映画のキャラクターに合わせて歌うことに苦労などはありましたか。

髙石:今回は、髙石あかり名義ではあるのですが、綺麗に歌わずに、ちさとちゃんの乱暴さや雑さを表現したいというのがありました。

なので、そういう部分をどうやって表現したらいいんだろうというのは、あったかもしれません。

ただ、ちさとちゃんが歌っているんだったら綺麗に歌わなくてもいいやと振り切れたことで、逆に私はやりやすかったのかもしれないですね。

ただ、ちさとちゃんがレコーディングスタジオでレコーディングをしているというのは、少し不思議な気持ちも抱きました。(笑)

 

■アクションに関して

――――アクションに関して苦労したことや、どういう姿勢で取り組んだのかについて、お聞きしたいです。

髙石:本格的なガンアクションが初めてだったので、アクション監督の園村健介さんに、立ち方や構え方、銃を打った後の振動や反動について細かく教えてもらいました。



2秒ぐらいの銃を奪うシーンでも四、五手動きがあったり、これまで知らなかった世界を知ることが出来たので、面白いなぁとは思いつつも、やはり難しい部分は多かったですね。

基礎も備わっていない状態だったので、本当に手探りでしたが、(スタントウーマンとしても活動する)伊澤さんに先生になってもらい、コーチのように教えてもらったり、一人でひたすら練習をしたりしていました。

 

■最後に

――――今後、『ベイビーわるきゅーれ』を見る方に、注目していただきたいポイントがあれば教えていただきたいです。

髙石:本作は、殺し屋映画というイメージが変わるような作品、『ベイビーわるきゅーれ』という新しい映画ジャンルが生まれているような気がします。

観終わった後に、誰もが自分と似ている部分や何かを見つけられる二人だと思っているので、「殺し屋=怖い」といった感情だけでなく、個性豊かな登場人物の物語にも注目してほしい作品です!

(大矢哲紀)

 


<作品情報>

『ベイビーわるきゅーれ』

2021年/日本/95分/PG12

監督・脚本:阪元裕吾

出演:髙石あかり、伊澤彩織、三元雅芸、秋谷百音、うえきやサトシ、福島雪菜、本宮泰風、水石亜飛夢、辻凪子、飛永翼、大水洋介、仁科貴

8月20日(金)より、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル梅田、神戸国際松竹にて。

8月27日(金)より、京都みなみ会館にて公開。

https://babywalkure.com/

(c)2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会