『光』失うことで見える”光”がある


河瀨直美監督最新作『光』。第70回カンヌ国際映画祭でエキュメニカル賞を受賞した作品だ。

ドリアン助川の原作を映画化した『あん』では、樹木希林演じるハンセン病患者の主人公を通して、今まで社会から隔離されてきた患者の皆さんに光を当てる作品となった。本作も、水崎綾女が演じるヒロイン、美佐子が携わっている映画の音声ガイドシナリオ作成のエピソードを交えながら、視覚障がいを抱えるカメラマンの葛藤と、苦しみの果てに感じる希望を描いている。

永瀬正敏演じる有名カメラマンの雅哉がいつも分身のように抱えていたカメラ。視力がどんどん衰え、同僚から「お前にはもう必要ないだろう」と心無い言葉を吐かれても、なんとか取り戻そうとしたそのカメラ。光を感じて撮る渾身のラストショットを捉えた後、雅哉はそのカメラを自ら手放す。

手放すことで雅哉が得たものは何なのか。きっとそれは、心の目で見る光。誰のためでもなく、自分のために心のシャッターを切る。私たちが感じている光だけでなく、体で感じる光、愛する人から感じる光、そんな光が見えたのではないか。と、もう一つの主人公である光やカメラを見ながら、ふと思った。

ちなみに、今『やすらぎの郷』でも往年の女優達と浮名を流し続けた人気男優役を演じている藤竜也が、本作でも音声ガイドをつける映画の監督兼主演役として、さすがの存在感を見せている。『海辺のリア』の仲代達也にも負けない、劇中劇のラストシーンにもご注目を。




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