「個人の発想が今の時代、大きな意味を持つ」IndieTokyoの映画DIY上映@Cinematic Skóla vol.1大寺眞輔氏特別講義後編

アメリカン・インディーズの新しい流れ「マンブルコア派」とは?グレタ・ガーウィヴ主演『ハンナだけど、生きていく!』を紐解く@Cinematic Skóla vol.1大寺眞輔氏特別講義前編に引き続き、6月3日(土)関西大学梅田キャンパスで開催されたCinematic Skóla ~シネマティック・スコーラ~ vol.1 “Independent”の大寺眞輔さんによる特別講義「字幕~配給、映画が上映されるまで」後編です。


 ■映画をインディペンデントに上映するには 

80年代後半から90年代にかけて海外の優れた映画を輸入・配給し、日本の映画文化を向上させてきたミニシアター文化は、映画上映のデジタル化、ネットやストリーミングサービスの流行、そしてバブル期のセゾングループ堤氏のように、文化にお金を出してくれるような支援者の不在など、様々な要因から、今大きな危機に瀕しています。 その中、大寺さんは「自分たちで観たい映画は自分たちで上映する」という映画のDIY上映活動を展開されています。  

<映画のDIY上映とは?> 

一人一台スマホの時代に突入した今、逆に一番面白いものがネットにはないことにだんだんユーザーが気づいてきたと指摘する大寺さん。映画館で映画を体験することの価値として、フェス的要素の重要性を説明されました。  

「何かに参加して巻き込まれるようなフェス的要素はネットでは体感できない。映画はフェスに向いており、そこで同じ趣味を持った他人とつながることができる(コミュニティ感の重要性)。爆音上映のヒットや、現在IndieTokyoが定期的に開催している新文芸坐シネマテークでは、立ち見も含めて300席のお客様に来ていただいているように、そこに行かなければ見られない映画、トークの二つを同時に叶える映画上映を求めて行く人は増えている。そういう点で、映画は最近盛り上がっているとも言えるし、個人の発想が今の時代、大きな意味を持つ」  

今までの映画館では痒いところに手が届かないとすれば、IndieTokyoをはじめとする個人が主体的にやっていることは十分通用しているとし、やり方を学ぶ(ワークショップなど)時間やお金があるなら、自分の発想をカタチにしようとするエネルギーを大事に、すぐに行動を開始した方がいいと力説されました。 


 <個人上映の様々な形~何をしたいのか>

 個人での映画上映を考える際、大寺さんによると大きく3段階に分けられるとのこと。

1.友達同士で楽しむプライベート上映。 

2.「Popcorn」を利用し、提供されている作品をカフェなどで上映して楽しむ。 

「Popcorn」とは、誰でも自分の映画館を作ることができるサービスで、日本映画をデジタルで地方に配信しています。カフェや映画館、公民館などの公の場所で上映するために配信するもので、映画会社にお金を払わなくてもいいので、映画上映の権利が安いのもメリット。作り手もダイレクトに自作を「Popcorn」に登録しているケースもあります。とても面白い映画配信プラットフォームである反面、リストにある作品しか上映できないという問題点もあります。


3.上映権購入や字幕作業、宣伝などすべて個人レベルで行う。 

いきなりハードルが上がるIndieTokyo方式。 ここからが話の本題となっていきますが、まず必要なものは ・社交力と個人のエネルギー ・映画への愛と情熱、興味 ・ノウハウを教えてくれる人。(映画業界のことを分かっている人など、個人に連絡して直接事前に聞くとトラブル回避できる) ・手伝ってくれる仲間。(映画館のレンタル料が膨大にかかることを考え、チラシ、字幕の翻訳、監督の連絡、サイト構築、予告編などできるところは自分で!)  

あと大寺さんはご自身の体験から、「映画界はとても古い業界なので、適切な配慮や経緯が必要。古い業界の中で新しいことをしているという意識を忘れないように(基本的には好まれる動きだが)。一方、古い世界だからこそ、資本主義のシステムに巻き込まれていない部分もあるので、古い世界の綾を知ることも大事」とコメント。そして一番大事なのは、映画を見せることを楽しむ、映画を上映するプレイをするという発想や、どういうおもしろさを加えていくか、体験をプラスしていくかという発想。「完璧ではなくてもいい。自分たちにできることをやっていけばいい」とこれから映画DIY上映を考えている人にエールを送りました。  


<上映までのプロセス>上映できる作品をみつける。

 まず一番最初に映画のDIY上映で取り組むべきことは、「上映できる作品を見つける」。 素材が海外にしかない、ハリウッドのもの(1回限りの上映はできない場合がほとんど)等、できない映画が実は圧倒的に多いとし、上映可能な場合でも、上映権を持つ権利元を探すのに一苦労する場合が多いのだとか。ヨーロッパの作品は映画祭枠としての交渉や、直接監督に熱意をアピールするのも有効。この場合、上手くいけば監督から映画会社に連絡してもらい、様々な融通を利かせてもらうことも可能になると、実際の例を挙げて説明してくださいました。 


<上映までのプロセス>資金調達から上映素材制作まで。

大寺さんが一番最初に取り組んだ頃よりここ数年で反応が大きく増してきたというクラウドファンディングは、今や資金調達をするに欠かせないものとなっています。その他にも、「助成金や大使館からのサポート(海外に自国の映画をアピールしたいと思っている国、北欧あたりが狙い目)、または個人が提供している助成金もあり、そこはノウハウの部分なので、詳しく調べることが大事」と大寺さん。 あとは、上映素材探し、日本語字幕制作、上映素材制作(元素材に日本語字幕を入れてディスクもしくは動画を作る)、上映会場探しとスケジュール、料金の設定などを行います。  


<上映までのプロセス>宣伝!宣伝!宣伝 

宣伝もTwitterやFacebookなどのSNSが中心だったという大寺さん。「今はTwitterで何とかなる」と、SNSからファンを広げていく方法でひたすら宣伝を行い、逆に試写はあまり効果がなかった(ファッション雑誌は取り上げても、映画雑誌は一つも掲載がなかった)のだとか。チラシやポスターの制作と設置もしながら、宣伝も新しいやり方を試行錯誤し、「タダでやれることは、やれる限りやる!」


 <上映までのプロセス>会場廻り、当日 

「ここまでくれば、もう99%終わったようなもの」と大寺さん。上映会場とのやりとり、当日はチケット販売、会場整理などの雑務などを行い、上映やイベント、打ち上げとツイートの拡散や上映後のケアを行います。 


■大寺さんが主宰するIndieTokyoの成り立ちと今後 

大学生時代からカイエ・デュ・シネマ・ジャポンで執筆、映画批評家で食べていけるぐらいの仕事になったという、最後の“いい時代”を過ごされた大寺さん。04年から横浜日仏学院(現アンスティチュ・フランセ横浜)でシネクラブ講師として映画上映後のトークを務めています。また、早稲田大学でも課外授業を主宰することで、多くの若い友人たちと知り合うことで、無理なくIndieTokyoを立ち上げることができたそうです。


 <IndieTokyoとは?> 

現在は、映画情報サイト(海外情報を日本語に訳して提供、日本で公開されない作品や話題、作家を取り上げ紹介)、映画上映集団(1回だけのイベント上映、通常上映両方をやっているが、双方をどう組み合わせるかが今後の課題)、新文芸坐シネマテークでの上映&トーク(今後、関西や九州など他地域でも広げたい)を行っています。 

新文芸坐シネマテーク

映画は誰もが見て、誰もが気軽に楽しめるものです。でも、ある種の映画は他の映画よりも高く評価されます。ある種の映画は決してヒットしたわけでもないのに、いつまでも人の心に残り、多くの人が愛し続ける。それは何故でしょう。 映画には、商売や売り上げ以上の価値があるからです。しかも、その価値はどうやら得体の知れないものであり、大の大人が本気になって夜を徹してでも語り明かすものであるのです。 その意味で、映画は常に言葉と共にありました。ある種の映画は、どのように語られ、どのように愛されてきたか。または嫌われてきたか。こうした歴史を少し覗いてみることで、私たちの映画を見る目はさらに深みを増していきます。 映画を見て、映画について語るための場所、映画について語られてきた言葉を聞くための場所。それは、いつの時代にも必要な場所だと私は思います。 文芸座シネマテークは、そうした映画と言葉のための場所です。 新文芸坐シネマテークVol.15 メンツェル/フラバル 人生のコメディ 5/12(金)つながれたヒバリ (1969・チェコスロヴァキア/90分/BD) 開場19:00 開映19:15(講義終了22:00頃) 5/19(金)剃髪式 (1980・チェコスロヴァキア/93分/BD) 開場19:00 開映19:15(講義終了22:00頃)新文芸坐シネマテーク vol14 街と劇場とのあいだに   ~マティアス・ピニェイロとシェイクスピアの女たち~ 3/17(金)フランスの王女(2014/67分/BD) 4/7(金)ビオラ(2012/63分/BD) ※上映後に映画批評家・大寺眞輔さんの講義開催 新文芸坐シネマテーク vol13 チェコ・ヌーヴェルヴァーグの真珠たち PartⅡ 12/2(金)スイート・スイート・ビレッジ(1985/98分/35mm) 12/9(金)火事だよ!カワイ子ちゃん(1967/71分/35mm) ※上映後に映画批評家・大寺眞輔さんの講義開催 新文芸坐シネマテーク vol12 チェコ・ヌーヴェルヴァーグの真珠たち 10/21(金)『厳重に監視された列車』(1966年/89分/35mm/日本語字幕付き) 11/4(金)『ブロンドの恋』(1965/75分/35mm/日本語字幕付き) ※上映後に映画批評家・大寺眞輔さんの講義開催 新文芸坐シネマテーク vol11

IndieTokyo

<IndieTokyoをはじめるきっかけは?> 

11年は、東日本大震災で「これでだめかと思うぐらいの危機感」を感じると同時に、デジタル上映への転換が日本の映画館に押し寄せ、「今までと同じ関わり方ではいけないと個人的に強く危機意識を持ち、個人でのDIY上映立ち上げを計画。かねてより日本で一度も上映されたことがんく理不尽に思っていたジョアン・ペドロ・ロドリゲスを特集上映しようと、知り合いの映画人ジャン=マルク・ラランヌから連絡場所を聞いて本人にコンタクトを取り、かなり安くで上映できた」とジョアン・ペドロ・ロドリゲス映画祭を開催。日本が大好きというジョアン・ペドロ・ロドリゲスはパートナーと来日、最終的に1ヶ月滞在し、「この時ロドリゲス氏が友達を紹介してくれたおかげで、国際的な映画人ネットワーク作りができ、権利元を探したり、料金交渉する時も力になってくれている」と今後に繋がったそうです。ただ、観客コミュニティの土台が貧弱という反省点が浮かび上がったことから、観客コミュニティの堅牢化を狙って立ち上げた組織がIndieTokyoとなっています。 


<IndieTokyo活動の手応えは?>

 個人レベルでやっていた上映活動を映画館で行い、たくさんのお客様がきて、ツイートして話題となり、ブルーレイの会社が監督作品をまとめたブルーレイボックスを出してくれる等、「個人の力でやっていることが広がり、業界が動く」とその手ごたえを語ってくださった大寺さん。一番重要なのは続けることとしながら、「いきなり敷居が高くて大変な活動だが、その見返りに色々なつながりが世界中にできる。自分一人いれば、日本でなくてもどこでもやれる。それができる人は、この日本、この場所でもぎりぎりまでがんばれるし、ここを何とかしようと思えるはず」と、今の時代だからこそ世界と繋がるような活動を行う大切さを最後に語ってくれました。  


ご自身の苦労や体験をたっぷり交えて、3時間弱に渡る上映後の熱い講義。そこには、「自分の後に、もっと個人でDIY上映をと動く人が続いてほしい。ノウハウを聞きに来てほしい。個人の力を結集しながら、映画の素晴らしさをもっと伝えていきたい」という大寺さんの映画愛が、脈々と流れているように思えました。また、次の大阪講義も勝手に(笑)期待しております。大寺さん、ありがとうございました!  


Cinemagical シネマジカル

映画を楽しむ。人生を楽しむ。