『百日告別』想い出と共に生きようと思えるまで

愛する人を突然失ったら、どうやって生きていけばいいのか。震災などの天災だけでなく、テロや事故、もちろん戦争だってそう。一緒に思い描いていた未来も一瞬に消え、そして残るのは、どうして私だけがこの世にいるのかというどうしようもない気持ちなのだろう。


大阪アジアン映画祭では2012年に特別招待部門作品として『星空』が上映され、ゲストとして来場したトム・リン監督(その後、審査員でも再び来場されているはず)。まだ若く、ファンタジックな世界を描ける台湾映画の新星として日本でも人気の高い監督だが、トム・リン監督の妻の死が大きなきっかけとなってこの作品が作られたことを知り、驚きもすれば、だからこそ、ここまで愛する人を亡くなった哀しみを抱えた人間をありのままに描けるのだろうと思った。


主人公は自動車事故に巻き込まれ、お互いにパートナーを失ったシンミン(カリーナ・ラム)と、ユーウェイ(シー・チンハン)。法要で毎回顔を合わせていた二人が、四十九日の法要で初めて言葉を交わす。普通の映画なら、お互いに大事な人を失った者同士、最終的には結ばれるという筋書きが見えてしまうところだが、この作品は趣きが異なる。シンミンは一緒に食堂を経営しようと誓っていた恋人と行くはずだった沖縄グルメ旅に一人ででかけ、計画通り沖縄の食堂を渡り歩き、夜は一人のベッドで枕を恋人代わりに抱きしめて眠る。ユーウェイは心の平静がなかなか保てない中、ピアノ教師だった妻の生徒に月謝を返金するため、生徒の家を訪ね歩く。本当は泣きたくても、一人で泣くかと言えばそうではない。真に悲しみを共有できる人の前でだけ、悲しみをぶちまけられるのだ。


抑制の効いた演出で、二人の心の動き、周りの家族の様子を真摯に映し出していく。本作が女優復帰作となったカリーナ・ラム。かつてはアイドルのような可憐さで香港映画に出演し、人気者だった彼女が、こんなに大人の女性となり、悲しみを抱えながら生きていくヒロインをじっくり体現できるとは。悲しみは簡単に癒えることはないし、波のように押し寄せてくることもあるだろう。でも、その気配をどこかで感じながら、または心の中で感じて生きようと思える日がきっとくる。トム・リン監督自身も、きっとこの作品を作ることで、妻との別れに向き合い、そして亡き妻に捧げているのだろう。愛する人との別れに向き合う、深深と胸に迫る作品だ。

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