『世界でいちばん美しい村』ブッダヒマラヤの麓で逞しく生きる村人たち

『世界でいちばん美しい村』というタイトルと、山に囲まれ、こぼれ落ちそうな満点の星空い包まれたフライヤーの写真にいきなり心を奪われる。2015年に起きたネパール大地震の震源地近くにあるラプラック村と、そこに生きる人たちの絆、祈りを見事な映像美で描くドキュメンタリー。


写真集「海人」「The Days After 東日本大震災の記憶」等を手掛け、日本を代表する写真家、石川梵さんの初監督作品は、石川さんがライフワークにしている「祈り」がそこここに感じられる。震災直後に現地に初めて入った石川さんが撮影した、村の家という家がぺしゃんこに潰された写真。それを見ているとどれほど大変な思いで今を過ごしているのだろうと案じてしまうが、さらに上の場所に避難したラプラック村の人たちは、テント生活でも逞しく暮している。原始的な生活ながら、家族が肩を寄せ合い、民間宗教ボン教を大事にし、儀式では女たちが「ガトゥの踊り」を一心不乱に舞う。村の人々の姿を丁寧に追い、民俗学的魅力も感じられる。


空撮で世界中を撮影している石川さんならではの映像で、俯瞰した目を持ちながら、ラプラック村の人々の絆、先祖代々守っていること、そして豊かな自然がたっぷりと堪能できる奥の深い作品。石川さんが惚れ込んだ魅力的な村の人たちに、ぜひ出会ってほしい。ちなみに石川さんは、元々映画監督を志すために写真家になったそうで、インタビューでは初監督作品となる本作に至るまでのお話や、現地での撮影秘話、上映までの動きなどを語っていただいた。前後編ですが、良ければご覧ください。