『ローマ法王になる日まで』アルゼンチン独裁政権時代の苦難を乗り越えて
ローマ法王といえば、私の中のイメージでは神様に近いような存在なのだが、現ローマ法王フランシスコ1世は「ロックスター法王」との異名を持ち、民衆から圧倒的な人気を誇っている。トランプ大統領の移民政策や環境政策も批判、正に自らが発言し、民衆のためにその使命を果たす”動”のイメージがある。
そんなフランシスコ1世の半生を描いた本作は、アルゼンチン独裁政権時代を含む近代史を映し出すかのよう。教会内部まで密告者がおり、反政府活動と見なされれば拉致、抹殺行為が当然のように行われる中、ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(後のフランシスコ1世)が出来ることには限りがあった。自らの無力さに打ちひしがれながらも、導かれるようにドイツで「結び目を解くマリア」に出会い、そしてまた母国、ブエノスアイレスの貧困地区で立ち退きを迫られた民衆たちに生きる希望を与えていく。ベルゴリオを演じるロドリゴ・デ・ラ・セルナ(『モーターサイクル・ダイアリーズ』)の明るさが、シビアな物語の中にも光を見せてくれる。法王ものなんて興味ない~なんて思わずぜひ観ていただきたい一本。救えなかった多くの命があるからこそ、フランシスコ1世は民衆に寄り添い、行動で示し続けるのだろう。
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