『心に吹く風』北海道・美瑛がこんなに美しく映し出された映画はない
雪を抱いた山々が遠くに見える中、赤い車がなだらかな丘陵を走り抜けていく。これだ!このなだらかさが美瑛の丘陵だ!と冒頭シーンで懐かしさがこみ上げた。
『冬のソナタ』をはじめとする四季シリーズのユン・ソクホ監督が初劇場用映画の舞台として選んだのが富良野、そして私も若い頃何度か一人旅をし、自転車を漕ぎながら町を巡った美瑛である。
風景写真家前田真三さんの写真にもあるセブンスターの木やマイルドスターの木。夕陽をバックに撮るため、夕陽が沈むころまでじっと待ち続けたこともあったなとか、前田真三さんの常設展示がある拓真館。そしてその裏にある有名な白樺並木も登場。しかも、自然がもう一つの主人公であるかのように、自然の風も捉えながら映し出していく。
大人の純愛物語を描きたいという思いと共に、この富良野の自然をいつかは自分の絵に収めたかったというユン・ソクホ監督。その自然への敬意がヒシヒシと感じとれる作品。もちろん、北海道好きの中でも美瑛を愛している人は、大スクリーンに映し出された、今も変わらない美瑛の自然の美しさに感動することだろう。
もちろん冬ソナ好きなら、ロマンチックなラブストーリーにも惹かれるはずだが、私の場合はこの美瑛に再会できた、しかもとびっきり美しい映像をスクリーンで!とこの時点で懐かしさで胸いっぱい。北海道を舞台に、海外の監督が様々な映画を撮っているが、ここまで自然を美しく撮った監督はいない。日本の監督を入れても、富良野、美瑛地区ではピカイチではないか。そして、そのこだわりこそが、ソウルながら自然の中で育ったというユン・ソクホ監督らしさを示しているのだと思う。40代のヒロインを起用したというところも、監督の中で一つの挑戦であったと思うし、16年ぶりの女優業復帰となった真田麻垂美さんも監督の挑戦に応え、最果ての地で生きる主婦をしっとりと演じていた。40代以上女子のヒロイン物語がどんどん増えて、大人女子の魅力をスクリーンでみせてほしい女優さん。今後も期待しています。
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