『ブレンダンとケルズの秘密』日本初上映から7年、待望の劇場公開へ

2013年の第20回をもって休止中の大阪ヨーロッパ映画祭。私が事務局広報スタッフとして現場にいた2010年の大阪ヨーロッパ映画祭で日本初上映され、今まで観たことのないような美しく、ケルト文化が詰まったアニメーションに、満席の観客の心が奪われた。今まで同映画祭のメイン上映でアニメーションがセレクトされることはまずなかった。観客層も成熟した大人が多かったのだが、この作品だけは子どもの観客もおり、会場もいつになく賑やか。映画祭前に開催したトークイベントやユーストリーム放送などで見どころをご紹介した甲斐があったかどうかは定かではないが、満席というのがとてもうれしかったし、来場したトム・ムーア監督によるトークセッションやサイン会が大いに盛り上がり、会場の熱気がすごかったことを記憶している。作品選定を行う実行委員長のパトリス・ボワトウ氏の選択眼は、やはり確かだった。


そんなトム・ムーア監督の作品が、昨年劇場公開されたのはうれしい驚きだった。『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』も、夢見心地になるぐらい美しいアニメーションで、『ブレンダンとケルズの秘密』の繊細なタッチがそこにも受け継がれ、海の生き物などが小さい子にも見やすい可愛らしさを備えていた。そして今年、日本初上映から7年の時を経てあの『ブレンダンとケルズの秘密』が劇場公開される。世界で最も美しい本として知られる9世紀にアイルランドの修道士によって作られた国宝「ケルトの書」の文様がふんだんに盛り込まれた、アイルランドの伝説に基づくオリジナルストーリー。伝統から新たな創作を試みる姿勢、その物語を表現する手描きスタイルにこだわったアニメーションと、長編デビュー作にしてこれからもブレないであろうトム・ムーアスタイルが確立されている。本当に豊かな気持ちになれる作品。ディズニーもピクサーもいいけれど、3Dや4Dもいいけれど、平面でも細やかな模様と豊かな色づかいで魅了するトム・ムーア監督作品は、感受性豊かな子どもにぜひ見せてあげたい。もちろん、大人もね。


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