『空と風と星の詩人 〜尹東柱の生涯〜』自由を夢見た詩人の短き青春に、思いを馳せて

時代が違っていれば、もっと長生きして、多くの作品を世に遺しているはずだった。

刑務所の窓から空に瞬く星を見ながら、死のその時まで創作を続けた韓国の国民的詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ)。1945年に亡くなった時、まだ27歳だった。あまりにも短き人生、それでも共に日本留学し、最後の最後まで心の支えだった従兄の宋夢奎(ソンモンギュ)と暮らした日々は、困難に立ち向かう力を与えてくれた。

生誕100年を迎える尹東柱の生涯をはじめて映画化したのは、『王の男』『ソウォン/祈り』のイ・ジュニク。モノクロの映像で、同じ家に生まれ育ち、性格は違えど、将来を嘱望される優秀な青年たちだった日本留学までの時代が、家族との交わりを含めて描かれる。親が希望した医科ではなく、喧嘩してでも文科に進学した尹東柱。留学までにも詩稿集を作っていたが、日本統治下の重苦しい空気は太平洋戦争に突入し、より一層シビアなものとなっていくが、尹東柱と宋夢奎にとっては占領下であっても、まだ自由を感じていられる時代だったのだ。

専門学校を卒業後、「平沼」と創氏改名させられ、日本へ留学する。尹東柱が立教大学在学時代のエピソードは、恩師・高松教授との出会いだけでなく、教授の亡き友人の娘、クミとの慎ましやかなロマンスも挿入され、疎外感を受けることの多い日々の中、ささやかな安らぎとなる。尹東柱を演じるカン・ハヌルの静かな情熱を秘めた端正な顔立ちが、どんどんやせ細っていくのは京都の同志社大学へ入学してからのことだった。こんな近くで学んでいた時代があったのか。映画の中で学生服を着た尹東柱が下宿で語らうシーンを見ながら、偉人を身近にも感じた。

同じく京都で独立運動をするために同志を集め、集会を開いていた宋夢奎らと行動を別にしながらも、反政府的な考えをした疑いで捉えられた尹東柱。当時で言う反逆罪は、先日成立したばかりの共謀罪とまさしく同じ。しかも、日々の詰問と共に、注射をされた尹東柱たちは、どんどん弱っていく。日本語を強制されるだけでなく、自由な考えも、行動も、そして未来も奪われてしまう。でも遺された詩の数々は、永遠に生き続けている。この映画の中でも、尹東柱の詩が何度も詠まれ、あらゆる自由は奪われても、詩だけは最後の砦だったのだと感じた。言葉や詩は残る。そして多くの人を勇気づけてくれる。イ・ジュニク監督が描いた尹東柱と宋夢奎の青春は、いつの時代も変わらない輝きと、そして戦中だからこその悲劇が交互に挟まれ、示唆深かった。そして、尹東柱という詩人を知ることができて良かった。


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