『ろくでなし』大西信満×渋川清彦がみせる、男のダメさとひたむきさ


いつかは見たいと思っていた大西信満×渋川清彦の競演。ポスター見るだけで撃沈しそうな男の渋さが滲み出る。今まで共演することはあれど、同じシーンで演技をすることがなかったという40代渋メンの二人がW主演を果たす奥田庸介監督の『ろくでなし』。


バディームービーっぽいポスターだが、実はそうでもないところが面白い。裏社会にも通じているクラブのオーナー、遠山(大和田獏)の仕事を手伝うひろし(渋川清彦)と、流れ着いた渋谷の街でクラブで働く優子(遠藤祐美)に一目惚れし、クラブの用心棒になる一真(大西信満)。遠山が優子の弱みを握ったことから物語が動いていく。平成の高倉健かと思うような不器用だけど一途な一真と親の借金返済のため必死て働く優子のラブストーリーに加え、認知症の祖母の面倒を一人でみている優子の妹で高校生の幸子(上原実矩)とひろしの親子にも見えるラブストーリーも絡んでいく。それぞれがクライマックスを迎える後半は、大西信満、渋川清彦それぞれの持ち味を生かした口説き方で、観ている側はやられてしまう。もちろん、その後にノワール調の銃撃戦、そして思わぬラストが待ち受けるのだけど。


バイオレンスよりはラブストーリー、しかもそんなにエロくも、グロくもない、ちょうど良い塩梅。『ろくでなし』というタイトルとは裏腹にその描写には控えめな部分がある一方、それぞれのキャラクターが持つ影はしっかり深堀りされている。孤独、未来が見えない不安、行き場のなさ。それが重すぎないのは、大和田獏の怪演によるところも大きい。楽しんで演じているんだろうな。本当に不気味。そして、『ケンとカズ』で新人賞を受賞以来、今年は多くの映画に出演している毎熊克哉も、ひろしの舎弟役で出演。ちょっとかわいげもあり、そして裏社会に身を置いている割にはワルになりきれない、これも絶妙の塩梅で要チェック。そして、ろくでなしたちのダメさとひたむきさに、やられちゃうんだな。