『ローサは密告された』麻薬、密告、警察の腐敗が日常のスラム街で、家族を守る母の闘い

映画祭では最近多く紹介されているにもかかわらず、なかなか劇場公開されないフィリピン映画。ようやくブリランテ・メンドーサ監督作が劇場公開されるのはうれしい限りだ。私が初めてメンドーサ監督作品を観たのは、2015年東京国際映画祭で「CROSSCUT ASIA #02 熱風!フィリピン部門より、ブリランテ・メンドーサ監督特集」が開催された時の『フォスター・チャイルド』(07)。大阪アジアン映画祭で何度もインタビューをさせていただいた女優、ユージン・ドミンゴさん助演作で、舞台挨拶にも登場するということ、スラムでの子育て事情(里子制度なども)を題材にしていることもあり観たのだが、ドキュメンタリーのようにスラムの生活に入り込み、そこに住む人々や子供達の表情を映し出していることに衝撃を覚えた。


どんどんフィリピン映画が洗練されていく中で、揺るがない独自の視点とスタイルを持ち、スラム街の問題に肉薄してきたメンドーサ監督が麻薬、警察の腐敗までも赤裸々に告発したのが本作だ。タバコと同じぐらいカジュアルに麻薬が売られる様子はただただ驚くばかり。それよりも何よりも、冒頭から畳みかけるように用事をこなし、子どもたちや働かない夫に指示を飛ばし、借金の取り立てまでする凄腕の雑貨屋店主ローサの奮闘ぶりが際立つ。


その日その日をなんとかしのぎなら、近所の人たちと賑やかに会話を交わし、子育てもする日々は忙しいながらも充実していたはず。そんな日常が密告による警察のがさ入れにより、大きく揺らいでいく。保釈のために多額の現金を警察が要求する異常さも赤裸々に描かれ、ローサは子供達に工面を頼むのがやっと。皆が生きるのに必死で、モラルよりも金、汚い金でも金は金と、子供達も三人三様の工面に奔走するのだ。ちなみに長男役のイケメンは、『SHIFT~恋よりも強いミカタ』で主人公が恋したゲイの同僚役のフェリックス・ロコ。警察の腐敗を炙り出しながらも、ズシリと響く家族物語でもある。ローサの流す涙が、家族を守るために必死な母の心情を見事に表現した。 第59回カンヌ国際映画祭主演女優賞受賞も納得のローサ役ジャクリン・ホセの演技は必見。


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