『デヴィッド・リンチ:アートライフ』自らの語りで紐解く、映画監督デヴィッド・リンチができるまで

デヴィッド・リンチの頭の中という謳い文句なので、今までの名作を振り返って語る裏話的なものがあるのかと思えば、ようやくメジャーで仕事を始めるところで終わる。むしろ、ホドロフスキー監督が自伝的映画『エンドレス・ポエトリー』で自らの若い頃を描いているが、それのドキュメンタリー版のようだ。デヴィッド・リンチ監督の子どもの頃から、映画監督となるまでを自らの語りで紐解いていく。

アート畑のリンチ監督が、自分のアトリエで手を動かしながら、何枚もの写真で振り返る半生。そこには、失敗も数多く、その失敗から色々なものが生まれてくること。学校に馴染めず、自分の部屋だけが全世界の頃があったことなど、苦くも、それが現在の自分を形作っていると思い返せるようになったリンチ監督の姿があった。自らを奥深く顧みる映画は、観終わって、自分自身にも照らし合わせたくなるし、ほんの少し親近感を覚えることもできた。失敗は誰でもする。要はそれをどう展開させていくか。若い頃にはなかなか切り替えることができないが、失敗はある意味チャンスと思うべし。恐れず、進め。そんなメッセージをもらった気がした。
(元町映画館にて4月6日まで上映中)