インドネシアの#MeToo映画『ライク&シェア』がグランプリを獲得!第18回大阪アジアン映画祭受賞結果発表


 第18回大阪アジアン映画祭が10日間の日程を終え、最終日となる3月19日のクロージング上映前に、授賞式とクロージングセレモニーが開催された。

 見事、コンペティション部門のグランプリ(最優秀作品賞)に輝いたのは、インドネシア映画『ライク&シェア』(ギナ・S・ヌール監督)。インドネシア映画初の同映画祭グランプリ獲得という快挙を達成した。

 コロナ下で若年層のリベンジポルノ被害が激増したこと、女性の性被害が恋人や家族など身近な人によるものが圧倒的に多いことなどを背景に本作を製作したというギナ・S・ヌール監督。ポップなビジュアルを用いながらティーンエイジャーの性被害だけでなく、彼女たちの性的欲望や好奇心、多年代の女性たちの葛藤も描いている。困難を乗り越えるためにそばにいてくれるかけがえのない存在に改めて気づくシスターフッド映画としても秀逸だ。「それまで関心がなかったことに関心を持ったり、自身が誰かを助けるきっかけになったり、被害を受けた人々が声をあげやすくなるようになればとの想いを込めた」(インドネシアシンポジウム、ギナ・S・ヌール監督の発言より)という、女性が生きづらい社会を変えていく強い意志を表明し、#MeToo映画史に新たな歴史を刻む一作だ。



 授賞式では「グランプリを受賞し大変驚いています。全ての観客、審査委員、そして関係者の皆さまに感謝いたします。この映画はトラウマや性暴力を扱っているので、話題としても取り扱いがたく、この問題を扱った映画を製作することも非常に難しい中、取り組んできました。結果としてこのような賞をいただき、光栄に思っています。ありがとうございました」と喜びを表現したギナ・S・ヌール監督。審査員からのコメントを合わせてご紹介したい。


《授賞理由》

私たち審査委員全員が、この映画の突きつける明確かつ力強いメッセージに心を打たれました。それは若い女性たちの性への好奇心や欲望を肯定しながら性暴力に対しはっきりとNoを唱える、というメッセージです。

また、映画の持つスタイルも独創的です。前半、観客を魅了した甘くてポップなムーブは物語が進むにつれダークなものになり、私たちを戦慄させます。

強烈なスローガンを見事な演出で表現した本作は、今こそ見られるべき映画です。



インディ・フォーラム部門の日本映画を対象にしたJAPAN CUTS Awardでは、石橋夕帆監督の『朝がくるとむなしくなる』が受賞を果たした。唐田えりかが扮する、前職をハラスメントで退職し、今はコンビニエンスストアで働く主人公の日常を丁寧に描写。芋生悠が扮する中学時代の同級生と偶然再開したことから、少しずつ閉ざしていた心の扉が開いていく姿に心を寄せたくなる。現代の若者の生きづらさに優しく寄り添う秀作だ(石橋夕帆監督インタビューは近日公開予定)。



また台湾のフー・ティエンユー監督が自身の母をモデルに、実家の理髪店で撮影した『本日公休』は、観客賞に輝くだけでなく、主演のルー・シャオフェンさんが薬師真珠賞を受賞し、W受賞となった。ワン・トン監督の『海を見つめる日』など80年代を中心に活躍した名優、ルー・シャオフェンさんにとっても、20年ぶりとなるスクリーン復帰作での受賞。感激を噛み締めておられる姿に、客席からも大きな拍手が送られた。理髪師一筋の人生と常連客との交流を、主人公の子どもたちの仕事の葛藤も重ねて描く、ウェルメイドなヒューマンドラマ。こちらも劇場公開を望みたい一作だ。

台湾映画からは、クー・チェンドン監督(『黒の教育』)が来るべき才能賞、パン・カーイン監督の『できちゃった?!』が芳泉短編賞スペシャル・メンションを受賞し、台湾映画の充実ぶりと、その人気を改めて示す結果となっている。



今年初となった会期中盤のスペシャル・オープニング上映で会場を爆笑の渦に巻き込んだホー・チェクティン監督(本年度のコンペティション部門審査委員)の香港映画『四十四にして死屍死す』は、ABCテレビ賞を受賞。世界初上映での受賞となった。マンションを舞台に繰り広げられる一夜のブラックコメディ。来年のABCテレビでのオンエア(関西地方のみ)を楽しみにしたい。



アメリカより動画メッセージで喜びを表現したのは、芳泉短編賞を受賞した『燕は南に飛ぶ』のリン・モーチ監督。新会場となった大阪中之島美術館で短編プログロムとして上映された。動画では、自身の母の幼少時の体験をもとに、ほぼ全てをひとりで手がけたストップモーションアニメ。何年もかけて本作に取り組んだことや、文化革命時代末期の物語を今、語ることが必要な時代になっていることについて想いを語った。



改めて、受賞結果は以下のとおり。

★グランプリ(最優秀作品賞)

『ライク&シェア』(Like & Share)|インドネシア|監督:ギナ・S・ヌール(Gina S. NOER)

★来るべき才能賞

クー・チェンドン(Kai KO/柯震東)|台湾|黒の教育(Bad Education/黒的教育)監督

★ABCテレビ賞

『四十四にして死屍死す』(Over My Dead Body/死屍死時四十四)|香港|監督:ホー・チェクティン(HO Cheuk Tin/何爵天)

★薬師真珠賞

ルー・シャオフェン(LU Hsiao-fen/陸小芬)|台湾|『本日公休』(Day Off)主演俳優

★JAPAN CUTS Award

『朝がくるとむなしくなる』(When Morning Comes, I Feel Empty)|日本|監督:石橋夕帆(ISHIBASHI Yuho)

★芳泉短編賞

『燕は南に飛ぶ』(Swallow Flying to the South/燕南飛)|アメリカ、カナダ、中国|監督:リン・モーチ(LIN Mochi/林墨池)

★芳泉短編賞スペシャル・メンション

『できちゃった?!』(Daddy-To-Be /有了?!)|台湾|監督:パン・カーイン(PAN Ke-yin/潘客印)

★観客賞

『本日公休』(Day Off/本日公休)|台湾|監督:フー・ティエンユー(FU Tien-yu/傅天余)