岡本喜八、大島渚、森崎東、大森一樹・・・時代を挑発し続けた「ATG大全集」シネ・ヌーヴォで9/14まで開催
色々な監督さんにインタビューさせていただく中で、度々登場する「ATG」という言葉。今活躍している日本の監督たちも、このATG映画の数々に多大な影響を受けてきてたことをヒシヒシと感じながら、いつかしっかりと見たいと思っていた。もう一つ、今携わっている「おおさかシネマフェスティバル」がかつて「おおさか映画祭」と呼ばれていた頃は、まさにこのATG映画全盛期だった。当時の運営スタッフの方々は、表彰式に出席された主演俳優や監督、脚本家らと交流を深めていたという。
ATG(日本アート・シアター・ギルド)は、紹介される機会の少ない海外芸術映画を上映するため、60年代始めに誕生。60年代末より日本の独立プロと提携し作品を製作するようになった。80年代にかけて既存の枠内におさまらない意欲的な作り手、他ジャンルからの参入などにより、新たな表現、そして数々の名作を産み出したことは、そのラインナップを見ても明らかだ。
毎年恒例のシネ・ヌーヴォ(大阪・九条)夏の日本映画大回顧展では、今や見たくても見る機会がほとんどなくなってしまったATG映画の系譜を特集する。7/21よりスタートした特集上映では、伝説のロックンロール・グループ、キャロルのドキュメンタリー映画『キャロル』や、吉田喜重×岡田茉莉子の大正時代と現代を交差して描いた長編意欲作『エロス+虐殺』他、大入り満員の盛況ぶりを見せている。
これから上映予定の作品をいくつかご紹介すると・・・
『風の歌を聴け』(81)
村上春樹と同じ中学出身の大森一樹監督が村上の初期作を映画化。主演は小林薫と真行寺君代。神戸、芦屋オールロケで綴る帰省した大学生の物語。他にも京都府立医大出身の大森一樹監督が自らの体験をもとに医大生最終年度をユーモアたっぷりに描いた代表作『ヒポクラテスたち』を上映。
7/28(土)12:40『ヒポクラテスたち』上映後 には大森一樹監督トークショーを開催!
『青春の殺人者』(76)
中上健次「蛇淫」を原作に、絶望的な青春像を描いた長谷川和彦監督デビュー作。主演の水谷豊、原田美枝子は、第2回おおさか映画祭で主演男優賞、主演女優賞を受賞。キネマ旬報でも1位に輝いた。同年を代表する必見作。
『新宿泥棒日記』(69)
初のATGとの提携作品『絞死刑』(68)をはじめ、『儀式』(71)、『東京戦争戦後秘話』(70)と大島渚監督作品が多数上映される。『新宿泥棒日記』もその中の一本で、60年代末の不穏な空気に満ちた新宿を舞台にした野心作。横尾忠則主演作。
『肉弾』(68)
『日本の一番長い日』(67)と対をなす、下流兵士にとっての戦争を描いた岡本喜八監督初の自主制作映画。寺田農、大谷直子主演、青春を戦争に奪われた若者たちのやるせなさが滲む。今回の特集上映では、8月11日、そして8月15日から4日連続で上映される。
『逆噴射家族』(84)
現在も精力的に新作を発表している石井岳龍(聰亙)監督。80年の『狂い咲きサンダーロード』でインディーズ映画界に華々しく登場後、この『逆噴射家族』で世界にもその名を轟かせた痛快作。異色の家族物語だ。
『黒木太郎の愛と冒険』(77)
森崎東監督作も見逃せない。松竹からフリーになってから撮ったこの作品は、田中邦衛を主演に迎え、映画監督を夢見る男を取り巻く群像劇。他にも森崎流反原発映画『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』(85)も上映する。
『家族ゲーム』(83)
森田芳光監督の代表作。松田優作の新たな一面を引き出したシュールな家族ドラマも必見!
■上映日程:2018年7月21日(土)〜9月14日(金)
■場所:シネ・ヌーヴォ
■主催:日本映画大回顧展上映実行委員会、シネ・ヌーヴォ
■協力:東宝、大島渚プロダクション、キノシタ映画、現代映画社、若松プロ、株式会社AID JAPAN、綜映社、Teamゴンドラ、大阪自由大学
■助成:日本芸術文化振興会
■料金:一般1400円、学生・シニア1100円、会員1000円、高校生以下800円
■前売1回券1200円、前売5回券5000円、会員5回券4500円、当日5回券6000円、フリーパス券22000円 ■イベント:上映後トークショー
①7/21(土)春岡勇二さん(映画評論家)、ミルクマン斉藤さん(映画評論家)15:10『さらば夏の光』上映後 <終了>
②7/28(土)大森一樹監督 12:40『ヒポクラテスたち』上映後
③8/4(土)後藤幸一監督 14:20『正午なり』上映後
④8/5(日)金秀吉監督 14:05『君は裸足の神を見たか』上映後
⑤8/25(土)伊藤智生監督 16:10『黒木太郎の愛と冒険』上映後
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