FOGHORNとGojo Short Animation Galleryの野望 ANIME-ASEANツアー in 京都 vol.3

 

8月22日(水)19時よりLumen galleryにて開催された「ANIME-ASEANツアー in 京都Lumen gallery featuring FOGHORN」。最終回となるvol.3ではFOGHORN主催の谷川千央さんと所属アーティストのひらのりょうさん、奥下和彦さんをゲストに迎え、「FOGHORNとGojo Short Animation Galleryの野望」と題してトーク&上映が行われた(司会:土居伸彰さん)。その模様をご紹介したい。 




 ■アニメーション作家にブランディングという概念を取り入れる

 ―――FOGHORNは2011年にスタートしてから7年目になりますが、奥下さんとひらのさんは、実写映画で使われるアニメーションやイラスト、企業CMやMVも手がけ、個性を保ったまま様々なところへの露出に成功しています。二人を「売る」に当たっての戦略は? 

谷川:最初から、二人に対するブランディングは正反対と決めていました。そもそもアニメーション作家に対してブランディングという概念が足りないな、とも思っていました。作品の宣伝はするけれど、アニメーション作家自身を魅力的に見せる宣伝はしないですよね。逆に、音楽業界は全てがブランディングです。曲の宣伝をした後に、本人がどんなものが好きか、どんな服を着て、どんなMCをして、と全てブランディングして見せていくのです。だから、ここでは具体的な説明はしませんが、それぞれに合った形で、露出の仕方にはものすごくこだわりましたし、媒体やクライアントにはたくさん迷惑をかけました。例えば彼らが出たほとんどすべての露出に、名前の後に「FOGHORN」と表記されています。先方には迷惑千万なリクエストなのですが、僕は絶対にそこは譲らなかった。まずはFOGHORNというチーム名、それに付随するコンセプトやイメージが浸透しないと話のとっかかりにならないわけで、クレジットの仕方には7年間こだわって来ました。 


奥下君は、在学中から「報道ステーション」のオープニングに起用されてグッドデザイン賞を受賞しており、まさに短編業界出身の、経済的な意味でのエリートコースであり、こんな成功例はまずないんです。しかし彼自身から当時のギャラを聞くと僕がイメージするより著しく低かった。ですので、2〜3年以内に彼の年収を10倍程度にするのが奥下君に対する願いであり、ブランディングの目的でした。短編出身の作家も映画祭に参加するだけでなく経済的にも食えるんだ、というロールモデルをまずは作りたかった。 


一方でひらの君は、サブカルチャーのコミュニティの楽しさや魅力を体現出来る人。作家性で勝負ができる人なので、逆に私が芸能界で30年間やってきたノウハウを無理して入れるのではなく、彼の意思と趣味性によって日々過ごしている、とお客さんに感じて欲しい。ただ、全て本人任せだと友人からのオファーばかりになり、どうしてもギャラが上がりにくいので、そこだけ少しアイディアを出したり、手助けしたりしています。


 ―――7年間、FOGHORNレーベルで活動してどう感じながら制作を行なっていますか? 

ひらの:多摩美の情報デザイン学科(今はメディア芸術学科)出身で、僕がいた時は滑り止めの学科だったので、決まったことをやるのではなく、生徒の好きなことを追求させてくれました。ほとんど同じ道を行く人がいなかったので、自分自身で頑張って考えるしかなくて、周りの友達は映像や漫画家という別のジャンルにいき、交流が始まった感じがします。色々なことに興味があり、色々なイベントや展示に足繁く通った結果、コミュニティーが出来てきた気がします。  


谷川:確かにひらの君は、自分でコミュニティーを作ってくるのが強み。放し飼い(笑)にできるというか、スケジュール管理とちょっとしたお金の交渉に留めた方が、彼の個性が引き立って同業者への見え方も良いんですよね。ひらの君はアニメーション作家の中でも考え方や振る舞いがちょっと浮いていたし、僕自身も短編アニメーションをマネジメントしようという人なんていなかったので、同じように業界で浮いていた訳ですよ。だから、付かず離れずでやっている分には、どちらもいい感じに浮いていて、お互いを邪魔することなく足りない部分だけを補い合うことが出来て、結果今まで続いたんだと思います。  


奥下:谷川さんがいてくれたことで、孤独に集中して物を作れる環境を城壁のようにガードして作ってもらえる。僕の事を安く使ったりイメージを軽く利用したりする人もたくさんいたのだけれど、それを辞めさせて、金額もスケジュールも内容も僕の方にメリットがあるように交渉して戦ってくれたのが谷川さんです。現在進行形で助かっています。 

 




■京都五条に常設の短編アニメーションギャラリー、Gojo Short Animation Galleryをオープン

―――新しい動きとしてGojo Short Animation Galleryをオープンされましたね。 

谷川:ひらの君の漫画『ファンタスティックワールド』の出版記念イベントを行ったホホホ座さんのご紹介で、五条モールという素晴らしい場所に出会いました。5月に初の絵本を出版した絵本作家の若井麻奈美さん(元FOGHORN所属)のファンだという京都在住の方を現地オーナーに迎え、共同経営で4月28日にGojo Short Animation Galleryをオープンさせました。僕は作品のキュレーションを担当しています。今は2クール目に入り、ロンドン中の美大を見て面白いなと思った卒業制作を6本上映しています(投げ銭制)。お時間あれば、是非遊びにきてください。 東京でもレンタルホールとしてやっている場所はありますが、僕がやりたかったのは、常設で普段お客様があまり見る機会のない短編アニメーションを見ることができる場所作り。しかも昔、置屋だった古い建物を改築して使っているユニークな場所です。色々なギャラリーやショップの集合体で、その場全体の在り方も関わっている人たちも皆個性的ですし、近所の雰囲気もとてもいい。そういう場所で短編アニメーションを発表できるのはとても幸せなことです。 

(この後、現在Gojo Short Animation Galleryで上映中の奥下和彦さん作「都をどり」を特別に音楽付きで上映)


※会場で上映されたひらのりょう作「ホリディ」(Trailer)


■短編アニメーション制作は、作家性を保つために必要

―――短編アニメーションを作る理由は? 

ひらの:僕が短編アニメーションに影響を受けて作り始めたということもありますし、最初に自分が出したもの(創作物)だから、作家性の保持としてやりたいなと思っています。 漫画はアニメーションと同じで作家のテーマはありますが、もう少し大衆に届くように作っているので、もう一つ別のレイヤーで作家性を保つ意味あいで短編アニメーションを作っていきたいです。 


―――マネジメント側の立場で、あまりお金を生み出さない短編アニメーション制作をすることは矛盾をはらんでいるように見えますが。 

谷川:その「無駄な時間」がないと、人からアーティスティックなリスペクトはもらえない。その作家性に対する憧れが、のちに商業的魅力に変換されるわけです。クリエイティブな市場で勝負する以上、作家性がないと結局お金は生まれないんですよね。だから必要なことだし、作ってもらわなければダメだと思います。



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