『あみこ』嘘ばかりの世の中にカツ!全力女子高生あみこに釘付け


今大人気のチコちゃん(NHK「チコちゃんに叱られる!」)
が高校生になったような、前髪パッツンのおかっぱ頭で、じっと何かを見据えているヒロインあみこ。窓から運動部の部活を眺めているちょっと内気女子でもあるが、内気女子だからこそ、一対一で話をすると、どんどん深い会話に展開していく。


放課後、ふらっと教室に入ってきたサッカー部の人気者、アオミくん。どこか世の中を達観し、さらっとあみこに話しかけてくれた彼と、会話が止まらず、街の夜景を見ながら語らううちに、家に帰ったらすっかり好きになっていた。そんな恋する女子高生、あみこの日常、そして突然学校に来なくなったオウミくんを探しての旅が綴られる。

こう書くと、どこにでもありそうな青春ものに見える。ところがどっこい、このあみこ、普通の青春映画でヒロインが話すようなセリフは一切喋らない。「女には365日に一回、どうでもいいと思う日がある。」とか、本作で長編デビューした撮影当時まだ10代だったという山中瑶子監督が書くセリフは、オリジナリティに溢れている。オリジナリティと言えば、あみこの日常の中にも映画的なビジュアルがいっぱい。彼女のモヤっとした心情をお腹の上に真っ赤な編み糸をたっぷり乗せて、まるでホラー映画の内蔵のように見せたり、アオミくんの噂を聞いてイライラしながら、ひたすら風呂場で半分に切ったレモンを何個も何個もかじったり、ゾクリとさせるシークエンスをたっぷりと盛り込んでいる。


学校に来なくなったアオミくんを探して上京するあみこの真っ直ぐさは、SNS世代の若者たちのネットの繋がりを切ったら終わってしまうような関係とは一線を画す。本当に思うことは、リアルに会って伝えたい。たとえそれがオウミくんの恋人の家であっても。

写真:あみこと似ている!山中瑶子監督


現代の若者から見れば「重い」とも見られそうなあみこの行動は、同世代だけではなくかつては好きな人を前にしても素直になれなかった苦い青春を抱えた世代にもズシリと響くのではないか。何より、電話ボックス、タロットカード、セーラー服と妙に昭和的アイテムをあえて取り込み(タロットカードは山中監督が影響を受けたというアレハンドロ・ホドロフスキー監督の影響かもしれないが・・・)、現代の物語だけど、どこか時代不詳な雰囲気を漂わせ、自身の分身のようなあみこに心血を注いでいる山中監督の心意気に惚れた。ハタチになり、少し大人になったあみこも見てみたい。そんな気分にさせられるアツい、アツい、青春映画だ。

12月8日(土)より元町映画館にて公開!