『ノーザン・ソウル』誰も知らないレコードを探せ!70年代イギリス、若者が熱狂した音楽ムーヴメントに迫る青春映画


かつて自分がうねりの最中に身を置き、時代の大きなムーヴメントの中で友情、恋、そして挫折を体験した経験から、青春音楽映画を作る映像作家は結構多い。今年1月に公開された『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』は、名俳優のマイケル・ケインが、自ら体験したロンドンの60年代を振り返り、そこで花開いたカルチャーや、ロンドンからアメリカに音楽が広がる様子も映し出した。一方、70年代前半のイングランド北部の町、バーンズワースを舞台にした『ノーザン・ソウル』は、そんなロンドンで盛り上がっていたモッズ・ムーヴメントに陰りが見えた時代が舞台だ。労働者の街で、若者たちが熱中する人気のスポットと言えば、DJが探し出したレアなソウルミュージックがかかるクラブだった。踊れることが重要でもあるDJたちの個性が光る音楽セレクト、それがノーザン・ソウルだという。どんな音楽でも自宅でWebから簡単に探せる今となっては、当時のDJたちが必死でレコード店でとっておきの一枚を探す姿が実に新鮮に映る。レコード時代を知っている者としては懐かしさがいっぱい、そして音楽に対する熱や、若者たちの熱狂ぶりがガンガン伝わる一作だ。


主人公の高校生、ジョン(エリオット・ジェームズ・ラングリッジ)は一人で詩を書くような物静かな青年。バスで会う黒人の看護師に恋心を抱く以外は、全く冴えない毎日だったが、ある日偶然訪れたユースクラブでソウルミュージックで踊りまくる青年マット(ジョシュ・ホワイトハウス)に出会う。マットに感化されたジョンは、当時若者たちのヒーローだったブルース・リー。若者たちがソウルミュージックに合わせて踊っていた踊りも、ブルース・リーのアクションをアレンジしたものだというのには驚いた。劇中でもジョンが度々ブルース・リーのアクションを練習するシーンが登場する。今ほどではないとはいえ、映画によって世界が少し近くなった証拠だろう。



親にも理解されないジョンはついに学校を辞め、マットと一緒にとっておきのレコードを探しにアメリカに行くことを決める。高校を中退し、働き始める二人の音楽にかける情熱と、彼らが出会う先輩分のような男。そして、忍び寄るドラッグの手。ノーザン・ソウルの世界を教えてくれたものの破滅に向かっていくマットと、今やクラブで自分がセレクトしたシングルをかけ、客たちをノリノリに躍らせることができるようになったジョンの行方は、かつて二人で夢見たものではなかった。それでも、誰も知らない曲を見つけ、カバーアップ(曲名をふせる)として自らのレパートリーにする時の喜びは、何ものにも変えがたい。「Stick By Me Baby」やフランキー・ヴァリ、ビリー・バトラーなど、踊りたくなるようなノーザン・ソウルの音楽たちも勢揃い。労働者の街から生まれた音楽ムーヴメントは、若者たちの鬱屈した気持ちを発散させ、また明日もがんばろうと思える生活の糧になっている気がした。


2019年2月9日(土)より新宿シネマカリテ、元町映画館、2月16日(土)よりシネマート心斎橋他順次公開

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