『21世紀の女の子』女の子たちが蒔いた”種”は、未来に繋がる


山戸結希監督(『溺れるナイフ』)が企画・プロデュースした女性監督による短編オムニバス。井樫彩、枝優花、加藤綾佳、坂本ユカリ、首藤凜、竹内里紗、玉川桜、夏都愛未、東佳苗、ふくだももこ、松本花奈、安川有果、山中瑶子、金子由里奈(公募枠)と総勢15名の作品を2時間で堪能できる、まさに事件のような作品だ。

女性監督によるオムニバスといえば、思い出されるのは2008年から2013年まで5回に渡って行われた女性監督による短編映画祭「桃まつり」。「真夜中の宴」「kiss!」「うそ」など、毎年決められたテーマのもと、10人前後の女性監督たちが30分ほどの短編を撮り、複数日に渡って上映&トークを繰り広げた。当時、こんなに女性監督がいるのかと驚く一方、メジャー作品を撮るようになる監督の少なさに日本映画界の現状を見る思いだった。


桃まつりの衝撃から10年、今回も20〜30代と若手女性監督が勢揃い。しかも既に劇場公開用の長編を発表、または準備中の人も多数だ。そして、参加俳優も橋本愛、朝倉あき、石橋静河、伊藤沙莉、唐田えりか、北浦愛、木下あかり、倉島颯良、黒川芽以、瀧内公美、日南響子、堀春菜、松井玲奈、三浦透子、モトーラ世理奈、山田杏奈と若手ながら既にメジャーで大活躍している人、今まさにブレイク中の人など、期待度の高い魅力的な人材が揃った。そして全国の劇場で上映されていく。観客からしても、女性監督の現在、そして未来を体感するまたとない機会なのだ。



このオムニバス映画のテーマは

「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」

女同士でもなかなか口にしにくいテーマをあえて選び、それぞれの監督たちが自由に表現している。8分という短い時間の中で、どんな関係性を、どんな方法で切り取っているのか。そもそも、女の子って何?『21世紀の女の子』が映し出す女の子たちの本音、生き様は、女性にはもちろんだが、ぜひ色々な人に観ていただきたい。そして本作の中で輝く俳優たちを目撃してほしい。


15本の中から、いくつか印象的だった作品をご紹介したい。




『あみこ』でセンセーショナルなデビューを果たした山中瑶子監督の『回転てん子とどりーむ母ちゃん』 (出演:北浦 愛、南 果歩、神尾てん子、杉野希妃他)。ベタベタの香港映画のようなオープニングは、エロ・グロ満載のコメディーが大得意の香港映画監督、パン・ホーチョンを凌駕する勢いだ。女の子といっても、幼児から熟女まで幅広いキャスティング。円卓を回しながら、いつの間にか熱く語られるのはティッシュ問題。そこから、唯一の真実へと飛躍する。円卓で”女の子”たちと会話する、あみこと同じ前髪ぱっつん、おかっぱ頭の女の子。彼女は山中瑶子監督の分身なのかもしれない。本音も真理も混ぜ込み、オリジナリティがひときわ輝く短編だ。





『3泊4日、5時の鐘』で女優デビューした夏都愛未が初めてメガホンをとった『珊瑚樹』(出演:堀 春菜、倉島颯良、福島珠理)。堀 春菜は大阪アジアン映画祭2018で上映された日韓合作映画『あなたの宇宙は大丈夫ですか』にも出演。本作では、同じく『3泊4日、5時の鐘』に出演、以降プロデューサー活動も行なっている福島珠理、倉島颯良と共演。女の子3人組が持つ独特の関係性にある設定を加え、旅立ちの季節ならではの心の揺れと重ねた。桜のように淡くも尊い青春が輝く。

今年の大阪アジアン映画祭コンペティション部門で世界初上映される夏都愛未の長編監督デビュー作『浜辺のゲーム』でも堀 春菜、福島珠理が出演。『珊瑚樹』と設定は違うが、ジェンダーのゆらぎが予告編から垣間見える。こちらも注目してほしい。






大阪出身のふくだももこ監督による『セフレとセックスレス』(出演:黒川芽以、木口健太)。ラブホテルでの密室二人劇は、男女のグレーゾーンを飄々と示し、面白い。かと思えば、だんだんお互いの本音が明かされていく。お互いに対して思っていた”なぜ”が明かされるまでの会話を、小説家としても活躍しているふくだももこが書いた二人のやりとり、そしてヒロインの言葉は女の本音だなとじんわり。ちなみに、ふくだももこ監督の新作短編『ゆっくり』も、大阪アジアン映画祭2019インディフォーラム部門で世界初上映される。






桃まつり時代からずっと注目している安川有果監督の『ミューズ』( 出演:石橋静河、村上 淳、中村ゆり)。石橋静河をどう撮るのか、観る前から楽しみにしていた一編だ。石橋演じるカメラマンと、彼女の被写体となる中村ゆり演じる小説家の妻。この二人の関係をさりげなく、でもその表情やゆらぎをライブ感ある映像で捉えている。石橋静河といえば、私の中では踊るシーン。『きみの鳥はうたえる』『二階堂家物語』と、作品の雰囲気を変える踊りのシーンが魅力的だった。今回も、短いながら、くるくるとリズムを撮りながら回る、家の中でのダンスシーンが挿入され、やはり重要なシーンになっている。多くは語らない中、ヒロインの気持ちの変化が伝わるような物語だった。





橋本 愛の圧倒的な輝きを感じる『愛はどこにも消えない』(出演:橋本 愛、南 沙良、小野花梨、柳 英里紗)の松本花奈監督も大阪出身、まだ二十歳の逸材だ。ずっと一緒にいた恋人がいなくなったことから始まる物語は、ヒロインのまっすぐな愛の叫びと、彼女が王女様のようにキラキラしている日々が交差する。ラブレター、タイムカプセルと昭和的なアイテムを盛り込み、好きな人の不在を超えて、今の自分を抱きしめる。タイトル通り、「愛はどこにも消えない」。21世紀の女の子も20世紀の女の子も、好きな人にまっすぐだった自分を愛おしく思えるような一編だ。




これぞ”女の子!”のビジュアルが印象的な『離ればなれの花々へ』( 出演:唐田えりか、竹内ももこ、詩歩)は、『21世紀の女の子』をプロデュースした山戸結希監督の一編。地球ではないかの地にいる3人の女の子による、詩のような会話の重なりは、母になることへの思い、しいては映画の未来までもその発想を広げていく。

「21世紀の女の子のための映画を」

この言葉は、作り手、観客の双方に向けられている。その大きな一歩としてここで撒かれた種に、観客の私たちも水をやり、育てていきたい。そして、風に乗って飛んでいく種の芽吹きも追いかけていきたいと思う。


現在テアトル新宿で公開中、2月15日(金)〜ヒューマントラストシネマ渋谷、2月22日(金)〜シネ・リーブル梅田、2月23日(土)〜元町映画館、出町座他全国順次公開

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