マレーシア映画、伝説の監督ヤスミン・アフマド 没後10周年記念特集上映、東京7/20、大阪8/23より開催

 マレーシア映画界に大きな足跡を残し、洗練された映像と爽やかなユーモアで、多民族国家で生きる人々の人間模様を豊かに描いたヤスミン・アフマド監督。日本人の祖母を持つアフマド監督は次回作に日本を舞台にした映画を構想していたが、2009年7月25日、脳内出血によりこの世を去った。享年51歳。あまりにも突然の、早すぎる死にアジアをはじめとする世界の映画ファンや映画人がその死を悼んだ。早いもので、その別れから10年が経ち、生前に残した全長編と特別作品を上映する「伝説の監督ヤスミン・アフマド 没後10周年記念特集上映」が開催される。


 東京はイメージフォーラムで7月20日(土)より、大阪はシネマート心斎橋で8月23日(金)より開催されるこの記念特集上映では、長編デビュー作『ラブン』をはじめ、東京国際映画祭最優秀アジア賞を受賞し、日本にヤスミン監督が紹介されるきっかけとなった秀作『細い目』、『細い目』から続くオーキッド3部作の『グブラ』と『ムクシン』、東京国際映画祭アジア映画賞スペシャル・メンションを受賞、大阪アジアン映画祭でも上映され話題を呼んだ『ムアラフ-改心』、日本でも劇場公開された青春音楽映画『タレンタイム〜優しい歌』がラインナップされている。また『タレンタイム〜優しい歌』の音楽も手がけたピート・テオか制作作品で、ヤスミン監督の遺作となった短編が含まれる『15 マレーシア』も上映される。


 『細い目』(04)は、長編デビュー作『ラブン』で登場したオーキッドが主役の青春映画。オーキッド役のシャリファ・アマニはアフマド監督にスカウトされ、本作で映画デビュー。以降、『グブラ』『ムクシン』『ムアラフ』に出演し、ヤスミン監督作品には欠かせない女優となっている。

 マレー系のオーキッドが、VCDを売る露店で出会った中国系のジェイソン。目が合った時から一目惚れしたジェイソンは、金城武好きのオーキッドが買いたいけれどお金が足りなかった『恋する惑星』のVCDを呼び止めて渡す。ケースの中に自分の連絡先を入れて・・・。

 初恋の輝きと葛藤だけでなく、多民族国家マレーシアの風情がたっぷり感じられる、マレーシア版ちょっとマイルドな『メイド・イン・ホンコン』のような作品。本特集上映でもおすすめの一作だ。


 教師のブライアンは、ペナンにいる母親と疎遠な生活を送っていた。帰省を促す電話にも、怒ったように電話に出るだけ。教会へ行くように促されても、決して行こうとしなかった。  そんなある日、彼が勤める学校でアニとアナの姉妹に出会う。大学生だったアニは、現在夜パブで働いており、妹のアナは学校で叱られると数字を口走るという一見変わった姉妹。そのアナが、授業中に教室で立たされた上、教師からせっかんを受けたところを校長により保護される。アナの送迎を買って出たブライアンは彼女たちの家に向かったのだったが・・・ 。

 『ムアラフ-改心』(07)は、姉妹とのかかわりを通じて、ブライアンの成長していく様子が、静かながら確かなタッチで描かれる。祈る姉妹の姿が印象的な、赦しと信じる心のストーリーだ。


 ゲストには、マレーシアを代表する女優で、ヤスミン監督作品では『細い目』『グブラ』で主役のオーキッド役、『ムアラフ―改心』で主役ロハニ、『ムクシン』にも特別出演をしたシャリファ・アマニ。マレーシアを代表するマルチ・アーティストで、『グブラ』の主題歌や『タレンタイム〜優しい歌』では「I Go」「Angel」「Just One Boy」などの名曲を書き下ろしたピート・テオを招いてのトークショーも開催される。