『白い暴動』鳴らせ、レイシズムに抗う闘いの音楽を!

 1970年代イギリスで起きた若者たちの闘いを描く社会派音楽ドキュメンタリー『白い暴動』 。4月3日(金)より全国順次公開中だが、コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言発令を受け、 4月17日(金)から複数の動画配信サービスにてレンタル配信。劇場再開後、現在絶賛上映中だ。


  1970 年代後半のイギリスでは、まさに現在のように経済が破綻状態。市民が抱いていた不安と不満の矛先は、第二次世界大戦後に増加した移民たちに向かい、移民を祖国へ返せという声が相次いだ。街は暴力で溢れ、デビッド・ボウイもエリック・クラプトンでさえも、当時は移民に対する差別発言をしていたのだ。そのような分断の時代に若者たちから生まれた運動が、“ロック・アゲインスト・レイシズム”(略称:RAR)。


 人種差別撤廃をはじめ「全ての差別に闘う」と活動を続けるRARの武器は、まさに「音楽」。本作のタイトル『白い暴動』は、ザ・クラッシュの大ヒットデビューアルバムであり、RARの活動を象徴するような曲だが、当時すでにイギリスで人気バンドだった彼らがRARを支持したことも、さらに若者たちをはじめとするイギリス市民をひとつにすることに寄与した。今のようにSNSがなかった時代、この運動を認知させるため、『白い暴動』の歌詞を大ポスターにして街中に貼るというキャンペーンを行うシーンも登場する。そして、政権の中心部、ロンドンで1978年4月30日に行われた約10万人による世紀の大行進(映画ではカーニバルと呼んでいる)、ヴィクトリアパークでの圧巻の音楽フェスティバルへと繋がっていく。


 監督は、自身もアジア系移民の家族に生まれ、両親が直面した人種差別について聞き興味を抱いて本作を製作したというルビカ・シャー。ドキュメンタリーでありながら、当時の新聞記事を随所に挿入し、アニエス・ヴァルダ作を彷彿とさせるようなコラージュの使い方も鮮やか。当時の中心人物たちの回想インタビューを交えながら、イギリスの知られざる歴史を炙り出す。BFIロンドン映画祭2019では最優秀ドキュメンタリー賞を受賞、今年の第70回ベルリン国際映画祭「ジェネレーション部門14plus」で、スペシャルメンション賞(準グランプリ)を受賞したばかりの秀作は、改めて音楽の力と、分断ではなく共に声をあげることの尊さを強烈に印象付けた。


<作品紹介>

『白い暴動』

(2019 イギリス 84分)

監督:ルビカ・シャー『Let‘s Dance: Bowie Down Under』※短編

出演:レッド・ソーンダズ、ロジャー・ハドル、ケイト・ウェブ、

ザ・クラッシュ、トム・ロビンソン、シャム 69、スティール・パルス