『追龍』蘇る九龍城砦!権力相手に”抗う自由”を見せつける!
香港の一国二制度が形骸化する国家安全維持法があっという間に成立、民主派団体が相次ぎ解散を表明する中、毎年香港で大規模なデモが行われている7月1日には、香港独立の旗を持っている人が逮捕されたというニュースが流れ、日本でニュースを見ているだけでも、香港がもはや自由な表現ができる状態ではないことが窺い知れた。香港の未来に悲観的な気持ちを抱く人も多い中、香港の大スター、ドニー・イェンとアンディ・ラウが自ら製作にも加わり、主演を果たした『追龍』がついに日本公開!60年代から70年代、イギリス統治下の香港は、「イギリス人さえ殺さなければ何でもあり」の無法地帯だった。無法地帯の象徴、九龍城砦も蘇り、ガヤガヤとした庶民の暮らしがそこここにある。そして、その上を飛行機がスレスレの低空飛行で飛んでいくのだ。かつての香港を知っている人なら懐かしく思うこと間違いない。
その中で繰り広げられるのは、かつて香港黒社会の“四大ファミリー”の首領と恐れられたン・シーホウと、汚職まみれだった香港警察でマフィアとウィンウィンの関係を築いていたリー・ロックの出会い、友情、そしてせめぎ合いだ。実録クライムドラマとはいえ、統治国のイギリスと香港警察との関係、香港警察とマフィアの関係、いずれも賄賂と汚職まみれ。半ば警察公認でドラッグなどの違法商売を堂々とし、巨万の富を得ていたというのだから、実に映画的だ。
ドニー・イェン演じるシーホウは、もともと中国広東省東部の潮州人。妻子が船上生活をしている中、同郷の仲間たちと香港にやってきては、腕っ節の強さを活かし、マフィアのガヤ的仕事をしていたが、アンディ・ラウ演じるエリート警察官、ロックと出会い、ついにはロックを助けるために当時仕えていたボスを裏切ったことから、足を粉砕されてしまう。
シーホウと全てを分かち合うと約束したロックは、香港警察で出世し、シーホウも巨万の富を築くが、だからといって彼が幸せになっていくわけではなかった。その裏には妻子が殺され、弟もヤク中になり、意気揚々と香港にやってきた仲間たちも、狙われては命を落としていく。立場が違えど義兄弟のようなシーホウとロックの間に、次第に溝ができていくのだった。
中国ほどではないにせよ、統治国イギリスの現地役人の横柄な振る舞いぶりは、シーホウでなくても目に余る。「たとえ俺を殺しても、英国人は殺すな。それさえ守れば俺たちの天下」と警察官としての立場を守ろうとするロックの姿が弱腰と見えても致し方ないだろう。どれだけ罪に問われても、黒社会の男なりのプライド、そして抗う自由が、シーホウを最後の闘いに突き動かすのだ。
ドニー&アンディの大御所たちに加え、ロックの参謀を演じるケント・チェンも、往年の香港映画に欠かせない顔だ。さらに『トレイシー』で初主演を果たしたフィリップ・キョンがシーホウの仲間を熱演。ベテラン勢が束になって、壮絶アクションにもチャレンジし、派手に暴れまくるお約束の楽しみも満載だ。懐かしのメンバーが、懐かしの時代を、ハイテンションで描き、半沢直樹並みの倍返しをかます、久々のアクション満載香港ノワール。変わりゆく香港に元気を与えるのは、やはりドニー&アンディだよな。うん、うん。
<作品紹介>
『追龍』(2017 中国 128分)
監督:ハリー・ウォン
出演:ドニー・イェン、アンディ・ラウ、フィリップ・キョン、ケント・チェン、ユー・カン、フェリックス・ウォン
2020年7月24日(金)〜新宿武蔵野館、シネ・リーブル梅田、7月31日(金)〜京都みなみ会館、シネ・リーブル神戸他全国順次公開
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