いまおかしんじ監督が関西在住キャストで描く震災からの日々『れいこいるか』、地元の元町映画館で舞台挨拶


 阪神・淡路大震災から25年を迎えた今年、震災で幼い娘を亡くし、痛みや葛藤を抱えながら生きる夫婦と、日々小さな楽しみを見つけながら生きる街の人たちの23年間を味わい深く描いたヒューマンドラマ『れいこいるか』が、8月8日(土)より新宿K’s cinema、シネ・ヌーヴォ、元町映画館で絶賛公開中だ。


 いまおかしんじ監督(『つぐない』)が震災直後から構想していたという本作は、長田や須磨をはじめ、観光地ではない神戸の人たちの暮らしやその息遣いが滲む。須磨水族館、長田の立ち飲み酒店をはじめ、神戸の人には馴染みの風景が次々に登場。それは自分の物語のように思えてくるのだ。そんな地元、神戸の元町映画館で、公開2日目の9日(日)の上映前に舞台挨拶が行われ、いまおか監督、主人公伊智子役の武田暁さん、太助役の河屋秀俊さん、そして太助が可愛がっていた天才卓球少年の母を演じた西山真来さんが登壇した。



 震災の年にデビューしたいまおか監督は、当時の先輩監督たちがピンク映画を撮りながらも当時起きた事件を盛り込んでいたことに刺激を受け、広く社会的な作品を撮るべく本作の原型となる脚本を震災翌年に完成させたものの「震災で子どもが死ぬような悲しい話は無理」と却下されてしまったという。川本じゅんきさん(朝日映劇)が好きな映画を撮ってくださいと150万円を出資してくれたことで、企画が動きだしたとその経緯を語った。


 震災から今までの時間を描ければ成立するのではないかと、最初は東京で撮影を考えていたといういまおか監督は、「震災に遭った神戸に行けば何か撮れるのではないかと、出演者も関西でオーディションをしました」と前置きしてから、なぜこの作品に出てくれたのかと登壇キャストたちに質問。20年ほど前、いまおか監督の『実録 六本木監禁レイプ』に出演経験があった河屋は、「今までで一番、撮影現場が楽しかった。いまおか監督が関西在住の役者を募集しているなら、自分が応募するしかないと思いました」と京都から参加。また、どんな風貌なのか見たいと言われで地元でいまおか監督とお酒を飲んだことを明かし、「何の役ですかと聞いたら、太助!と言われたのでびっくりしました」



 一方、最初から脱ぐ芝居があることを告げられていた伊智子役の武田は演劇活動が中心の俳優。懇意にしている西山から、いまおか監督がすごくいい監督であること、脱ぐシーンもあるが紹介させてもらってもいいかと事前に連絡があったことを明かし、「西山さんがそこまで勧めてくれるならとお受けしました。京都で飲んでいた二人に合流したら、既にベロンベロンで笑」と初対面で朝まで付き合ったエピソードを披露した。


 日頃は短期間で撮影するいまおか監督にとっても初となる1年がかりの撮影。季節ごとに神戸に通って撮影したことは、「髪を伸ばしたり、姿形を変えることができてよかった」と河屋は自らの役作りに生かしていた様子。一方、「思い描いていた通りの撮影にならなかった。最終何が切り取られたのか、分からない」といまおか流撮影に戸惑っていたという武田に対し、いまおか監督は「最終何を撮ろうとか決めていないですからね。役者は何にも囚われることなく、自由に解き放ってほしい」。そして最後に「うれしくて、朝から飲みまくっています。完成して良かった」と心からの笑顔をみせた。前日に『東京の恋人』舞台挨拶に登壇し、本作では音楽を担当した下社敦郎監督も客席で鑑賞、舞台挨拶の最後に西山からTwitterで下社監督にチケット写真付きリプライをすると、本作のサントラを無料でDLできるサントラキャンペーンを行うこともサプライズ発表された。


元町映画館では上映期間中、引き続き以下の舞台挨拶を開催予定だ。

8/10(月) 12:40の回上映終了後、上野伸弥さん

8/14(金) 12:40の回上映終了後、田辺泰信さん

8/15(土) 17:20の回上映終了後、田辺泰信さん、上野伸弥さん、いまおかしんじ監督

8/21(金) 17:20の回上映終了後、田辺泰信さん、上野伸弥さん