『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』スマホAIに翻弄される奥手男に幸はあるのか!?

 AIと恋に落ちる物語といえば、スカーレット・ヨハンソンがその声を演じた『her/世界でひとつの彼女』が思い出されるが、今度のAIは思いっきり毒舌で、しかも嫉妬深い!『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』の脚本家コンビとして有名なジョン・ルーカス&スコット・ムーアが脚本・監督を務めた本作は、圧巻のコメディの中に、スマホなしでは生きていけないデジタルネイティブの若者たちの生態を実にリアルに映し出す。



 舞台はシリコンバレーがあり、ITの聖地でもあるサンフランシスコ。主人公のフィル(アダム・ディヴァイン)は幼い頃から、両親が口論する時携帯ゲームを持たされ、大人になった今もスマホ中毒。ゴールデンブリッジを臨む道路を通勤で横切る時も、ケーブルカーに乗る時もずっとスマホばかり見ている。ジャーナリストになる夢も、会社ではバズる記事をネット記事を書く部署に配属され風前の灯。恋人はおろか、友達もいなかった。そんなある日、道で自転車を押す魅力的なケイト(アレクサンドラ・シップ)に偶然ぶつかり、さらなるアクシデントでスマホを壊してしまう。すぐに新しいスマホを買い求めたフィルだったが、立ち上げるとなんだか様子がおかしい。新しいスマホに搭載されているAI、ジェクシーは、フィルをコーチングし始め、スマホと穏やかに生きていた日常が崩れ始めるのだった・・・。



 手厳しいジェクシーによる数々の指南は、フィルを苦境に陥れもすれば、自分では勇気が出なかったことも無理強いし、新しい世界を開いてくれる。それだけでなく、ジェクシーの嫉妬と怒りがフィルの足を大きく引っ張ることにもなっていく。だが、この物語の素敵なところは、どんなきっかけであれ、一度リアルで様々なことを体験することにより、確実にフィルの人生が豊かになっていくことだ。監督はこれをしたかったのかと思うようなサンフランシスコの超絶坂での自転車下りなど、破天荒なことから、熱い恋愛まで。ピンチはチャンスと言うけれど、今までの日常が壊れた時に、フィルにとって想像もできなかったような革命が起こるのだ。



 近い将来、というかもう今でもAIと生きる日常が始まりつつあるが、あらゆる個人情報が詰め込まれているスマホで、あらゆる情報にアクセスできるSiriに代表されるAIの恐ろしさにも実は触れている。あながち奇想天外と言い切れないところは、ちょっとホラーのよう。感情の起伏がありすぎる、下ネタOKの恋するAIジェクシーは、一見の価値ありのハイテンションコメディ。思わぬ大物アーティストのカメオ出演にもご注目を!




<作品情報>

『ジェクシー!スマホを変えただけなのに』”JEXI”

(2019年 アメリカ・カナダ 84分)

監督、脚本:ジョン・ルーカス、スコット・ムーア

出演:アダム・ディヴァイン、アレクサンドラ・シップ、マイケル・ペーニャ、ローズ・バーン(声)

8月14日(金)〜ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、Tジョイ京都ほか全国ロードショー