中高生が奈良で制作した力作『線香花火が落ちるまで』『ささやかな、』、なら国際映画祭2020で世界初上映


 今やなら国際映画祭の若手育成プログラムの代表格となった、中高生が主体となって構想・撮影・編集・上映までを行う映画制作ワークショップ。今年はコロナ禍という困難を乗り越え、8月16日から23日まで奈良でワークショップを開催。講師に中川龍太郎監督(『四月の永い夢』『静かな雨』)を迎え、2グループに分かれて、猛暑の中映画祭のスタッフやサポートスタッフと共に映画制作に取り組み、素晴らしい短編が誕生した。クロージングセレモニーの前に行われた上映会では、世界初公開となる『線香花火が落ちるまで』『ささやかな、』が上映され、奈良の大自然の中生まれた瑞々しい感性と、工夫されたカメラワークにまさにハッとさせられる素晴らしい作品の誕生に立ち会うことができた。




■『線香花火が落ちるまで』by Keiko, Sawa, Mia, Miyu, Mona, Riko


  全員女子による独特なカメラワークと写真をフラッシュのように挟み込む手法が印象的な作品。夜の撮影にも挑戦し、線香花火が落ちるまでの短い時間の儚さを、親友を亡くした心の痛みと重ねた。オープニングセレモニーでもダンスを披露したMiyuの躍動感と美しさを兼ね備えたダンスの表現力にも魅せられる。

中川監督は「映画は本来写真が発展したもので、まずはイメージがあり、それをつないでいくと物語が後から出てくると僕は思っている。皆が撮りたい場面を並べ、それが結果こうなったのは映画を作ることの根っこに触れているチームだと感じました」と講評。主役が丸一日撮影に参加できなくなったことで、役を変更するかどうか皆で悩んだそうだが、役を変えるのではなく、カメラを主人公目線にして撮影することで、結果的に作品に全く新しい視点が加わったという。

左から

Keiko「主人公の少女は大切な友達をなくし亡くなった友達に会いにいく話。線香花火が煙たくて全身線香花火の匂いになったけど、その匂いが夏っぽいなと思いました」

Miyu「線香花火役、ラジオの声、編集を担当しました。お話を一からみんなで作ったが、セリフの少ない映画にするというコンセプトでずっと撮っていた。説明しなければつたわらないものもあるが、見た人の数だけお話ができればいいなという思いでした」

Sawa「カメラを自分視点にし、撮れるところをとる。一人称にしてもそれによる魅力が出る。コロナで会いたい人にも会えなくなったけど、一つの作品を皆と作り上げたことが本当に意味のあることだと思うし、映画を通してみなさんも誰か会いたい人のことを思い浮かべてもらえればと思って作りました」

Mona「代役の話も出たが、皆でKeikoを主役にと決めたので、主観的な視点が頭に浮かびました。自分のアイデアが映像に残ったことがとてもうれしい」

Riko「編集を担当しました。線香花火を撮るにあたり、夜撮を許可してくれたスタッフに感謝します。撮影前はトラブルがあり泣きましたが、ちゃんと上映できてホッとしています。トラブルでこういう撮り方になった時に大丈夫かなと不安になったけど、話し合って乗り越えました」

Mia「カメラは2回目ですが、最初は傾いてしまい、終わりに近づくにつれてまっすぐになっていくのでちょっとホッとしました。今まで主観で撮ったことがなかったのでうれしかったです」

最初は初対面同士でなかなか意見もでなかったというが、映画制作を通して意見を出し合い、危機を乗り越え、満席の観客にお披露目できたことに喜びの笑顔が溢れていた。観客からも熱い感想が寄せられ、大きな拍手が送られた。




■『ささやかな、』by Kisa, Saki, Hinata, Mitsuki, Yuka


 ユース映画制作ワークショップに参加経験のある Mitsukiの光を捉えたカメラワークが魅力的な、なら国際映画祭2020の今年のテーマである「トレジャーハンティング」をモチーフにしたような作品。10代特有の苛立ちと孤独、それを救う素敵な手紙の文章が、心がついていけないようなコロナ禍の今を生きる人たちを優しく包み込む。手紙のシーンは中川監督や河瀨からスタッフに至るまで多くの人が声の出演を果たしている。ジンとした気持ちが心に残る作品だ。

中川監督は「最初もう一人メンバーがいたけれど、途中で作らない決断をしました。映画を作ることは毎回怖いことだなと思います。とてもポジティブになっているのが好き。幸せの連鎖のように、いろいろな人の声がつながっていきます」と講評。

左から

Mitsuki「撮影と編集を担当しました。撮影は太陽の光を撮るのが難しかった。曇りだったのでいつ太陽がでるか待っていた。主人公は家を出ていく時、最初は太陽をうっとうしそうに省くけど、2度目は愛おしそうになでるんです。手持ちでやりたいと自分で言ったので大変でも楽しかった。」

Hinata「カメラ、マイク、色紙ちぎりを担当しました。手をかざしている場面をどうやって表現するか。ちぎり絵で森を表現し、他の紙に手を書いて貼り付けました。いろいろな人に協力して作ったポスターなので、気に入っています。ポスターを見てあの場面を想像してもらえたらと思います」

Saki「マイクを担当しました。腕に負担がかかりしんどいと思いながらやっていました」

Kisa「(主人公は)すごく傷ついていて、傷ついた心を癒すのはすごく難しいけれど、少しでも癒してあげることがができるのは人間。小さい幸せが命をつなぎ、生きてていいと思える瞬間が大事で、その気持ちを映画にしたいと思いました」

Yuka「生きづらさを感じている主人公です。生きたいと思うのは難しいことだけど、そこまでいかなくても生きたいと思えるようになればいいなと思って作りました」

さらにタイトルの意味についてHinataは「小さな幸せの連鎖をテーマに作った映画。”、”のあとはみなさんに考えてほしい。会場のみんなで考えてもらえたら」と観客に呼びかけた。


最後に中川監督が「ボランティアの大学生や、引退されている先輩に助けられ、彼らとのコミュニケーションでできた作品です。普段年の離れた人とのコミュニケーション自体が意味があるし、僕も色々勉強になりました」とワークショップを共に過ごしたユース達にエールを送った。


このユース映画制作ワークショップは、来年も開催予定だ。