父、手塚治虫の誕生日に宝塚でプレミア上映は「本当に特別なこと」『ばるぼら』手塚眞監督舞台挨拶


 現在、宝塚シネ・ピピアで開催中の第21回宝塚映画祭で、11月3日(火・祝)に手塚治虫原作漫画を長男の手塚眞監督が映画化した『ばるぼら』が11月20日(金)からの全国公開に先駆けてプレミア上映され、上映前に手塚監督の舞台挨拶が行われた。


 この日午前中は名誉館長を務める宝塚市立手塚治虫記念館のセレモニーに臨んだという手塚監督。満席の観客を前に「11月3日は私にとって特別な日。父、手塚治虫は生きていれば92歳の誕生日で、宝塚は父が3歳から24歳まで住み、ここで漫画を書き始めました。そんな日に上映できるのは本当に特別なこと。私自身がここにいてドキドキしています」と挨拶。さらに手塚作品が日本の漫画のルーツだとすれば、戦前、戦後多数の映画を生み出した撮影所、宝塚映画は一つの映画のルーツと宝塚映画祭の趣旨にも触れ、二つのルーツが合わさったところで、漫画を原作とし、自身が監督した『ばるぼら』がプレミア上映されることに感謝の気持ちを表した。



 父の連載時から「ばるぼら」を読んでいたが、なぜその名前がついたのかは父に聞きそびれていたという手塚監督。「あとがきにギリシャ神話からとっていると書いていたが、調べても全然出てこないので、完全に父の造語ではないか。ギリシャ神話からというのは父特有の一種のフェイクだと思う」と印象深いタイトルについて解説。


 さらに二階堂ふみが演じたばるぼらについて、手塚漫画で「リボンの騎士」から続く、中性的な女性キャラクターの系譜があり、そのイメージは手塚治虫が小さい頃から親に連れられて通っていた宝塚歌劇で培われたものだとし、「学生時代は宝塚歌劇で記者として楽屋の方で取材もしていたそうで、常々自分はデッサンの勉強をしていないので女性を魅力的に書けないと言っていたが、僕からすればとても魅力的だった」と父が描く女性に対しての評価を語った。


 二階堂ふみが演じたはるぼらは「女性なのに少し男性的な部分があり、不思議な中性的魅力を出す瞬間がある。二階堂さんが衣装をつけた瞬間にばるぼらだと思ったのでお任せで演じてもらいました」。一方美倉を演じた稲垣吾郎については「稲垣さんの環境が大きく変わったタイミングだったので、人生に葛藤を抱える美倉を計算して演じておられたが、ある部分から内面や稲垣さんの人間性が出てきたのではないか」と何も言うがないほど素晴らしい演技をした主演二人を讃えた。ちなみに稲垣は現在公開20周年記念デジタルリマスター版が全国順次公開中の手塚監督作品『白痴』のチラシにコメントを寄せているが、公開当時に忙しい活動の合間を縫って一人でミニシアターに訪れて鑑賞したそうで、そのことを劇場の人から聞いた時嬉しかったという手塚監督は「いつかは(映画で)ご一緒したいと思っていたが、時間がかかりました」と『白痴』との意外な繋がりを明かした。

 

 名カメラマンのクリストファー・ドイルや手塚組のスタッフたちと「何かに取り憑かれたように没入した作品。みんなが気持ちを一つにして一気に作り上げた」と手塚監督にとって特別な一本になったことを語り、最後の挨拶では「映画を完成させるのはみなさんの心の中。できれば特別な一本になれば」とメッセージを送った。

11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、なんばパークスシネマ、京都シネマ、MOVIXあまがさき他全国ロードショー

公式サイト⇒https://barbara-themovie.com/

(C)2019『ばるぼら』製作委員会