「不自由で息苦しい世の中にふさわしい作品ができた」石井裕也監督最新作『アジアの天使』、第16回大阪アジアン映画祭で世界初上映


 石井裕也監督が初の全編韓国ロケに挑んだ最新作『アジアの天使』が第16回大阪アジアン映画祭クロージング作品として、3月14日世界初上映された。

 日本からは石井監督と何度もタッグを組んでいる池松壮亮、韓国映画にも多数出演しているオダギリジョーらが参加、韓国キャストでは『金子文子と朴烈』で一躍人気俳優となったチェ・ヒソ、キム・ミンジェ、キム・イェウンらが参加し、ひょんなことから出会った日韓二つの家族の予想外の旅路を石井監督らしいオフビートな感覚で描いている。



 クロージングの世界初上映前に来阪した石井裕也監督が登壇し、舞台挨拶が行われた。2014年釜山国際映画祭でパク・ジョンボム監督(『ムサン日記 白い犬』)と審査委員を務めた時に意気投合し、本作でプロデューサーを務めてもらうことになったと明かし、楽しく食べて飲むという韓国の文化や人と人との距離感の近さが、映画の中にも生かされていると撮影を振り返った。


 今回残念ながら来阪が叶わなかったチェ・ヒソから届いた動画メッセージでは、「国を超えて家族になる旅を描いた作品ですが、そのテーマが映画でアジアをつなげる橋として毎年行われている大阪アジアン映画祭に似ている」と日韓スタッフ、キャストが2ヶ月間心を一つにして作り上げた本作の意義を語りかける一幕も。



 石井監督は最後に「この映画は、言葉も国籍も違うけれどみんなで集まって、自由な人間関係、コミュニティが作れればいいなと思って撮りました。今は不自由で息苦しい世の中ですが、そういう時代にふさわしい作品ができたと自負しています。ぜひお楽しみください」と力強く挨拶し、世界初上映が行われた。3月に発表されたポスタービジュアルでは2家族の6人が、砂浜でそれぞれバラバラの位置に立ち、同じ空を見上げている。まさにこの光景が映画のコンセプトを象徴しているのではないだろうか。本作は7月2日から全国順次公開。

(c) 2021 The Asian Angel Film Partners