『乱世備忘ー僕らの雨傘運動』この闘いを風化させてはいけない

シネマドリフターのリム・カーワイ監督が企画し、昨年開催された「香港インディペンデント映画祭」で日本初上映された香港のドキュメンタリー映画『乱世備忘ー僕らの雨傘運動』。カーワイ監督自身も映画祭で1番の目玉作品と公言したこの作品で、2014年、民主的な選挙を求めた香港人たちの79日にわたるデモ、雨傘運動を目の当たりにしたのだ。近年の香港映画人たちが、自国の状況に危機感を強めているのもこの運動と時を同じくしている気がする。この映画を見ることは、今の香港を知る上でとても重要だ。2017年山形国際ドキュメンタリー映画祭小川紳介賞作。


自らも運動に参加しながら撮影していたチャン・ジーウン監督が、撮影しながら出会った学生たちにスポットを当てながら、テント村のようになり、共同生活する運動の日々を映し出す本作。運動が日常になっている姿、臨時の学校まででき、ボランティア学生が教えていたりと、意外と思えるような一面も映し出す。香港人同士が争うような警官隊との衝突などは、日本でも辺野古の基地反対運動と重なり、なんとも言えない気分にもなる。日本を含めた周りのアジアの国に大きな影響を与えた雨傘運動の全てがそこにあった。

このデモから4年も経っていないのに、今年の7月1日の民主化を求めるデモでは中国当局の民主派勢力締め付けがますます激しくなっていることから参加者が激減したというニュースも飛び込んできた。香港でも風化されつつあるこの運動、日本も奇妙な独裁政権になっていると言っても過言ではない今、見ていると様々な思いがよぎるのではないか。またもう一度、見てみたい作品だ。