映画とアートの発信地に!京都みなみ会館、8 /23に移転リニューアルオープン。こけら落としは『未知との遭遇』
建物の老朽化に伴い2018年3月末で一時休館、再開が待ち望まれていた京都ミニシアターの老舗的存在、京都みなみ会館が、8月23日(金)に旧館の北側で移転リニューアルオープンする。
大スクリーンのようなメッシュの装飾が印象的な2階建ての同館ではスクリーン数が3スクリーンに拡充、1階のスクリーン1(126席)は旧館のシアター復刻をイメージし、トレードマークのキネット社製赤椅子や、青色の床面、正面上の「京都みなみ会館」の文字など、細部に渡り伝統を受け継ぐ姿勢が感じられる。後方入り口には、旧館の映画人サイン入りドアがお出迎えしてくれる趣向もうれしい。一方、2階のスクリーン2(54席)、スクリーン3(30席)は、ラウンジのようにオシャレでくつろげる空間もあり、新生京都みなみ会館を予感させる。
8月22日(木)に行われた移転リニューアルオープンレセプションでは、同館を運営する巖本金属株式会社巖本博社長、門川大作京都市長、京都市立芸術大学の赤松玉女学長、京都みなみ会館の吉田由利香支配人によるテープカットが行われた。巖本社長は「心のこもったアートハウスを作ってくれて感謝します」と1年5ヶ月ぶりの再開を喜びながら「京都から文化、アート、文芸コンテンツ発信の場にしたい」と抱負を語った。門川市長も「いいものを大事にし、リノベーションするのは京都の美学」とコメントし、2023年京都駅東側に京都市立芸術大学が全面移転することを見据えて、京都みなみ会館のある京都東南区エリアが文化芸術の拠点になることへの期待を寄せた。
■『未知との遭遇』でこけら落としができて、本当に良かった(京都みなみ会館 吉田由利香支配人)
リニューアル期間中もお客様からの声に励まされていたという吉田支配人が選んだこけら落とし作品は、スティーブン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』だ。「リニューアル期間中に京都みなみ会館で観ていただきたいと思う映画がたくさん公開されました。まずはそういう名作たちにオープニングを彩ってもらいたかったのです。特に、スピルバーグ監督作品は大画面に似合うので、この機会にずっとやりたかった『未知との遭遇』を含めた『ジョーズ』『E.T』という一連のスピルバーグ特集を組みました。『未知との遭遇』でこけら落としができて、本当に良かったと思います」。3スクリーンになったことで、「今まで、座席数が多いため、なかなか紹介できなかったインディペンデントの作品を、コンスタントに紹介できるのではないか」という。実際、今秋には関西先行公開のインディペンデント映画『ルートヴィヒに恋して』、『みぽりん』が公開予定だ。
また、京都みなみ会館敷地内には京都の情報誌「月刊誌Leaf」がプロデュースしたTRUCK POCHER(トラック ポシェ)がオープン。11時から19時まで、ドリンクやホットドックを提供。豊富なトッピングで自分流のホットドックを楽しめる!
■それぞれ感じ方、考え方が違う人たちが一緒になって映画を観る場が、街にどれだけあるか。それがすごく大きな意味を持つ(鈴木卓爾監督)
8月30日より同館で映画『嵐電』が公開される鈴木卓爾監督、および京阪神のミニシアター支配人にみなさんにお祝いコメントを寄せていただいた。
鈴木卓爾監督(映画『嵐電』が8月30日より同館で公開)「映画館は色々な人が集まって、知らない人と一緒に映画を観るのですが、それぞれ感じ方、考え方が違う人たちが一緒になって映画を観る場が、街にどれだけあるかが、すごく大きな意味を持つと思っています。京都みなみ会館さんが復活していただき、京都3館(出町座、京都シネマ、京都みなみ会館)で色々な映画を展開していくことがとてもうれしい。本当に“おかえりなさい!”という気持ちです。」
山崎紀子さん(シネ・ヌーヴォ支配人)「京都みなみ会館、リニューアルオープンおめでとうございます。これからどんどん色々な作品を上映していくと思います。大阪も頑張りますし、京都も頑張って、色々な映画を盛り上げていけたらいいなと思います。頑張りましょう!」
横田陽子さん(シネマート心斎橋支配人)「リニューアルオープン、おめでとうございます。3スクリーンになったので、より色々なジャンルの映画が上映できるのではないかと思って、羨ましい限りです。頑張りましょう!」
林未来さん(元町映画館支配人)「高校まで京都暮らしだったので、ミニシアターに行き始めた頃に一番通っていたのが京都みなみ会館で、個人的にとても思い入れが強い劇場なんです。だから、(老朽化で)なくならずに、移転、再オープンしたのはメチャメチャ嬉しいです!」
■「パッと見てわからなくても、10回ぐらい通ううちに少しずつ気づいていくような、小ネタがいたるところに仕込んであります」(設計 島田陽さん)
設計担当の島田陽さん、今井康江さん(島田陽設計事務所)。島田さんは吉田支配人から参考にしてほしいと言われたニューヨークで話題のメトログラフ劇場にも実際に足を運んだという。船便で5ヶ月かかるというフランス、キネット社の椅子を発注することから始まったというお二人に、2階のスクリーン2、スクリーン3を中心に設計のこだわりについて話を伺った。
「スクリーン2は椅子の色をグレーにしていますが、クールなイメージでインディペンデント映画を中心としたミニシアター系作品を想定したニュートラルなイメージです。機能性を重視した作りになっており、壁面も防音性能が良いグラスウールボードを使用しています」
「スクリーン3は、ロングランの時にスクリーンを変えて上映することを想定し、席数は一番少ないですが、リッチな気持ちになれるような暖色系で、作品を慈しむという雰囲気を出しています。壁も檜の木をセメントで固めた壁材(木毛セメント板)で、温かみのある内装の仕上げになっています。通路も徐々に俗世から離れ、映画に集中してもらうために、暗く奥行きが深くなる空間にしており、帰りは周りの雰囲気が映り込み、今まで見えていた風景が違うように感じられるように設計しています」
「映画がスクリーンに映し出されるように、映画館の中に様々なスクリーンがあり、それをくぐり抜けるイメージを、様々な素材で設置しています。例えば、外側に貼られているステンレスのメッシュスクリーンを階段をくぐり抜けて入ってきたり、天井もメッシュのスクリーンや、照明のスクリーンなど、色々なレイヤーが光を受け止め、発しています」
リニューアル期間の秀作から、最新作、名物のオールナイト上映まで、帰ってきた京都みなみ会館の新しい伝説が、いよいよ『未知との遭遇』から始まる!
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