NARAtive2020は、中国の俊英ポンフェイ監督が奈良県御所市を舞台に描く日中合作。エグゼクティブ・プロデューサーはジャ・ジャンクー×河瀬直美


 なら国際映画祭プレイベント2019、最終日となる9月16日(月・祝)のクロージングセレモニーを前に、なら国際映画祭のインターナショナルコンペティション部門において受賞した監督の中から選ばれた監督が奈良県内の各所で映画制作を行うNARAtiveプロジェクトの最新作となるNARAtive2020の監督に選ばれた中国・ポンフェイ監督の観客賞受賞作『ザ テイスト オブ ライスフラワー』が上映された。ミャンマーとの国境にある雲南省の少数民族ダイ族の村を舞台に、雄大な自然や、原始的な生活の中で繰り広げられる母娘の物語がユーモアを交えて描かれる、印象深いヒューマンドラマだ。

  上映後、ゲストとして登壇したポンフェイ監督は、撮影後のQ&Aで黒澤明監督や北野武監督など、日本の監督作品が好きであることや、音楽に『座頭市』を担当した鈴木慶一さんに直接交渉したというエピソードを明かした。 



 その後、登壇したNARAtive2020の河瀬直美エグゼクティブ・プロデューサーは、奈良県御所市で撮影準備が始まっていることを紹介すると、来場していた御所市の東川市長が、「心から歓迎申し上げたい。今日の映画を拝見し、御所を舞台にした意味を感じさせていただいた。スピリチュアルな泥臭い文化が残っているところ。映画で映し出していただくことを期待しております」と挨拶し、市民をあげて制作チームを歓迎する気持ちを表現した。

  すでに御所市でロケハンやシナリオ執筆のための取材を進めているポンフェイ監督は、「河瀬監督と一緒に映画を作ることができ、非常に光栄に思います。中国と日本の間にたくさんの事柄がありますが、なるべく友情を育める映画にすべく、全力をあげたいと思います。今回の映画は人を探すというのも大きなテーマを置いています。すでに御所市をロケハンし、インスピレーションを受けたので、今ご覧いただいた作品のように、自然を身近に感じられるような雰囲気に仕上げたいですし、よりテンポが早く、ユーモアがあり、歴史的にももっと深い、真心を感じるものにできればと思います」と抱負を語った。  

 河瀬エグゼクティブ・プロデューサーからは、ストーリーについて「第二次世界大戦後に中国に残された中国残留孤児の人が日本に戻ってきていますが、その方々がどんな暮らしをしているのか私たちは実はよく知らないのです。ポンフェイ監督は奈良に住んでいる中国残留孤児の方にインタビューをし、物語を構築しています」と説明。今回は、ジャ・ジャンクー監督をエグゼクティブ・プロデューサーに迎えた日中合作であることを明かし、「二人が手をつないで、新しい中国人の才能によって撮られる御所市の作品を世界に発信します」とカンヌなどの世界映画祭を視野に入れた奈良発映画の制作に自信をにじませた。

  さらにポンフェイ監督が実際に御所市で暮らし、方々を訪れて映画制作を行う準備を進めていることに感謝しながら「御所のリアリティの中で映画を作ろうとしてくれていることに可能性を感じます。まずはその街の生活があり、そこで生きている人がいる訳で、そこから映画ができあがる強さはすごいこと。人間は色々なことがコントロールできると思っていますが、その先には自然破壊が起きているのが現状です。人間がもっと謙虚になり、もっと先のことを考える。それが御所や、ポンフェイの哲学の中にあると思っています」と今秋から始まる撮影に期待を寄せた。



  続けて行われたユース審査員による授賞式では、 『NIFFユース審査員 短編映画プログラム presented by SSFF & ASIA』では、クリスタルSIKA賞に『シェイクスピア・イン・トーキョー』(日本)が選ばれた 

<講評> 

主人公ベンはダウン症というハンディキャップを持ちながらも、兄と二人で東京に移住する物語。兄に施設に入れられそうになり、その間にベンは東京探検に出かける。僕たちが選考理由にした「何を次世代の子供達に伝えたいか」に一番合致した作品でした。 



『NIFFユース審査員 長編映画プログラム presented by BERLINALE SPOTLIGHT-GENERATION』では、クリスタルSIKA賞に『コロニー』(カナダ)が選ばれた 。

<講評> 

最終的な決め手は、私たちユースが選ぶ作品は何かということです。どういう環境で私たちが暮らしているのかを大人に知らせる作品、大人にとっては些細なことでも、少しでもその価値観が変わるきっかけになればと思いました。 



 河瀬エグゼクティブ・プロデューサーが「この子たちが次の世代につないでいってくれるんだなというのが、すごく希望になった」という、なら国際映画祭プレイベント2019。「ユースの部門をしっかりと支えながら、1000年続いていく映画祭をコツコツとやっていきたいと思います。来年、またここでお会いしましょう」という河瀬エグゼクティブ・プロデューサーの掛け声と共に、初日に登壇したカタルーニャ プレイベントのフランク・アルー監督を交えた壇上の来場ゲストが笑顔でフォトセッションを行い、映画祭を締めくくった。 豊かな自然と、神々しい雰囲気の御所市で今秋からクランクインするポンフェイ監督最新作がなら国際映画祭2020でお披露目されるのを、楽しみにしていたい。