「分断の世の中で、共有をテーマにしたい」9/18より開催の『なら国際映画祭2020』、東大寺大仏殿で参拝祈願も。


 2年に1度開催される『なら国際映画祭』(NIFF2020)。今年は感染予防対策を万全にし、オンライン配信を併用した形で、9月18日(水)~22日(日)の5日間開催される。今回は奈良時代、疫病(天然痘)が流行し人々の苦しみを治すために大仏(廬舎那仏)が造立されたという歴史がある東大寺に特別に赦しを得て、オープニングセレモニーでは東大寺大仏殿正面参道にレッドカーペットを敷き、コロナウイルス流行の終息と映画祭の成功を祈願する予定だ。

 8月4日に東大寺大仏殿前東側芝生で行われた記者会見にて、同映画祭エグゼクティブ・ディレクターの河瀨直美監督は「新型コロナウイルスの拡大する中で、映画祭を行う意義を見出したい。なら国際映画祭はチャレンジする映画祭。新型コロナウイルスの感染拡大とともに、世界中で分断が始まっている中で共有するという事をテーマとしたい」と抱負を語った。さらにカンヌ国際映画祭総代表のティエリー・フレモー氏からは、応援メッセージが寄せられた。



 今年の映画祭テーマ「宝探し/Treasure Hunt 」のイメージを反映させたというポスターは、「ポスターを見る人自身や奈良の風景がポスターに映り込み、それ自身がポスターのビジュアルになることで、より本質的な宝物のイメージを表現できる」。長い歴史があり神社仏閣も多く、目には見えないけれど、何かを感じる神秘的な空気、神様のような存在を感じられる奈良から、神社の御神体である鏡をモチーフとしたという。



 プログラムも発表され、中国の俊英、ポンフェイ監督が奈良県御所市を舞台に、中国残留孤児を題材にしたNARAtive(ナラティブ)作品『再会の奈良』をプレミア上映する他、インターナショナルコンペティションでは、先日オンライン開催された「Far East Film Festival2020」(イタリア・ウディネ)で、初長編作ながら見事Silver Mulberry(観客賞第二位)に輝いた、マレーシア映画「Victim(s)」をはじめ、見どころいっぱいの全8作品を上映。『鉱 ARAGANE』『セノーテ』が高い評価を得ている小田香監督を見出したナラウェイブ(学生映画部門コンペティション)でも、期待の若手の最新作が上映される。




 また、カンヌ国際映画祭短編部門と「シネフォンダシオン(学生部門)」の受賞作品のみ(今回は2019年受賞作)を集めての上映をはじめ、カタルーニャの言語と文化を世界に発信する政府機関IRLが主催し世界各国で開催している”カタラン・フォーカス”をNIFF2020の特集上映として日本初開催。スペイン・カタルーニャ州出身の若手女性監督の作品を一挙6本上映する。



 NIFFらしい取り組みと言える、未来の映画人を育成するユース3部門、

    ○ユース映画審査員

    ○ユース映画制作上映ワークショップ

    ○ユースシネマインターン

今回、新たにユースシネマインターンが加わり、既に始動中だ。中学生が主体となって構想から撮影・編集など、すべての過程を体験して映画製作を行うユース映画制作上映ワークショップ。本年は中川龍太郎監督(『わたしは光をにぎっている』『静かな雨』)を講師に招き、完成した作品は『なら国際映画祭2020』にて上映予定だ。


 他にも、DJの野村雅夫氏が主宰する京都ドーナッツクラブプレゼンツにより、野村氏の故郷イタリアのトリノで1996年に実際に起こった強盗事件を題材にした『黄金の一味』を日本初上映する「イタリアン・ノワール・フィルム」を開催。 上映後は野村氏のトークイベントを行う。神社仏閣奉納上映、ならアートナイトと奈良の街が一体となり、NIFFを盛り上げる。席数を減らしての開催とはなるが、映画祭のボリュームは減らさず、むしろ新しい企画が加わり、さらにパワーアップをしたNIFFを感じることができるだろう。

チケットほか詳細は公式サイトまで→https://nara-iff.jp/