雨傘運動から香港民主化デモまで “香港の真の姿”を描く日本初公開作を一挙18本公開!2021年香港インディペンデント映画祭、シネ・ヌーヴォ、出町座、シネマスコーレで開催


2017年、東京、名古屋、大阪の3都市で開催され、雨傘運動を描いたドキュメンタリー映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』(チャン・ジーウン監督)を日本初公開した他、多彩な作品を紹介し大好評を博した第1回「香港インディペンデント映画祭」から4年。伝説の映画祭が帰ってきた!


前回同様、シネマドリフターのリム・カーワイ監督、香港からは影意志が主催し、2014年雨傘運動から、2019-2020年香港民主化デモまでの“香港の真の姿”を描いた、香港インディペンデント映画全18作品を、一挙日本初上映する「2021年香港インディペンデント映画祭」が6月19日(土)より大阪シネ・ヌーヴォ、6月25日(金)より京都出町座、7月中旬より名古屋シネマスコーレにて開催される。


今回は香港の商業映画ではなく、映画業界の検閲から国内で劇場公開されることのなかった香港の自主映画、中でも政治的なテーマのものを中心に多彩な作品を紹介。最近の韓国映画の潮流と同じく、香港からも新人女性監督が多数現れているという。彼女たちが検閲にも臆することなく、勇気を持って描き出した作品にもぜひ注目してほしい。長編作品を中心に上映作を紹介したい。



『僕は屈しない』《地厚天高》Lost in the fumes(2017年 香港 93分)

第1回「香港インディペンデント映画祭」上映作品『憂いを帯びた人々』監督のヴィンセント・チュイがプロデュースを務めた大阪アジアン映画祭 ノーラ・ラム監督(第15回大阪アジアン映画祭上映作品『4×4』)によるドキュメンタリー映画。主人公、香港本土派の政治活動家エドワード・レオンのカリスマ性から、香港で数百回以上行われた自主上映で毎回満席を記録した奇跡のような映画で、2019年抗争運動のメインスローガン 「光復香港、時代革命」は、2016年に彼が立法会議員を立候補した際に作った選挙スローガンから由来している。本作ではモンコックで起きたデモ騒動の顛末を描かれている。



『逆立ち』《對倒》Tete-Beche(2017年 香港 78分)

父はベテランの新聞記者、息子は警察、娘はデモ参加者。雨傘運動の影響を受けたある家族の矛盾、対立と、崩壊の過程を2014年から2017年までの長いスパンで丁寧かつリアリズム的に描き出した劇映画。香港映画に欠かせない名優、ベン・ユエン(袁富華)の初主演作。その後、東京国際映画祭でも上映された『トレイシー』で香港アカデミー賞助演男優賞を獲得している。



『逆向誘拐』《逆向誘拐》Napping Kid(2018年 香港 98分)

第10回大阪アジアン映画祭に出品された『点対点』のアモス・ウィー監督の長編映画2作目は、前作に続き、自主映画にも積極的に投資、製作、配給を行う会社・ゴールデン・シーンによるプロデュース。自主映画にも関わらず、セシリア・ソー、ン・シウヒンなど香港映画を代表する若手俳優、ベテラン俳優など豪華キャストが集結。若者の上の世代に対する絶望と反乱をサスペンスエンターテインメントに昇華している。



『あなたを思う』《看見你便想念你》 I miss you, when I see you(2018年 香港 93分)

香港を代表するゲイの映画作家、サイモン・チュン監督の最新作。香港版の『ムーンライト』と絶賛され、ある意味では一番政治的な映画であると言えるメロドラマの傑作。主役を演じたジュン・リーはその後『トレイシー』で監督デビューを飾り、話題を呼んだ。本作は香港国際映画祭、シアトル国際映画祭、台湾クィア映画祭などに出品された。



『理大囲城』《理大圍城》Inside the Red Brick Wall(2020年 香港 88分)

2019年11月中旬、香港島と九龍島の間のトンネルの要塞にある香港理工大学で警察と学生との攻防が11日間に渡り繰り広げられ、その間、大学キャンパス内は惨憺たる戦場と化した。その後、1000人以上の学生が暴動罪で逮捕された(堀井威久麿監督のドキュメンタリー映画『香港画』でも一部描かれている)。この事件は2019年抗争運動の中で一番スキャンダラスな事件であったが、あまりマスコミに報道されていない。未だ明らかにされていないその真相と過程を映し出す、まさに命がけのドキュメンタリー。なお、将来のキャリアと身の安全を考慮して、本作の監督と製作者たちは匿名になっている。香港映画評論学会最優秀映画賞、台北国際ドキュメンタリー映画祭オープニング映画。


他にも、≪「香港、アイラブユー」短編集≫では、『ある殺人、落葉のころに』や『花椒の味』(2021年劇場公開予定)のロー・ジャンイップ主演の『尋ね人』をはじめ、香港の新しい才能を発見できる8本を堪能できる。また、≪2019年香港民主化デモ傑作短編集 ≫から、マスコミとテレビでは伝わらなかった、この香港史上最大の抗争運動の一面を知ることができるだろう。


最後に、リム・カーワイ(映画監督、2021年香港インディペンデント映画祭主催)からのメッセージをご紹介したい。

雨傘運動の5年後の2019 年6月から誰も予想だにしなかった、雨傘運動よりも大規模で激しい抗争運動が起き、それは新型コロナウイルスが流行し始める時期まで長期間続いた。そして、コロナ禍の真っ最中、23年目の返還記念日に、なんと中国政府が香港で国家安全維持法の実施を採決し、香港の中国返還で約束された一国二制は事実崩壊したのではないかと世界各国から懸念されることになった。本映画祭が開催された 2017 年からコロナ禍が起きるまで、この数年間の社会と政治状況の激変に対応して、誠実に描く劇映画とドキュメンタリー映画も数多く作られたが、その殆どが映画会社が作った商業映画ではなくて、自主映画だった。映画業界の自己検閲もあって、残念ながら、そういう映画は香港の劇場で一般公開までにされることはなかった。2020年のロッテルダム国際映画祭では、香港で上映されなかった政治的なテーマを持った自主映画の特集が組まれ、国際的にも大きな反響を得た。残念ながらそのような映画は日本ではまだ一本も紹介されていない。「2021年香港インディペンデント映画祭は、そのような映画を精選して上映する予定ですが、必ずしも抗争をそのまま描く映画ばかりではなく、雨傘運動の失敗後から2020年まで香港の若者がいったいなにを考えていたのか、そしてなぜ彼らが死を覚悟しながら、抗争に命懸けで積極的に参加したのか、多種多彩の映画を通じて日本の方々に理解していただく助けになればと考えている。今回紹介する映画はもう一つ特徴がある。それは雨傘運動が起きてから、特に自主映画の分野では突然沢山の新人女性監督が現れたことだ。これらの作品を鑑賞していただければ、日本の観客も香港の若い女性監督の勇気と才能の勇気と才能、社会へ関心の深さに感服するに違いないだと思う。