2017.08.28 08:30『5時から7時までのクレオ』@ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語全編モノクロだと思っていたら、タロット占いでカードが並ぶテーブルを上から映すカラーのシーンから始まり、あっと驚かされる。占いに頼った主人公クレオが、その結果に落胆して外へ出た後、占い師が告げる言葉も衝撃。「癌」という言葉が冒頭から飛び出す。これから見守ることになるクレオは死の不安に怯えている人物なのだ。検査結果を電話で問い合わせするまでの...
2017.08.25 14:14『エル ELLE』イザベル・ユペールがすべてとんでもない変態映画のように見えるのに、ユペール様が演じるヒロイン、ミシェルの予想を裏切る行動の数々にどんどん惹き込まれていく。自宅に乱入され、暴行された被害者でありながら、それがトラウマになるというより、警察にも誰にも頼らず、自ら犯人捜しをするなんて、熟年世代とはいえ、そこまで肝の太い女性はなかなかいないだろう。女社長ミシェルの周りは、...
2017.08.22 07:32『パターソン』ジム・ジャームッシュからの素敵な贈り物。何でもないような日常も、実は新しい驚きに満ちている。これは紛れもなく、ジム・ジャームッシュからの贈り物のような映画だ。何も変わらないように見える日常でも、二つとして全く同じ日はない。そんな当たり前のことを、改めて感じさせてくれる。これって、実に地味だが、一番身近なことだし、目の凝らし方次第で、毎日を新しい気持ちで受け止められるきっかけを与えてもらった気分。そして、今の私は、大仰なものより、...
2017.08.17 12:28『ブランカとギター弾き』とにかくファンタスティック。日本人監督がスラム出身少女の目線で描く”home”とは?昨日、ブリランテ・メンドーサ監督がフィリピンのスラム街を舞台にした『ローサは密告された』をご紹介したばかりだが、同じスラム街を舞台にしながら、こんなにファンタスティックな作品が出来上がるとは、驚くばかりだ。上空からスラム街の屋根を映し出し、人でごった返す市場で猫の鳴き声や子供達の声が聞こえる。懐かしのゴム飛びをして遊ぶ子供達もいれば、「お...
2017.08.16 09:15『ローサは密告された』麻薬、密告、警察の腐敗が日常のスラム街で、家族を守る母の闘い映画祭では最近多く紹介されているにもかかわらず、なかなか劇場公開されないフィリピン映画。ようやくブリランテ・メンドーサ監督作が劇場公開されるのはうれしい限りだ。私が初めてメンドーサ監督作品を観たのは、2015年東京国際映画祭で「CROSSCUT ASIA #02 熱風!フィリピン部門より、ブリランテ・メンドーサ監督特集」が開催された時の『...
2017.08.14 13:05『ろくでなし』大西信満×渋川清彦がみせる、男のダメさとひたむきさいつかは見たいと思っていた大西信満×渋川清彦の競演。ポスター見るだけで撃沈しそうな男の渋さが滲み出る。今まで共演することはあれど、同じシーンで演技をすることがなかったという40代渋メンの二人がW主演を果たす奥田庸介監督の『ろくでなし』。バディームービーっぽいポスターだが、実はそうでもないところが面白い。裏社会にも通じているクラブのオーナー...
2017.08.14 12:49『ロスト・イン・パリ』パントマイム好きにはうれしい!ジャック・タチ風人生讃歌カナダ国旗がささっている大きすぎる赤いリュックを背負った主人公フィオナ。地下鉄の改札ではひっかかって動けなくなり、階段を上る時もカナダ国旗だけがたなびくように見える。全てがそんな感じで、ちょっとしたことが、フッ、フッと笑えてしまう仕掛けがいっぱい。フィオナと、彼女が落とした荷物を拾い、こともあろうにその荷物のセーターを着て、お金の入ったカ...