『シンペイ 歌こそすべて』忘れられないメロディーを生み出した名作曲家、中山晋平と支えた女たち 『シャボン⽟』や『てるてる坊主』など、小さい頃から口ずさんでいたメロディーが、中山晋平による作曲であることを本作で知り、改めてしっかり聞くとメロディーの動きが時には繊細に、時には大きく飛躍し、大人になってから歌うとまた違う感慨が生まれる気がした。非常に幅広いジャンルで約2000もの曲を残した日本音楽史に名を刻む作曲家、中山晋平の人生を描き切った名匠神⼭征⼆郎監督(『ハチ公物語』『ひめゆりの塔』)の最新作。名曲たちの誕生秘話はもちろん、大正から昭和にかけて市井の人たちがいかに晋平らが作る童謡や歌謡曲、音頭を愛し、歌い継いできたかも映し出す。 2025.09.12 03:17
“レンタル彼氏”を題材にしたファンタジックな青春映画 『桃味の梨』蘇鈺淳監督、漆山拓実さん(主演)、石井夏実さん(脚本)インタビュー 山本奈衣瑠主演の初長編『走れない人の走り方』(23)が全国公開され、第30回PFFプロデュース作品『メイメイ』が同フィルムフェスティバルでお披露目予定の蘇鈺淳(スー・ユチュン)監督による最新短編『桃味の梨』が、第21回大阪アジアン映画祭(以下OAFF2025EXPO)で世界初上映された。 主演を務めるのは、本作が映画初主演となる17歳の新鋭、漆山拓実。レンタル彼氏をしながら、親友の透と過ごす時間を大事にしている高校生、真の複雑な内面を自然体で表現している。本作の蘇鈺淳監督、主演の漆山拓実さん、脚本の石井夏実さんにお話を伺った。 2025.09.11 12:19
「中年男性を味わい深く描きたい」 『息子の鑑』野原位監督、川村りらさん(共同脚本)インタビュー 『ハッピーアワー』(15)、『スパイの妻』(20)で映画監督の濱口竜介と共同脚本を務め、『三度目の、正直』(21)で劇場監督デビューを果たした野原位監督の最新短編『息子の鑑』が、第21回大阪アジアン映画祭(OAFF2025EXPO)インディ・フォーラム部門作品として、大阪中之島美術館1Fホールで世界初上映された。 神戸の運送会社で働く主人公、日柳を演じるのは多彩な活動を続ける津田健次郎。配送した虎のオブジェが割れていたというクレームが入り、日柳と社長の桜井(吉岡睦雄)は送り主の元へ謝罪に訪れるが、父の平八(小松利昌)はアーティストである息子、純(中山慎悟)の作品の価値を語り、いくらで弁償するのかと詰め寄る。一方、純は大人たちのやりとりをじっと観察していて…。思わぬトラブルから、登場人物それぞれの息子との関係を見つめ直す、滋味深い人情喜劇だ。本作の野原位監督、川村りらさん(共同脚本)にお話を伺った。2025.09.09 05:41
「女性たちが観たい作品をわたしたちがきちんと作っていこうという気持ちになれました」『ミルクレディ』宮瀬佐知子監督、迫あすみプロデューサー/撮影監督インタビュー 宮瀬佐知子監督の短編『ミルクレディ』が、第21回大阪アジアン映画祭(OAFF2025EXPO)インディ・フォーラム部門作品として、大阪中之島美術館1Fホールで日本初上映され、見事芳泉短編賞スペシャルメンションに輝いた。 家族経営の乳製品会社で30年以上牛乳配達の仕事を続けてきた50代独身の明美。職場の同僚で、キャリアを手放し、明美の会社で牛乳配達を始めた子育て中の麻衣の態度を、コネ入社の支店長、健太は快く思っていないようだ。自身の選択を後悔する麻衣の姿に、自らが体験してきた社会の不条理や女性の生きづらさを次の世代に引き継がせたくないという怒りが沸き起こってきた明美は、ある行動に出る。 女性たちが長年忍耐を強いられてきた職場での不当な扱いにNOを突きつけ、立ち上がる力強い物語をダイナミックかつきめ細やかに描いた本作の宮瀬佐知子監督(写真左)、プロデューサー・脚本・撮影の迫あすみさん(写真右)にお話を伺った。 2025.09.07 02:37
揺さぶられっ子症候群の取材から、逮捕報道のあり方と刑事司法の問題に向き合う 『揺さぶられる正義』上田大輔監督インタビュー 弁護士資格を持つ関西テレビの報道記者、上田大輔さんが記者1年目から取材を始めたのは、2010年代に赤ちゃんを揺さぶって虐待したと疑われ、親などが逮捕・起訴される事件が相次いだ「揺さぶられっ子症候群(Shaken Baby Syndrome)」、通称SBS。 取材をする中で明らかになった刑事司法の問題や、それぞれの“正義”がぶつかり合う中でメディアの逮捕報道のあり方にも、悩みながら自ら切り込んでいくドキュメンタリー映画『揺さぶられる正義』が、2025年9月20日(土)より第七藝術劇場、京都シネマ、元町映画館ほか全国順次公開される。本作の上田大輔監督にお話を伺った。2025.08.31 00:00
台湾、香港映画の名作を再発見!カンヌ国際映画祭で注目された『ジンジャー・ボーイ』田中未来監督特集も。第21回大阪アジアン映画祭、全ラインナップ発表! 2025大阪・関西万博の会期に合わせ、初めての夏開催となる「第21回大阪アジアン映画祭」の全体ラインナップが決定し、2025年8月29日(金)から9月7日(日)の期間中に全66作品の上映が発表された。今回発表されたのは、「コンペティション部門」、「特別注視部門」、「インディ・フォーラム部門」、特集企画<台湾:電影ルネッサンス EXPO 2025>、<Special Focus on Hong Kong EXPO 2025>、「特別招待作品部門」、「神戸女学院大学国際学部協賛上映」、「特別上映《VIPO Film Awardの成果》」の上映作品だ。まずは、暉峻創三プログラミングディレクターと、8月29日(金)にABCホールにて行われるオープニング上映『万博追跡』(2Kレストア版)で登壇が決定した主演のジュディ・オングさんのコメントを紹介したい。ジュディ・オング氏 / 歌手・俳優・木版画家55年前、大阪万博の会場で、私たちは目の前に広がる未来に心を踊らせました。『万博追跡』は、私の台湾映画のデビュー作『小翠』の監督であるリャオ・シャンション監督の作品です。大阪万博を舞台にミュージカル、アクションを融合させた追跡劇。撮影時の興奮がいまも蘇ってきます。大阪・関西万博が開催される2025年、再び『万博追跡』が上映されることをうれしく思います。時代を超えて、映画、音楽、芸術が持つ力を、多くの方と分かち合うことができればと願います。大阪アジアン映画祭で皆さまにお会いできることを楽しみにしています。 暉峻創三氏 / 大阪アジアン映画祭プログラミング・ディレクター 大阪アジアン映画祭のプログラミングで毎回悔しい思いをしていたのは アジアでも素晴らしい旧作の修復が積極的に行われているにもかかわらず、会場数の制約でその成果を散発的にしか紹介できずにいたことでした。万博開催に伴い前回から半年も間を置かずに実施されることとなった今回の映画祭は、旧作レストア版に光を当てる絶好の機会ととらえ、例年以上に旧作を手厚く紹介しています。その大部分が世界初または日本初上映です。回を追うごとに人気を増している短編のラインナップにもご注目を。必ずしも新鋭ばかりではなく、著名映画人の作品を含む傑作が勢揃いしました。 2025.08.02 07:10
第21回大阪アジアン映画祭、クロージング作品はシンガポール発ドラァグクイーンと家族の再生を描く『好い子』を世界初上映! 2025年8月29日(金)から9月7日(日)まで開催される「第21回大阪アジアン映画祭」のクロージング作品に、シンガポール発ドラァグクイーンと家族の再生を描いた映画『好い子(原題:好孩子)』が決定した。 先日オープニング作品として発表されたジュディ・オング主演の映画『万博追跡』(2Kレストア版)と合わせて、映画祭の顔であるオープニングとクロージングがいずれもワールドプレミア作品となる。 『好い子(原題:好孩子)』は、自分を拒絶した父の死をきっかけに実家に戻ったドラァグクイーンが、認知症の母、理解しあえない兄を前にバラバラになった家族を繋ぎとめるため「私はあなたの娘」と嘘をついてしまったところから始まる、『ママと“娘”。本当の私、本当の家族になるため』の物語。監督は、新世代のシンガポール映画界を牽引するワン・グォシンで、金馬奨(20)にノミネートされた『男兒王』等、シンガポールにおけるアイデンティティや社会的なテーマの作品で知られている。2025.07.23 09:00
レズビアンに希望のある「別れ話」をきちんと作りたかった 『サラバ、さらんへ、サラバ』洪先恵(ホン・ソネ)監督インタビュー 『朝が来る』、 『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の蒔田彩珠と新鋭の碧木愛莉が高校生カップルを演じる映画『サラバ、さらんへ、サラバ』が、9月26日(金)より、東京の新宿バルト9、横浜ブルク13、T・ジョイ梅田、T・ジョイ博多ほか全国ロードショーされる。(短編での単独公開につき、通常鑑賞料金1000円) 茨城の田舎町に住む16歳の女子高生カップル、仁美(蒔田彩珠)と菜穂(碧木愛莉)。仁美はアイドルになることを夢見る菜穂を献身的に支えていたが、菜穂から「K-POPアイドルになるため韓国に行く」と告げられてしまう。突然訪れた別れをテーマに、ステレオタイプな悲劇に陥らない、新しい形のふたりのサヨナラを描いたのは、自身の脚本によるオリジナルストーリーで監督デビューした韓国出身の洪先恵(ホン・ソネ)さんだ。第20回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門作品として日本初上映され、上映後の舞台挨拶に登壇した洪監督にお話を伺った。2025.07.08 02:26
「自分に起きたことを理解してくれる人のいることが、どれだけ大切かを教えられました」 『黒川の女たち』松原文枝監督インタビュー 太平洋戦争末期の満州で開拓団が生き延びるためにソ連軍への性接待を強いられ、帰国後も誹謗中傷を受け、長年その事実を伏せられてきた黒川開拓団の女性たち。彼女たちが手を携えて声を上げ、尊厳を取り戻すまでを記録した松原文枝監督(『ハマのドン』)の最新作『黒川の女たち』が、7月12日(土)よりなんばパークスシネマ、MOVIX八尾、MOVIXあまがさき、MOVIX京都、7月18日(金)より京都シネマ、7月19日(土)より第七藝術劇場、元町映画館にて公開される。本作の松原文枝監督にお話を伺った。2025.06.26 13:19
「辰巳さんの料理の背景には、すごくスケールの大きい哲学的な思想がある」 『天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”』 河邑厚徳監督、矢内真由美プロデューサーインタビュー NHK「きょうの料理」を担当してきた矢内真由美プロデューサーが、食材の向こう側の生産者や、自然にも思いを寄せられている姿勢や、伝える言葉の美しさが魅力的な料理研究家・辰巳芳子の料理哲学を描いたドキュメンタリーを作りたいと河邑厚徳監督にオファーして完成したドキュメンタリー『天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”』。辰巳芳子の100歳記念上映として、5月30日(金)よりアップリンク京都で1週間限定上映される。本作の河邑厚徳監督、矢内真由美プロデューサーにお話を伺った。2025.05.27 01:38
「好きなことを大人になってからではなく、なぜ今やらないのか?」 『レイニー ブルー』で長編監督デビューを果たした柳明日菜さんインタビュー @OAFF2025 第20回大阪アジアン映画祭(以下OAFF)インディ・フォーラム部門作品として世界初上映された柳明日菜の監督デビュー作『レイニー ブルー』が、7月4日(金)より熊本Denkikanで先行上映、7月18日(金)よりアップリンク吉祥寺で公開される。 笠智衆生誕の地、熊本県玉名市を舞台に、笠智衆をこよなくリスペクトする映画愛の強い17歳の高校生蒼が、映画を作ろうと脚本を執筆しはじめるが…。思春期の葛藤や周りとの距離感、自身の中で湧き上がるマグマのような感情がストレートに伝わってくる純度の高い青春映画だ。 監督・脚本・出演の柳明日菜さんと濵島玲恵プロデューサーにお話を伺った。2025.05.22 01:03
コロナ時代の大学生活、自分の居場所のなさから着想を得て 『よそ者の会』西崎羽美監督インタビュー 現役大学院生の西崎羽美監督が、大学4年生の時に生み出し、第18回田辺・弁慶映画祭にてキネマイスター賞を受賞した『よそ者の会』が、2025年5月23日(金)より1週間、テアトル東京、6月24日(火)テアトル梅田にて公開される。 第20回大阪アジアン映画祭(OAFF2025)ではインディ・フォーラム部門に正式出品された本作。主演はOAFF2022『ボクらのホームパーティー』監督の川野邉修一。共演の坂本彩音、比嘉光太郎と、監督と同じ映画美学校出身のキャストが揃い、自分がよそ者だと感じる若者たちの持つ秘密や交差していく気持ちをソリッドに描いた意欲作だ。本作の西崎羽美監督 (写真下)にお話を伺った。2025.05.11 23:58