2017.07.29 03:26『彼女の人生は間違いじゃない』福島で生きる人の目線を貫く被災地で生きる人の目線を貫くことは、本当に難しい。「頑張れ」と励ますつもりの言葉が、ギリギリの状況にいる人に大きなプレッシャーを与えてしまったり、日頃のコミュニケーションがない中無意識で放つ言葉が、実は相手を傷つけてしまう。本当なら、そんなに張り詰めた気持ちを受け止めることができるような関係を築ければいいのだろうが。福島出身の廣木隆一監督...
2017.07.25 04:49『空と風と星の詩人 〜尹東柱の生涯〜』自由を夢見た詩人の短き青春に、思いを馳せて時代が違っていれば、もっと長生きして、多くの作品を世に遺しているはずだった。刑務所の窓から空に瞬く星を見ながら、死のその時まで創作を続けた韓国の国民的詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ)。1945年に亡くなった時、まだ27歳だった。あまりにも短き人生、それでも共に日本留学し、最後の最後まで心の支えだった従兄の宋夢奎(ソンモンギュ)と暮らした日々...
2017.07.23 13:55『歓びのトスカーナ』陽光が包む、傷だらけでも負けない女たち二人の出会いはなかなか強烈。なにせ、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ演じるベアトリーチェは、自身が過ごしている精神診療施設のスタッフのふりをして、新入りで全身タトゥーのやせ細ったドナテッラに問診をし始めるのだから。双極性障害を抱え、女王様のようなふるまいをするベアトリーチェと、壮絶な過去に苦しむドナテッラ。正反対のような二人が、精神診療施設...
2017.07.21 11:35「世界を変えたレコード展」 レコードがある時代にいて良かった7月23日までグランフロント大阪ナレッジキャピタルイベントラボで開催中の「世界を変えたレコード展」。レコードコレクションからポピュラーミュージックの歴史を辿るという試みで、多数のレコードジャケットが展示されると知り、遅まきながら駆けつけてきた。入口では、吸い込まれるぐらい大きいLP盤が迎えてくれる。この時点でもうワクワク。
2017.07.20 01:43『しあわせな人生の選択』悔いなき人生の終わりには君がいた成熟した大人のドラマだ。『瞳の奥の秘密』リカルド・ダリン、『アイム・ソー・エキサイテッド』ハビエル・カマラというアルゼンチンとスペインの名俳優の共演。それだけで観なくてはという気にさせられたが、末期がん治療を断った男と彼の元を訪れた友人の4日間の物語は本当に地に足のついたものだった。セスラ・ゲイ監督が自らの母の闘病体験を基に作り上げた作品...
2017.07.14 02:15『残されし大地』ベルギー人監督が音で誘う福島・富岡町、動物と共に故郷に残る人々の想いとは?この夏、関西では福島を題材とした新作映画が2本上映される。いずれも外国人監督によるものであるのは、奇遇とはいえ、何か大きな意味を感じずにはいられない。一本はキム・ギドク監督が日本に来て監督、脚本、撮影、照明、録音を全て一人で行った劇映画『STOP』。そして、もう一本はベルギー人ジル・ローランさんの初監督作となり、残念なことに遺作となってし...
2017.07.08 12:45『ボンジュール・アン』カンヌからパリへ。旅のお供、フランス男性のもてなし上手にウットリ50代になっても美しいダイアン・レイン。そんな彼女も、ハリウッドではなかなか同世代女性がヒロインとなる映画がないという問題意識を抱いていると、GLOBE紙のインタビューで読み、フランスならともかくそれ以外の国はどこも同じなのかと妙に納得した。フランシス・フォード・コッポラ監督の妻であり、ドキュメンタリー作家エレノア・コッポラ監督の初長編作...
2017.07.06 13:51『ブレンダンとケルズの秘密』日本初上映から7年、待望の劇場公開へ2013年の第20回をもって休止中の大阪ヨーロッパ映画祭。私が事務局広報スタッフとして現場にいた2010年の大阪ヨーロッパ映画祭で日本初上映され、今まで観たことのないような美しく、ケルト文化が詰まったアニメーションに、満席の観客の心が奪われた。今まで同映画祭のメイン上映でアニメーションがセレクトされることはまずなかった。観客層も成熟した大...
2017.07.06 12:46『心に吹く風』北海道・美瑛がこんなに美しく映し出された映画はない雪を抱いた山々が遠くに見える中、赤い車がなだらかな丘陵を走り抜けていく。これだ!このなだらかさが美瑛の丘陵だ!と冒頭シーンで懐かしさがこみ上げた。『冬のソナタ』をはじめとする四季シリーズのユン・ソクホ監督が初劇場用映画の舞台として選んだのが富良野、そして私も若い頃何度か一人旅をし、自転車を漕ぎながら町を巡った美瑛である。風景写真家前田真三...