近日公開の話題作から世界初上映作まで。第15回大阪アジアン映画祭、インタビューを一気見!
2020年3月に規模を縮小して開催された第15回大阪アジアン映画祭(OAFF2020)。いつも大勢のゲストが来場し、上映後のQ&A、サイン会、そしてウェルカムパーティと、観客のみなさんとゲストがたっぷりと交流できるのが映画祭の醍醐味だが、今年は新型コロナウィルスの影響で、ゲストとの交流イベントは一切中止となった。来場予定だった海外のゲストも止むを得ずキャンセルとなるケースが多い中、オープニング上映『夕霧花園(原題)』のトム・リン監督からはビデオメッセージが寄せられ、また世界初上映、海外初上映、または日本初上映の日を客席で観客と一緒に迎えるゲストもいらした。
今回は日本のゲストを中心に、映画祭期間中に行ったインタビューをまとめてご紹介したい。新型コロナウィルスの影響で、本当は行きたいのに諦めた方や、映画を観たので裏話を知りたいという方も、ぜひ楽しんでいただきたい。
<コンペティション部門>
■生まれ育った街の金都商場を舞台に描く、結婚とは?自由とは?
『私のプリンス・エドワード』ノリス・ウォン監督インタビュー
第39回香港電影金像奨で見事、最優秀新人監督賞に輝いたノリス・ウォン監督。関西の大学で日本語を学んだ経験があるウォン監督が、自身の体験をたっぷりと脚本に昇華させた長編デビュー作について語ってくれた。
■女子高生と後ろ向きに歩く男が、モノクロの世界で織りなす壮大な映像詩。
『コントラ』アンシュル・チョウハン監督、円井わん、間瀬英正インタビュー
長編デビュー作の『東京不穏詩』(Vimeoにて配信中)で強烈なインパクトを与えたアンシュル・チョウハン監督の最新作は、モノクロの壮大な抒情詩。大阪出身の円井わんさんが演じる主人公の高校生と、劇中の日記の絵も全て書いたという、後ろ向きに歩く男を演じた間瀬英正さん(最優秀男優賞を受賞)。アジアプレミアを終えての二人のホッとしたのと感動を混ぜ合わせたような表情が印象的だった。随分大変だったという撮影秘話もたっぷりと!
■台湾版『ブエノスアイレス』に込めた、LGBTQが認められるまでの歴史。
『君の心に刻んだ名前』リウ・クァンフイ監督インタビュー
世界初上映となった本作は、自身の高校時代の体験が元になっているというリウ・クァンフイ監督。若いイケメン二人の寄せては返す波のような熱く切ない恋は、観客の鑑賞後の熱も最高潮。二人への演技指導で『ブエノスアイレス』を見せたり、二人の関係をリアルに見せる演出秘話もたっぷりと。後ろのポスターは大阪アジアン映画祭用だそうで、台湾の本公開用のポスター画像を別途送ってくださり、ページでもご紹介中。6月の台湾公開で話題になること間違いなしの本作のお話をいち早く伺えた。
<特集企画 《ニューアクション! サウスイースト》>
■「映画を通してインターセックスの人のことを知ってもらいたい」
『メタモルフォシス』ホセ・エンリーケ・ティグラオ監督インタビュー
「まだ人に語られていないことを、声をあげて伝えていきたい」というフィリピンのホセ・エンリーケ・ティグラオ監督。通称JEと呼ばれている監督は、男性器と女性器の両方を持つインターセックスの青年の物語を、示唆深くも美しく、そして色合いや画面の細部まで、とてもこだわりをもって作り込んでおられる。お話を聞くと、もう一度観たくなる!そんな作品。個人的には、昨年暉峻プログラミング・ディレクターの一押し作品だった『視床下部すべてで、好き』主演のイアナ・ベルナルデスさんが出演しているのも注目ポイントだったが、彼女が演じたキャラクターが、JE監督の短編作品主人公が成長した姿だという話は目から鱗だった。これから要注目の監督であることは間違いなし!
<インディ・フォーラム部門>
■是枝監督に学んだ新鋭が福田麻由子主演で綴る、離れて暮らす父への思い
『グッドバイ』宮崎彩監督インタビュー
早稲田大学で是枝監督に学んだという宮崎彩監督。その授業を取るためにWスクールで映画を学ぶという頑張り屋でもある宮崎監督は、その熱量で主演の福田麻由子さんのキャスティングにも最終的には成功したと聞き、やりたいことが明確で、動くパワーのある人は映画を作るのに向いているなとつくづく思う。学生時代の作品が上映され、観客と出会うことができたことが、映画を作る原動力になっていると話す宮崎監督。『グッドバイ』が遠くないうちに劇場公開され、宮崎監督が作品を通して観客と出会えることをこちらも楽しみにしていたい。
■小さなコミュニティで生きる若者たちの葛藤を、緊張感たっぷりに描く異色群像劇。
『ある殺人、落葉のころに』三澤拓哉監督、中崎敏、森優作、永嶋柊吾インタビュー
デビュー作でOAFF2015の『3泊4日、5時の鐘』以来、5年ぶりに新作を携えて帰ってきた三澤拓也監督。前作でも主演を演じ、一緒に来場してくれた中崎敏さん、同じくOAFF2015『野火』のゲストで来場し、人生初めてというインタビューをさせていただいた森優作さん、そして今や様々な作品で活躍している永嶋柊吾さんという4名が、日本初上映のために来阪してくれた。見事JAPAN CUTS Awardに輝いた本作は、香港版『十年』のウォン・フェイパン監督と共同プロデュース作。今年OAFFで上映されたヘイワード・マック監督『花椒の味』にも出演しているロー・ジャンイップさんも出演している、日本映画というよりは、アジア映画の枠で捉えたい秀作だ。豪華メンバーでのインタビュー、すごくいい雰囲気だったのは、この日の夜に行われたインスタライブトークでもひしひしと感じられた。
■寡黙な純潔男が圧倒的な存在感を放つ、大人の異色ラブストーリー
『写真の女』串田壮史監督インタビュー
大阪出身の串田監督による初長編は、インパクトの強いビジュアルと、サイレンス映画のような主人公が印象的だが、偽りの自分を見せてでも周りから承認されたいという現代人の欲求も深掘りしてみせる。ちょっと初期のキム・ギドクの匂いを感じさせる非常に興味深い作品だ。「サイレント映画の方が、現在に通じる普遍的な内容を描いている」という串田監督。見合い写真のため、原型がなくなるぐらいまで細かなレタッチを要求する冒頭のシーンで一気に引き込まれる作品だ。
<特別招待作品部門>
■繊細な映像で綴る、母の故郷、台湾・高雄で23年ぶりに再会した兄弟の心模様
『燕 Yan』今村圭佑監督、水間ロン、山中崇インタビュー
『新聞記者』『ホットギミック ガールミーツボーイ』で日本映画界にその名を知らしめた若き名キャメラマン、今村圭佑さん。その今村さんが初監督し、しかも台湾が舞台の映画を撮るということで、以前から注目していたが、中国大連生まれ、大阪育ちの主演、水間ロンさん、主人公の兄を演じた山中崇さんと3名による豪華インタビューが実現。水間さんは企画段階から関わり、プロデューサーからの声かけで今村さんの監督・撮影が決まったという。クロージング作品の俳優、松林うららさんがプロデュース兼出演した『蒲田前奏曲』もそうだが、俳優が自分のやりたい企画を自ら立ち上げて映画化するという流れは、今回のOAFFで感じた日本映画の新しい動きの一つだ。6月の劇場公開に先駆け、今村さんの初監督での現場エピソードや、水間さんの本作に込めた思い、そして中国語にチャレンジした山中さんにお話を伺った。
最後に大阪アジアン映画祭2020の上映作品レビュー記事をご紹介したい。
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